もう迷わない!アスベスト除去・解体工事の基礎知識と関連法規

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建物の老朽化や解体・改修工事にともない、アスベストの適切な除去が必要となる場面は年々増えています。しかし、「どの作業にどんな法律が関係しているのか」「どのように除去すればいいのか」といった基本的な知識を正しく理解していないと、法令違反や健康被害といった重大なリスクを招きかねません。

この記事では、アスベストの危険性と除去の必要性をはじめ、関連法規や作業の流れ、レベル別の対策、さらには費用相場や補助金制度までをわかりやすく解説します。発注者や施工業者にとって「知らなかった」では済まされない知識を、今こそしっかり押さえておきましょう。

【本記事の要約】
・アスベスト除去に必要な5つの主要法律と遵守ポイントが理解できる
・解体・除去作業の安全な進め方と事前調査の流れが学べる
・法令違反・健康被害を防ぐための実践的な最新対策がわかる

知っておきたいアスベスト除去に関する法律

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アスベスト除去に関する法規制は、厚生労働省・環境省・国土交通省など複数の省庁が所管し、作業の安全確保や環境保全、ばく露・飛散防止、廃棄物処理まで幅広く定められています。

しかも、これらの法律は定期的に改正される可能性があるため、関係事業者は常に最新の規制動向を把握し、誤った対応によって行政処分や罰則を受けることのないよう適切に対処する必要があります。

なぜ現在アスベスト除去が必要とされているのか

アスベストはかつて建材として広く使われていましたが、アスベストの繊維を長期間にわたって大量に吸入すると健康被害をもたらす可能性があるため、現在は使用が禁止されています。

しかし、過去に建てられた多くの建物には今もアスベストが残されており、老朽化や解体・改修工事によって飛散リスクが高まっているのが現状です。特に、アスベスト使用が多かった1970〜1990年代の建物が解体期を迎える2030年前後は除去需要のピークが予測されており、今のうちから正しい知識と対策を備えることが求められています。

アスベスト除去に関する主な法律

作業者の健康を守るための「労働安全衛生法」や「石綿障害予防規則」、アスベスト粉じんの飛散を防ぐための「大気汚染防止法」など、アスベストの除去作業は、作業者自身の安全はもちろん、周辺の生活環境への影響も懸念されるため、多くの法律で厳しく管理されています。

労働安全衛生法(安衛法)

労働者の安全と健康確保のため、アスベストの製造などを原則禁止し、作業基準、健康診断、作業主任者の選任、環境測定、保護具使用、教育訓練、記録保存などを義務付けています。

石綿障害予防規則(石綿則)

労働安全衛生法に基づき、事前調査、作業計画と届出、隔離措置(養生)、湿潤化、集じん装置使用、保護具管理、清掃、特別教育、作業記録作成・保存、立入禁止措置などを義務付けています。

建築基準法

建物の安全性確保のため、解体等工事前の調査と報告、飛散防止措置、除去・封じ込めなどの措置を義務付けています。

大気汚染防止法(大防法)

大気汚染防止のため、特定粉じん排出作業の届出、作業基準の遵守、監視・測定、措置命令・改善命令などを規定しています。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)

アスベスト廃棄物を特別管理産業廃棄物として適正に分別・保管し、許可業者への処理委託、マニフェスト管理、安定型最終処分を義務付けています。

法規制遵守の重要性と罰則

アスベストの除去作業は、時に所有者や工事関係者に予期せぬ負担や法的リスクを生じさせます。高額な処理費用に加え、不適切な対応は法的責任を問われる事態に繋がりかねません。そのため、事前にリスクを評価し、適切な対策を講じることが不可欠です。

調査・報告義務を怠った場合

アスベストの事前調査やその結果の報告を怠ったり、虚偽の報告をした場合、「大気汚染防止法」に基づき、30万円以下の罰金が科せられます。

さらに、意図的に調査を怠るなどの行為によって周囲の健康被害が発生した際には、刑事罰としての懲役刑や、損害賠償請求を受ける可能性もあるため、決して軽視できません。

作業実施の届出を怠った場合

特定粉じん排出など作業の実施に関する届出を怠った場合や虚偽の届出をした場合、直接的な罰則の対象となります。罰則は、3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金です。

ただし、災害などのやむを得ない事情がある場合には、虚偽の届出に対しても過料(10万円以下)が科されることがあります。

作業基準を遵守しなかった場合

適切な隔離措置を講じずにアスベスト除去作業を行ったり、法令で定められた作業方法を守らなかった場合も、直接罰の対象となります。この場合の罰則は、3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金です。

また、作業基準に違反した際には、改善命令や作業の一時停止命令が出されることがあります。これらの命令に違反した場合、より重い罰則として6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。

アスベスト除去作業の種類とレベル分け

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アスベスト含有建材は、飛散のしやすさに応じてレベル1からレベル3の3段階に分類されています。この分類は除去作業における危険度を示すものであり、レベルが低くなるほど飛散性も低くなります。逆に、レベルが高いほど、より厳重な飛散防止対策が必要です。

レベル1には最も飛散性の高い吹付けアスベストが該当し、レベル2には保温材や断熱材などが含まれます。これらレベル1・2の除去作業では、作業者の保護はもちろん、周辺環境への影響を最小限に抑えるため、隔離養生や負圧管理などの厳格な措置が不可欠です。

一方、レベル3は比較的飛散性の低い成形板などが該当し、他のレベルに比べてリスクは低いものの、切断や破砕といった作業では湿潤化や集じんといった適切な対策が求められます。

このように、アスベストのレベルに応じて除去作業の方法や必要な対策は大きく異なるため、事前の正確な調査と、それに基づいた慎重な対応が重要です。

レベル1の主な除去方法と対策

レベル1の吹付けアスベストの主な除去方法としては、素地から剥がし取る掻き落とし、繊維を固化させる封じ込め、物理的に隔離する囲い込みがあります。

除去作業においては、労働安全衛生法と石綿障害予防規則に基づき、作業計画の作成・届出、隔離・負圧管理、高性能集じん装置の使用、保護具装着、作業主任者の選任、環境測定、特別教育、作業記録の作成・保存が義務付けられ、大気汚染防止法による作業届出と基準遵守、廃棄物の処理及び清掃に関する法律による特別管理産業廃棄物としての適切な処理が求められます。

レベル2の主な除去方法と対策

レベル2の保温材、断熱材などの除去では、手作業による丁寧な取り外しが基本であり、配管等の場合はグローブバッグ工法も用いられます。切断・破砕が必要な場合は湿潤化と集じん装置の使用が重要です。

法規制としては、レベル1と同様に労働安全衛生法、石綿障害予防規則に基づく各種義務に加え、大気汚染防止法による作業届出と基準遵守、廃棄物の処理及び清掃に関する法律による特別管理産業廃棄物としての適切な処理が適用されます。

レベル3の主な除去方法と対策

レベル3の成形板の除去は、原型を保ったままの手作業による取り外しが原則であり、切断・破砕を避けることが重要です。除去前には十分な湿潤化を行い、切断などを行う場合は局所排気装置付き工具や隔離養生を検討します。

また除去作業に伴い、労働安全衛生法と石綿障害予防規則に基づく計画作成、保護具装着、記録保存に加え、大気汚染防止法での一定規模以上の事前調査結果報告と除去基準適用(2021年4月以降)、建築基準法での解体等工事前の調査報告、廃棄物の処理及び清掃に関する法律でのアスベスト含有産廃処理が必要です。

アスベスト除去作業の具体的な手順

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アスベスト除去においては、安全性と法令遵守を確保するために、各工程を計画的かつ丁寧に実施することが不可欠です。不適切な手順や対応は、アスベストの飛散による健康被害リスクを高めるだけでなく、行政指導や法的責任を招く可能性もあります。

円滑かつ適正に除去作業を進めるためにも、事前調査から作業計画の策定、除去作業、廃棄物の適正処理に至るまでの一連のプロセスについて、関連法令も踏まえながら工事全体の流れを正しく理解することが重要です。

解体・改修現場の事前調査

アスベスト除去の第一歩は、建物にアスベスト含有建材があるかの徹底調査です。労働安全衛生法と石綿障害予防規則で義務付けられ、専門の資格者が設計図書と現地を目視で確認、必要に応じて分析を行います。

大気汚染防止法でも事前調査と報告が義務であり、怠ると罰則があります。正確な調査は、安全で効率的な除去作業の根幹を成す重要工程です。

除去計画の作成

事前調査の結果に基づき、安全かつ適切な除去作業のための詳細な計画を立てます。労働安全衛生法と石綿障害予防規則に従って作業主任者が中心となり、作業手順、保護具、隔離養生の方法、集じん装置の種類、緊急時対応などを具体的に決定し、大気汚染防止法に基づく届出にも計画内容の記載が必須です。

綿密な計画は、作業者の安全確保、アスベスト飛散の抑制、そして法令遵守を実現するための重要な基礎となります。

除去作業の準備

除去作業に先立っては、作業場所の隔離養生や負圧集じん装置の設置など、飛散防止のための物理的措置が必要です。加えて、作業員には石綿作業従事者特別教育を受講させ、適切な保護具を配布することが義務付けられています。

周辺環境への影響を最小限に抑えるため、工事区域の明確化と標識設置も重要です。

レベル別の除去作業

アスベスト含有建材のレベルに応じて、適切な除去方法を選択し実施します。レベル1は厳重な隔離と負圧管理下で掻き落とし、レベル2はグローブバッグ工法や湿潤化手作業、レベル3は湿潤化と丁寧な取り外しが基本です。

どのレベルでも、労働安全衛生法と石綿障害予防規則の作業基準を遵守し、保護具の装着、集じん装置の使用が義務付けられ、作業主任者が安全を監督します。

除去後の清掃

除去作業完了後は、アスベスト粉じんが残存していないことを確認するため、徹底した清掃が必要です。HEPAフィルター付きの掃除機での集じんや、湿式清掃が基本となります。

また、作業区域の空気中濃度測定を実施し、基準値(0.01 f/㎤)以下であることを確認する工程も石綿障害予防規則で義務付けられています。

廃棄物の適切な処理方法

除去したアスベスト廃棄物は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づき特別管理産業廃棄物として扱われます。飛散防止のため二重梱包を行い、許可を受けた専門業者に収集・運搬を委託すると共に、マニフェストで処理の流れを管理し、最終的には安定型最終処分場にて適切に処分します。

この一連の処理は、環境保全と将来的な健康被害を防ぐための重要な社会的責任です。

アスベスト除去の費用相場と補助金制度

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アスベスト除去にかかる費用は、建物の構造や除去範囲、使用されている建材の種類、必要な養生や仮設工事の内容によって大きく変動します。そのため、一概に費用を断定することはできません。正確な見積もりを得るには、信頼できる建設業者やアスベスト除去の専門業者に現地調査を依頼し、個別に算出してもらうことが重要です。

また、自治体によってはアスベスト除去作業に対する補助金制度を設けている場合もあるため、費用負担を抑える手段として事前に情報を確認し、適切に活用することも大切です。

除去作業の費用相場

アスベスト除去にかかる費用は、作業規模や現場の条件、建材の種類や除去方法などによって大きく異なります。さらに、養生資材や保護具、作業員の人件費、廃棄物の処理費なども含まれるため、単純な単価ではなくトータルコストとして把握する必要があります。

国土交通省が公表した除去費用の目安では、アスベスト処理面積が300 ㎡以下の場合は2〜8.5万円/㎡、300〜1,000 ㎡で1.5〜4.5万円/㎡、1,000 ㎡以上で1〜3万円/㎡とされています。ただし、このデータは2007年の施工実績に基づいており、現在の費用感とは乖離している可能性があります。

費用を左右する要因

アスベスト除去費用は、対象建物の規模や構造、アスベストの種類・劣化状況、作業の難易度、必要な養生範囲や工期など、多くの要素によって変動します。加えて、使用する機材や薬剤の種類、作業員の配置人数や技術レベル、さらに除去後の運搬・処分にかかるコストも大きく影響することを理解しておきましょう。

費用の全体像を把握するには、現地調査に基づいた詳細な見積もりの取得が不可欠です。複数の業者から見積もりを取り、内容を比較・検討することで適正価格を見極めやすくなります。

信頼できる業者の選び方

アスベスト除去作業は専門性と法令遵守が強く求められるため、信頼できる業者選びが非常に重要です。選定の際には、建設業の許可、石綿作業主任者や特定建築物石綿含有建材調査者などの有資格者の在籍、過去の施工実績、厚生労働省のガイドラインや自治体の指導要綱への対応状況などを確認しましょう。

また、見積書の内容が明確で説明が丁寧かどうか、施工後の対応や安全対策の体制も評価のポイントです。第三者機関の認証や自治体の登録業者であるかどうかも、信頼性の指標となります。

法律を遵守し、適切な除去で安心できる環境を

アスベスト含有建材の除去や解体工事では、法令に基づいた適切な手順と事前調査の実施が義務付けられています。特に、2023年10月以降は、すべての建築物に対して事前調査および報告が必須化され、建築物の規模や用途にかかわらず確実な対応が求められるようになりました。

これに伴い、発注者や元請業者には、調査結果の正確性や報告内容の適正性に対する責任が生じており、「知らなかった」「うっかり」は通用しない時代となっています。除去作業関係者や周辺環境への影響を未然に防ぐことはもちろん、企業としての社会的責任を果たすためにも、アスベスト除去・解体工事に関する基礎知識や関連法規への理解を深めることが不可欠です。

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監修者:三井伸悟

1980年静岡県浜松市生まれ。2003年に東海大学海洋学部水産資源開発学科を卒業後、2004年に日本総研株式会社へ入社し、分析・環境分野でのキャリアをスタート。2011年には同社の原子力災害対策本部長に就任。その後、世界最大の分析会社グループEurofins傘下の日本法人にて要職を歴任。2017年にユーロフィン日本総研株式会社、2018年にはEurofins Food & Product Testingの代表取締役社長に就任。さらに、埼玉環境サービス株式会社取締役、ユーロフィン日本環境株式会社の東日本環境事業及び環境ラボ事業の部長も経験。2021年にアルフレッド株式会社を創業し、代表を務める。特定建築物石綿含有建材調査者、環境計量士(濃度)、作業環境測定士(第一種)、公害防止管理者(水質一種)の資格を保有し、20年以上にわたる環境・分析分野での豊富な実務経験と専門知識を活かし、持続可能な環境構築に貢献。

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