アスベストのばく露はどのくらい危険?人体への影響や種類ごとの症状も

製造工場

アスベスト(石綿)は極細繊維の鉱物であり、粉じんとなって空気中に漂うと長時間沈降しないため、呼吸と同時に人体へ入り込むおそれがあります。この繊維は一度人体へ吸入されれば排出されにくく、15〜50 年の潜伏期間を経て肺がんや悪性中皮腫、アスベスト肺などの深刻な疾患を引き起こすリスクを高めます。

このような危険性から日本では、2006 年に全面的にアスベストの使用が禁止されました。しかし、古い建造物や工業製品には今も大量のアスベストが残存しており、潜在的なばく露リスクを孕んでいる状況です。

本記事では、アスベストのばく露はどのくらい危険なのかについて、人体への影響や種類ごとの症状も解説します。

【本記事の要約】
・アスベストのばく露は直接的な原因だけでなく、間接的なものがある
・アスベストによる代表的な人体への症状は、アスベスト肺・悪性中皮腫・肺がんがある
・アスベストには6つの種類があり、それぞれで特性や人体への影響が異なる

アスベストのばく露となる原因は?

洗濯をするミドル女性(家事・主婦・家)

アスベストのばく露原因は、大別すると以下の4点の類型にわけられます。

  1. 職業ばく露
  2. 家庭内傍職業ばく露
  3. 傍職業ばく露
  4. 近隣ばく露

いずれの原因もアスベストの吸入量が少なくても、長期間の累積で健康被害を招く点が共通しています。

アスベストにはこのような性質もあることから、アスベストを含む建造物の解体や改修工事などの現場では、事前調査や隔離などが法律で義務づけられています。したがって、工事に携わる事業者は法令遵守を徹底し、安全な作業手順を構築することが不可欠です。

ここでは、アスベストのばく露となる原因を解説します。

①職業ばく露

職業ばく露は、建設現場や製造工場などの業務現場で発生する類型です。この類型は、アスベストに関する建材や材料を直接扱っていることが大きな原因です。

アスベスト粉じんの濃度が高いほど、また作業年数が長いほど、肺がんや中皮腫の発症確率が上がると調査結果で判明しています。

②傍職業性家庭内ばく露

傍職業性家庭内ばく露は、アスベストに関する作業に従事した者の作業服や、工具に付着した繊維が洗濯や掃除の際に飛散し、同居人が吸入することで発生する類型です。

③傍職業ばく露

傍職業ばく露は、自宅のリフォームやDIYでスレート板やパテ、断熱材を扱った場合に確認される類型です。多くの家庭では防じん用の装備や装置がないため、短時間であっても高濃度のばく露被害に発展するリスクがあります。

④近隣ばく露

近隣ばく露は工事対象の建造物や、製造工場などのアスベストにまつわる作業現場周辺で生活する住民に起こる類型です。これは作業によって飛散した粉じんを、周辺住民が長期間吸入することで生じてしまう原因です。

アスベストのばく露による人体への影響は?

若い女性が胸の痛みを訴える

アスベスト関連の疾患は吸入直後に症状があらわれず、15〜50 年もの潜伏期間を経て発症するケースが多く存在します。また、長年にわたってアスベストのばく露が続く者ほど、発症リスクが高まることが確認されています。

アスベストのばく露被害は軽微なものではありません。過去には「クボタショック」のような大規模な公害問題にも発展しています。

ここでは、アスベストのばく露による人体へのおもな影響を解説します。

①アスベスト肺

アスベスト肺は、アスベストの長期吸入で肺胞が線維化し、慢性的な息切れや乾いた咳が続く疾患です。アスベストの粉じんばく露が10年以上続いた者に多く、潜伏期間が15〜20 年ほどで症状があらわれるケースが一般的です。

一度、アスベスト肺が進行した肺は元に戻るのが難しく、症状が悪化すると長期の治療が求められます。

②悪性中皮腫

悪性中皮腫は胸膜や腹膜に発生する悪性腫瘍で、アスベストとの関連性が高いことが指摘されている症状です。具体的には胸や背中の痛み、呼吸困難などの症状があらわれ、早期発見が難しく、治療が遅れやすい傾向にあります。

潜伏期間は20〜50 年と最長クラスで、間接ばく露でも発症するため、完全な安全域は存在しません。

③肺がん

肺がんは、アスベスト繊維による慢性的な刺激が主因で発症すると考えられています。また、喫煙とも深い関係があることが確認されています。

アスベストのばく露から肺がんの発症までは15〜40 年の潜伏期間があり、症状があらわれた際には進行している例が多いです。

アスベストの種類ごとの症状とは?

アスベストのサンプル

アスベストは蛇紋石族のクリソタイルと、角閃石族のクロシドライト・アモサイト・トレモライト・アクチノライト・アンソフィライトに分類されます。それぞれの種類によって特性や、ばく露による人体への影響が異なります。

このようなことから、建造物の解体や改修などの工事に携わる場合には最低限の知識はおさえておくべきでしょう。

ここでは、アスベストの種類ごとの症状について、解説します。

①クリソタイル

クリソタイルは「白石綿」とも呼ばれ、世界流通量の約9割を占める種類です。その用途は幅広く、屋根材やブレーキライニング、パッキング材などにも使用されました。

角閃石族より発がん性は低いとされる一方で、長期間にわたる吸入で肺がんや悪性中皮腫を発症するリスクがあります。

②クロシドライト

クロシドライト(青石綿)は、繊維が極細かく、人体へ吸入すると残留時間が長いことからもっとも危険度が高いと評価されています。おもに吹付け断熱材や高圧管に使用されていました。

③アモサイト

アモサイトは「茶石綿」とも呼ばれ、耐熱性が高いことから断熱材や保温材として多用されました。撤去時には飛散しやすいので、湿潤化と封じ込めを組み合わせた工法が推奨されます。

角閃石族のため発がん性が高く、クリソタイルより中皮腫や肺がん発症率が高いと報告されています。

④トレモライト

トレモライトは、自然の滑石や蛭石に混入しやすい種類のアスベストです。一部の吹付け材や化粧品原料への混入事例も存在しています。

クリソタイルと比べても発がん性は高めであり、ほかアスベストと同様に長期間の吸入で肺がんや中皮腫の発症も懸念されています。

⑤アクチノライト

アクチノライトは、トレモライトに鉄が多く含まれる緑石綿です。使用例は限定的であるものの、肺線維化や胸膜肥厚などを引き起こす事例が報告されています。

⑥アンソフィライト

アンソフィライトは自然の滑石や蛭石などの不純物として含有されているアスベストです。国内では熊本県旧松橋町に小規模な鉱山が確認されています。

鉱石の混入による偶発的なばく露が問題視され、中皮腫リスクが指摘されています。

アスベストによる影響を踏まえて、厳しいルールに対応しよう!

建設現場と作業服を着た女性

本記事では、アスベストのばく露はどのくらい危険なのかについて、人体への影響や種類ごとの症状も解説しました。

アスベストのばく露は2006 年の規制以降も潜在的に残っており、解体やリフォームの需要が増加していることにともなって再飛散のリスクが高まっています。近年においても事前調査の報告義務や資格制度の開始、電子届出の義務化など、規制によるルール整備がより強化されています。

このようなことから、建造物の工事に携わる事業者は、常にアスベストに関する最新のルールを理解しておかなければなりません。もし、自社だけで完結できない場合には、専門家への依頼もおすすめです。

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監修者:三井伸悟

1980年静岡県浜松市生まれ。2003年に東海大学海洋学部水産資源開発学科を卒業後、2004年に日本総研株式会社へ入社し、分析・環境分野でのキャリアをスタート。2011年には同社の原子力災害対策本部長に就任。その後、世界最大の分析会社グループEurofins傘下の日本法人にて要職を歴任。2017年にユーロフィン日本総研株式会社、2018年にはEurofins Food & Product Testingの代表取締役社長に就任。さらに、埼玉環境サービス株式会社取締役、ユーロフィン日本環境株式会社の東日本環境事業及び環境ラボ事業の部長も経験。2021年にアルフレッド株式会社を創業し、代表を務める。特定建築物石綿含有建材調査者、環境計量士(濃度)、作業環境測定士(第一種)、公害防止管理者(水質一種)の資格を保有し、20年以上にわたる環境・分析分野での豊富な実務経験と専門知識を活かし、持続可能な環境構築に貢献。

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