アスベストスレートの見分け方と撤去・改修時の注意点|解体現場での法対応と安全対策を解説

日本全国の住宅・工場などで広く使用されてきたスレート建材の中には、アスベスト(石綿)を含む製品も多く存在します。そのため、改修・解体工事における正確な判別と適切な対応は、事業者にとって避けて通れない重要課題です。
本記事では、アスベスト含有スレートの種類や見分け方から、法的な義務、そして安全かつ適正な撤去・改修方法、さらには費用に関する情報まで、解体・改修現場でのアスベストスレート対策に携わる事業者が知っておくべきポイントを網羅的に解説します。安全でスムーズな工事実現のための参考にしてください。
【本記事の要約】
・アスベストを含む可能性があるスレートは、用途や形状により主に3種に分類される
・商品名と通称が混在し、外観や図面のみでアスベスト含有の有無を見極めるのは困難
・工場稼働中や屋根上での作業が多く、撤去工事には高コスト・高度な管理が求められる
- 1. アスベスト含有スレートとは?基礎知識と使用建材の種類
- 1.1. スレートとは?人工セメント板の定義と用途
- 1.2. アスベストが使われたスレート建材の種類
- 1.3. いつからいつまで?アスベスト使用の時期と背景
- 2. スレート屋根にアスベストが含まれているかの見分け方
- 2.1. 築年数や図面による一次確認方法
- 2.2. 商品名と外観からの判別限界
- 2.3. 確実に判断するには?専門調査の必要性
- 3. アスベスト含有スレートのリスクと法的義務
- 3.1. アスベストの健康被害とスレートの飛散性
- 3.2. アスベスト事前調査の法的義務と報告制度
- 3.3. 改修・解体時のアスベスト対応義務
- 4. アスベストスレート屋根の撤去・リフォーム方法
- 4.1. 屋根葺き替え・除去の方法と注意点
- 4.2. カバー工法・塗装など代替策の紹介
- 4.3. 工場や倉庫の場合の注意点
- 5. アスベスト含有スレートの撤去費用と補助制度
- 5.1. 撤去にかかる費用の内訳
- 5.2. 補助金活用や業者選びのポイント
- 6. アスベスト含有スレートを正しく見分けて、安全・適正な工事の実現を(まとめ)
アスベスト含有スレートとは?基礎知識と使用建材の種類

スレートは、建築現場で広く使われてきた実用的な建材です。しかしその一部には、かつてアスベストが使用されていた歴史があります。まずはスレートの基本的な種類や用途、アスベストが用いられていた背景を整理しましょう。
スレートとは?人工セメント板の定義と用途
スレートは、セメントに繊維を混ぜて薄い板状に成形した建材です。本来は天然石の粘板岩を指しますが、日本では人工的に製造されたセメント系板材をスレートと呼びます。
価格が安く、軽量で加工しやすいことから、屋根材や外壁材、天井材など、様々な建築用途に広く使われてきました。特に1960年代後半から1990年代にかけては、多くの住宅や工場に採用されています。
アスベストが使われたスレート建材の種類
アスベストが使用されていたスレート建材は、その用途や形状によって主に3種類に分類されます。それぞれの特徴を把握し、アスベストが含まれている可能性を正しく見極めましょう。
【スレートボード】
フレキシブル板や化粧セメント板と呼ばれ、通称「フレキシブルボード」としても知られています。現在のケイカル板やキッチンパネルに似た外観を持ち、防火性・不燃性能が高いことから、主に外装材としては屋根や外壁に、内装材としては台所などの壁材として使用されました。
【住宅屋根用化粧スレート】
「カラーベスト」「コロニアル」など、商品名がそのまま通称として使用されているのが特徴の一つです。主に戸建て住宅の屋根材として普及し、一部外壁での使用例もあります。厚さ5mm程度の平板形状が一般的ですが、瓦状に成形された商品も存在し、見た目での判別が難しい点に注意が必要です。
【スレート波板】
「スレート大波」や「スレート小波」といった名称で知られ、軽量で強度が高いことから、主に工場や倉庫の屋根材や外壁として使われてきました。高い不燃性能を持つ製品が多く、一部住宅用での使用もあります。
いつからいつまで?アスベスト使用の時期と背景
スレート建材にアスベストが使用されていたのは、1930年代から2004年までとされています。
国土交通省や厚生労働省の資料によると、2004年にはアスベストの製造・使用が全面的に禁止され、以降はノンアスベスト製品へと切り替わりました。ただし、1990年代後半からは一部メーカーが先行してノンアスベスト製品の開発・流通を開始しており、建築年だけでは含有の有無を断定することはできません。
スレート屋根にアスベストが含まれているかの見分け方

スレート屋根にアスベストが含まれているかどうかを判断するには、いくつかの手順と注意点があります。外観や築年数だけでは判別が難しいため、専門的な確認が重要です。
築年数や図面による一次確認方法
アスベスト含有スレートの初期判断には、建物の築年数と設計図書の確認が有効です。アスベストは2004年に原則使用禁止となるまで、特に1960年代から2000年代初頭に建てられた建物で多く使用されました。そのため、2004年以前の建築物は含有の可能性が高いと言えます。
また、設計図書や竣工図に記載された屋根材の製品名やメーカー名、製造時期が分かれば、国土交通省の「石綿(アスベスト)含有建材データベース」で詳細な含有情報を確認できます。
商品名と外観からの判別限界
スレート屋根は外観や商品名だけでアスベストの有無を見分けることが難しく、多くの製品が見た目も似ているため肉眼での判別は困難です。
また、「コロニアル」などの商品名が一般名称化しており、図面と現物が異なるケースもあります。同一商品名で含有品と非含有品が混在する時期もあったため誤った判断は飛散リスクや法令違反に直結するため、必ず有資格者による専門調査を実施してください。「石綿(アスベスト)含有建材データベース」も参考程度の活用が望まれます。
確実に判断するには?専門調査の必要性
アスベストの有無を正確に見極めるには、専門家による調査が不可欠です。2023年10月以降、解体・改修工事前には「建築物石綿含有建材調査者」など有資格者による事前調査が義務化されました。
調査では書面や現地確認に加え、必要に応じて検体を採取し、専門機関で分析を実施します。また、結果は「石綿事前調査報告システム」で自治体に提出され、それをもとに適切な工事計画が立てられます。
アスベスト含有スレートのリスクと法的義務

スレートに含まれるアスベストは発じん性が低いため、通常使用では危険性が少ないとされています。しかし、解体や改修の際には特別な措置が義務付けられており、法的なルールに沿った対応が不可欠です。
アスベストの健康被害とスレートの飛散性
アスベストは、長期間にわたり繊維を吸引することで健康被害を引き起こすとされ、特にその飛散性が問題視されています。スレートのようにセメントに練り込まれて固定されたアスベストは、通常使用では飛散しにくく「非飛散性建材(レベル3)」に分類されていますが、切断や破砕を伴う解体・改修時には飛散リスクが高まるため、厳重な管理が必要です。
アスベスト事前調査の法的義務と報告制度
アスベストによる健康被害を未然に防ぐため、国はアスベスト関連法令を強化しています。その中心となるのが、建築物や工作物の解体・改修工事におけるアスベスト事前調査の義務化です。
2021年4月1日からは、原則として全ての解体・改修工事においてアスベストの有無を事前に調査し、その結果を都道府県などに報告することが義務付けられました。さらに、2023年10月1日からは、「建築物石綿含有建材調査者」などの有資格者による事前調査が義務化し、2026年1月1日からは、一部の「工作物」においても有資格者による調査が義務化されます。
改修・解体時のアスベスト対応義務
作業にあたっては、石綿作業主任者の配置と、作業員への石綿取扱い作業従事者特別教育の受講が義務付けられています。さらに、「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」に基づき、原形での取り外しを原則とし、切断・破砕など飛散リスクのある作業は厳しく制限されています。
また、湿潤化や作業エリアの養生、粉じんの吸引、作業後の清掃など、飛散を防ぐための措置も徹底しなければなりません。
アスベストスレート屋根の撤去・リフォーム方法

アスベストが含まれるスレート屋根の対策には、葺き替え、カバー工法、塗装といった複数の選択肢があります。屋根の状態や用途に応じて、適切な工事を選ぶことが重要です。
屋根葺き替え・除去の方法と注意点
屋根葺き替えは、アスベスト含有スレートを撤去し、新たな屋根材に交換する工法で、アスベスト問題を根本から解決できるのがポイントです。
既存スレートは原形のまま慎重に撤去し、二重袋などで梱包後、適切に運搬します。撤去後は下地を確認・補修し、新しいノンアスベスト屋根材を設置すれば完了です。
カバー工法・塗装など代替策の紹介
アスベスト含有スレート屋根の対策には、完全撤去の葺き替え以外に、既存の屋根を活かした代替策もあります。既存スレートの上に軽量屋根材を重ねて飛散を防止するカバー工法がその一つで、葺き替えよりも処分費が抑えられるのが特徴です。ただし、屋根の重量増や野地板の劣化には注意が必要で、将来的な撤去時にアスベスト処理が再度発生することになります。
また、表面を塗料で保護し、耐久性を向上させる方法も代替策の一つです。スレート屋根の劣化が軽度で飛散リスクが低い場合に有効で、コストが最も低く、工期も短いのが特徴となっています。とはいえ、屋根材自体の劣化が進むと適用できず、こちらもアスベスト問題の根本解決にはなりません。
工場や倉庫の場合の注意点
工場や倉庫で多く使われている波型スレートは、耐久性や耐火性に優れ、長期間使用されてきました。こうした大規模施設では、葺き替えによる稼働停止や高額な費用を避けるため、既存屋根の上から軽量屋根材を重ねるカバー工法が多く採用されます。
工事中は粉じん対策や安全管理を徹底し、稼働への影響を最小限に抑えるための詳細な工程調整やリスクアセスメントが不可欠です。
アスベスト含有スレートの撤去費用と補助制度

撤去作業には高額な費用がかかることがありますが、補助金制度や業者の選定によってコストを抑えることも可能です。費用の内訳や注意点を理解しておきましょう。
撤去にかかる費用の内訳
撤去費用は作業面積や工法、周辺環境によって大きく変動します。特に、スレート屋根の撤去の場合は足場設置や飛散防止措置が必要となるため、よりコストがかかることを留意しておきましょう。
【事前調査費】
通常、戸建住宅や小規模な建物であれば、調査費用はおおよそ5万円〜30万円程度が相場です。一方で、中規模以上の建物や施設になると、調査対象が広くなるため数十万円規模の費用がかかることも珍しくありません。
【撤去費用】
レベル3建材の除去費用は1㎡あたり3,000円程度とされていますが、足場を組む必要がある際は一般的な撤去費用より高くなります。
【廃棄物処理費】
除去した建材を特別管理産業廃棄物として適切に収集運搬・処分する費用です。一般廃棄物と比較して処分単価が非常に高く、含有率0.1%超の「石綿含有廃棄物」と判断された場合、費用が大幅に増加します。
補助金活用や業者選びのポイント
国からの補助に加え、多くの地方自治体でもアスベスト調査や除去工事に対する独自の補助金制度を設けています。補助金の対象、金額、申請要件は自治体によって異なるため、工事を検討する前に、必ず所在地の自治体のホームページや窓口で確認しましょう。
また、見積もりは複数社に依頼し、価格だけでなく、施工実績や保有資格の有無を重視することが大切です。施工ミスや不適切な処理を防ぐためにも、経験豊富な業者に依頼するのが賢明といえます。
アスベスト含有スレートを正しく見分けて、安全・適正な工事の実現を(まとめ)
アスベスト含有スレートは、見た目では判別が困難であるため、築年数や図面、そして専門調査による確認が不可欠です。特に改修・解体工事では、飛散リスクを最小限に抑えるための厳格な手続きと法的対応が求められます。
スレートの状態や施設の規模に応じて、葺き替え・カバー工法・塗装といった選択肢を見極め、安全で持続可能な工事を実現しましょう。
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1980年静岡県浜松市生まれ。2003年に東海大学海洋学部水産資源開発学科を卒業後、2004年に日本総研株式会社へ入社し、分析・環境分野でのキャリアをスタート。2011年には同社の原子力災害対策本部長に就任。その後、世界最大の分析会社グループEurofins傘下の日本法人にて要職を歴任。2017年にユーロフィン日本総研株式会社、2018年にはEurofins Food & Product Testingの代表取締役社長に就任。さらに、埼玉環境サービス株式会社取締役、ユーロフィン日本環境株式会社の東日本環境事業及び環境ラボ事業の部長も経験。2021年にアルフレッド株式会社を創業し、代表を務める。特定建築物石綿含有建材調査者、環境計量士(濃度)、作業環境測定士(第一種)、公害防止管理者(水質一種)の資格を保有し、20年以上にわたる環境・分析分野での豊富な実務経験と専門知識を活かし、持続可能な環境構築に貢献。
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