トピックス
2025.02.25
アスベストの使用時期はいつ?建築・施工時期から石綿含有建材を見分ける方法

建物の解体や改修を検討する際、アスベストの存在は悩ましい懸念事項です。アスベストは、かつてその優れた特性から広く建材に使用されていましたが、健康被害が明らかになったことで使用が禁止されました。この記事では、アスベストが使用されていた時期、建築・施工時期からアスベストが使用されている可能性がある場所を予測する方法について解説します。

【本記事の要約】

・1950年代から1970年代にかけて最もアスベストは使用された
・基準が厳格化し、2004年頃まで使用された建物の壁・床・天井(レベル3)まで規制対象となった
・2006年9月1日以降は書面調査のみで済むケースがある
・専門家による書面、目視調査で判定できる試料もあるが、明確に判断できないものは試料分析へ

アスベストが使用された理由・禁止された理由

アスベスト 危険

アスベスト(石綿)は安価で加工しやすい上、幅広く優れた機能を有している素材であったがために、1950年代から2000年頃まで、建築現場の様々な箇所で使用されてきました。

しかし、一定以上の濃度のアスベストの繊維を長期間吸引すると深刻な健康被害を及ぼすことがわかり、日本では現在、アスベストを含む建材の製造・使用が禁止されています。

ここではそれらの具体的な理由について、解説します。

アスベストが使用された理由

アスベストは、天然に産出する繊維状の鉱物で、石綿(いしわた/せきめん)とも呼ばれています。以下の優れた特性から、建材や工業製品に広く利用されてきました。

・耐熱性、断熱性、絶縁性に優れている

・耐薬品性(アルカリや酸に強い)がある

・強度があり、丈夫で変化しにくい

・安価に入手できる

アスベストが禁止された理由

近年、一定濃度以上のアスベストの繊維を長期間吸入すると、肺がん、悪性中皮腫、石綿肺などの健康被害を引き起こす可能性があることが判明しました。

そのため、日本をはじめとする多くの国でアスベストの使用は段階的に禁止され、現在では日本において原則として製造、輸入、使用等が禁止されています。

アスベストの使用が禁止された時期

アスベスト 規制

アスベスト(石綿)は、耐熱性や耐久性に優れた素材として、1950年代から1970年代にかけて日本で広く使用されていました。しかし、その有害性が明らかになるにつれ、健康被害を防ぐための規制が段階的に強化され、最終的には全面禁止や事前調査の厳格化に至りました。

以下に、アスベスト規制の歴史を時系列で詳しく解説します。

年代別:法改正による規制の変遷

1970年代:規制の始まり

1972年:労働安全衛生法に基づき、アスベストが「特定化学物質」に指定され、労働者の健康障害防止措置が義務付けられました。

1975年:吹き付けアスベストの使用が規制され、アスベスト含有率が5%以上の建材の吹き付け作業が禁止されました。

1980年代:国際的な動きと国内規制の強化

1986年:国際労働機関(ILO)がアスベストの使用制限を提言。日本でもクロシドライト(青石綿)の使用が禁止され、吹き付け作業の規制が強化されました。

1990年代:規制の拡大

1995年:アモサイト(茶石綿)とクロシドライト(青石綿)の製造、輸入、譲渡、提供、使用が全面禁止されました。また、アスベスト含有率が1%以上の吹き付け作業も禁止されました。

2000年代:全面禁止への道

2004年:アスベスト含有率が1%以上の製品の製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されました。ただし、代替が困難な場合等には一部例外が認められていました。

2006年:アスベスト含有率が0.1%以上の製品の製造、輸入、譲渡、提供、使用が全面禁止されました。この規制により、事実上すべてのアスベスト製品が禁止されました。

2010年代:既存建築物への対応

2012年:2006年の規制で認められていた一部の例外措置が撤廃され、アスベストの使用が完全に禁止されました。

2014年以降:解体・改修工事時のアスベスト飛散防止措置が強化され、建築物所有者や事業者に対する管理責任が明確化されました。

2020年代:事前調査の義務化と規制の厳格化

2021年:一定規模以上のアスベスト含有建材の事前調査が義務化され、調査方法として「図面確認」「目視調査」「分析調査」が明確に規定され、事前調査結果の行政報告が義務付けられました。

2023年10月:事前調査は有資格者(一般建築物石綿含有建材調査者など)が行う事が義務化され、アスベスト分析に関しても同様に指定の講習又は試験を合格した技術者が実施することになりました。

アスベストが使用された場所と時期

アスベスト 使用箇所

アスベストは、その優れた特性から様々な場所で使用されてきました。ここでは、建材の種類別にアスベストが使用されていた場所と時期について解説します。

吹き付け材 レベル1

吹き付け材は、アスベストの発じん性が最も高く、飛散しやすいため、最も注意が必要なレベルに分類されています。

主な使用時期は1956年頃から1975年頃までと言われており、その後吹き付けロックウールや湿式吹き付けアスベスト等に代替される形で主に1990年頃まで使用されていたことが確認されています。

主な使用場所は鉄骨耐火被覆材、天井断熱材、機械室吸音材等があります。

保温材・耐火被覆材・断熱材 レベル2

保温材等のレベル2のものは、アスベストの発じん性が中程度と位置付けられています。

主な使用時期は早いもので保温材が1920年頃から使用され、断熱材の煙突用のものは2004年まで製造・使用されたと言われております。

主な使用場所は、ボイラー、タービン、化学プラント、焼却炉など、熱を発生する部分や熱を搬送するためのダクト、エルボ部分等が挙げられます。

その他石綿含有建材(成形版等) レベル3

その他の石綿含有建材は発じん性が低いですが、現存するアスベスト含有建材のほとんどがレベル3と言われており、種類としても多岐に渡ります。

2021年4月1日に施行された改正大気汚染防止法に基づき、一般住宅(木造)のレベル3も規制対象となっています。主な使用時期は早いもので1930年代から使われており、2004年頃まで製造・使用されております。主な使用場所は、壁・床・天井などの他、外壁塗材などが対象となります。

使用されている場所と製造時期に関しての詳細はこちらの記事をぜひご覧ください。

アスベスト含有建材の一覧から注意すべき年代、除去方法まで徹底解説!

アスベストが含有されているかどうかを調べる方法

アスベスト 調査

建材にアスベストが含有されているかどうかを正確に知るためには、専門家による調査が必要です。ここでは、アスベストの含有を調べる方法を解説します。

書面(施工図や材料表等)で調査

建物の設計図、施工図、材料表などの書面を確認し、使用されている建材にアスベストが含まれているかどうかを調べます。建材メーカーの製品情報や安全データシート(SDS)なども参考になります。ただし、改修の記録がない場合もあるため、注意が必要です。

2006年(平成18年)9月1日以降に着工された場合は、こちらの書面調査のみで目視調査以降の調査を省略することができます。理由はアスベストの製造や輸入等が全面的に禁止されたためです。

【調査・報告対象となる工事】

・建築物の解体工事(解体作業対象の床面積の合計80 ㎡以上)

・建築物の改修工事(請負代金の合計額100万円以上(税込))

・工作物の解体・改修工事(請負代金の合計額100万円以上(税込))

・石綿障害予防規則に基づく報告は、上記に加え、鋼製の船舶の解体又は改修工事

(総トン数20トン以上)も必要です。

引用元:環境省|4月1日から石綿の事前調査結果の報告制度がスタートします

現地での目視調査

実際に建物に立ち入り、目視で建材の種類や状態を確認します。建材の表示を確認したり、「石綿(アスベスト)含有建材データベース」やメーカー情報と照合することで、アスベストの有無を判断できる場合があります。

ただし、製品名が不明だったり、当初資料からの変更が考えられる場合などは目視での判断が難しいため、試料の分析が必要です。

実試料をアスベスト分析で調査

実際に建材のサンプルを採取し、専門の分析機関に依頼してアスベストの含有を分析します。分析方法には、現在は層別分析が出来て微量なアスベストを検出しやすい偏光顕微鏡法が主流です。

分析結果に基づいて、アスベストの種類や含有率(定性分析は、0.1%を超えてアスベストが含まれているかどうかの判定)を判定することができます。

迷ったら専門家へご相談を

アスベストの事前調査は現在「専門的な知識を持った資格保有者のみ(それと同等の知識を有すると認められたもの)」が行えます。また、書面や目視調査で判断しきれないものに関しては、その後の影響を考慮すると、専門分析機関への依頼をおすすめします。

アルフレッドは納期遵守率が99.998%の実績があり、どこよりも安定して3営業日以内の短納期で分析結果をお出しいたします。ぜひ以下のお問い合わせから、ご相談ください。