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2025.04.18
バーミキュライト(ひる石)とは?アスベストの関連性と安全性について

園芸や建材などさまざまな用途で活用されているバーミキュライト(ひる石)は、軽量で保水性・断熱性に優れた天然鉱物として知られています。しかし一方で、過去にはアスベスト混入の問題が報告されており、安全性に対する不安の声も少なくありません。本記事では、バーミキュライトの基礎知識とアスベストとの関連性、そして現在の安全性について解説します。

本記事の要約

・バーミキュライトは軽量・保水性・断熱性に優れた天然鉱物であり、園芸や建築など幅広い分野で活用されている

・基本的にバーミキュライトにアスベストは含まれないが、過去にアスベストを混入した製品が流通していた

・現在市販されているバーミキュライトはアスベスト非含有が確認されているが、古い建築材料に関しては専門機関による調査・適切な対策が推奨される

バーミキュライト(ひる石)とは

バーミキュライトはケイ酸塩鉱物に分類される天然鉱物で、膨張性鉱物の一種です。加熱処理を施すことによって層間に含まれる水分が蒸発し、容積10倍以上、アコーディオン状に膨張するという特性があります。膨張処理を経たものは「焼成バーミキュライト」と呼ばれ、軽量で多孔質な構造となるのがその特徴。保水性や軽量性、断熱性などに優れています。

園芸・農業分野では、培地改良材や発芽床材として広く用いられ、建築分野では断熱材、耐火材、吸音材としての応用が進んでいます。また、主成分は天然の粘土鉱物のため、土壌の中で有機質肥料の保持剤となり、風化してやがては土に還る点もポイントです。園芸・農業分野においては、環境負荷の低い素材として持続可能な資源利用の観点からも注目されています。 

バーミキュライトとパーライトの違いについて

バーミキュライトと似た素材として挙げられるのがパーライトです。どちらも園芸や建築分野で広く使用される軽量で多孔質な素材ですが、その性質や用途には違いがあります。

パーライトは火山ガラスを原料とする鉱物で、高温加熱により内部の水分が膨張し、発泡ガラスのような粒状構造となります。保水性は中程度ですが、非常に優れた通気性と排水性を持つため、園芸・農業分野においては根腐れを防ぎたい植物や乾燥を好む作物の栽培に適しています。

保水性重視ならバーミキュライト、通気・排水性を重視するならパーライトというように、用途や目的に応じた使い分けが重要です。 

バーミキュライトの用途はさまざま

バーミキュライトは、その膨張性や多孔質構造という特性から、多岐にわたる分野で応用されています。以下は代表的な用途です。

1. 園芸・農業分野

高い保水性と通気性を兼ね備えるバーミキュライトは、土壌改良材や種子の発芽培地、挿し木などに広く用いられます。水分および養分の保持にも優れており、根の呼吸環境を改善し、作物の健全な成長を促進します。また、無菌性が高く、病原菌のリスクが低い点も評価されています。

2. 建築・土木分野

バーミキュライトは軽量で断熱性および耐火性が高いことから、軽量断熱材や軽量コンクリートとして使用されます。とくに防火モルタルや断熱壁材などに利用されており、建築物の安全性と省エネルギー性の向上に寄与しています。

またバーミキュライトは吹き付け材として、壁や天井にも使用されました。建築物の内装の仕上げ材が主な用途です。

3. 工業用途

吸音性・断熱性を活かし、各種製品の断熱パネルや吸音ボード、冷蔵・冷凍設備の断熱材として用いられています。また、耐酸・耐アルカリ性も高いため、化学薬品の包装材や危険物輸送時の緩衝材にも適しています。

4. 環境・保全分野

油や重金属の吸着材としての利用も進んでおり、汚染土壌や排水処理における環境修復材としての応用が注目されています。軽量かつ再生可能な天然素材であることから、持続可能な資源としての価値も高まっています。

5. カイロ

私たちの身近なところでは、カイロにも使用されています。カイロは鉄が酸素と反応して熱を発する仕組みを利用しており、水分が必要です。その水分を保つために使われているのが、保水性の高い焼成バーミキュライトです。

なぜバーミキュライトにアスベストが含まれることがあるのか

バーミキュライト自体はアスベスト(石綿)とは異なる鉱物であり、本来はアスベストを含有しない安全な鉱物です。しかしながら、バーミキュライト鉱床の中には、天然鉱脈の成因や地質環境に起因して、アスベストと共生・共存する形で産出されるものが存在します。

アメリカ・モンタナ州リビー鉱山とアスベスト汚染の問題

アメリカ合衆国モンタナ州リビー鉱山から採掘されたバーミキュライトには、発がん性が認められているトレモライト型アスベストが混入していたことが後に判明しました。1970年代・80年代にリビー鉱山の労働者及び地域住民に石綿肺の被害が発生し1990年に鉱山は閉山しています。

現在製造されているバーミキュライトは南アフリカ産や中国産、国産などが主で、アスベストを含んでいません。

安全基準の考え方と対策について

バーミキュライト自体はアスベストを含まない鉱物ですが、過去に一部の製品にはアスベストが混入していた例があり、特に建築物の吹付け材として使用されている場合には注意が必要です。日本の労働安全衛生法施行令および石綿障害予防規則に基づき、アスベストを含有する吹付け材は「レベル1建材」に分類され、厳しい管理が求められています。

レベル1に該当する建材は、アスベストが空気中に飛散しやすく、健康へのリスクが高い可能性があるため、除去作業には専門業者による隔離措置や負圧管理、湿潤化、保護具着用などの厳格な作業基準が適用されます。また、解体・改修時には事前調査と行政への届出が法的に義務付けられています。

アスベスト含有の仕上げ材における「材質判定」の重要性

2021年の大気汚染防止法の改正以降、仕上塗材は原則として「レベル3建材」として扱われることが一般的になっています。しかし、改正前の2020年11月30日に「石綿含有吹付けパーライト」および「石綿含有吹付けバーミキュライト」については、従来通り「吹付け石綿」として、危険度の高い可能性がある「レベル1建材」として取り扱うことが通達されました。

そのため、過去にアスベストが含有されていた仕上塗材を、材質の特定を行わず一律にレベル3建材として扱うことは、誤った判断となる恐れがある点に注意が必要です。

安心してバーミキュライトを使うために

現在市販されているバーミキュライト製品は、メーカーによる検査によりアスベスト非含有が確認されており、安全に使用できます。ただし、古い建材などに含まれる場合には、アスベスト混入の可能性もあるため注意が必要です。調査や処分にあたっては、産地や安全証明の確認、粉じんの飛散防止、必要に応じた専門機関への調査・分析相談が重要なポイントとなります。

アルフレッドでは、建材の層別分析並びに材種判定を行っているため、吹付けバーミキュライト・吹付けパーライトの判定も行うことが可能です。レベル1かレベル3で対応が大きく異なるため、特定が必要な際は17万検体以上の分析実績のある弊社にぜひお任せください。

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