木造住宅のアスベスト対策完全ガイド|使用建材、調査義務、除去費用を網羅

長期にわたって大量に吸引すると深刻な健康被害をもたらすことが明らかになるまで、アスベストはさまざまな建物に使用されてきました。一般住宅に多い木造住宅も例外ではなく、天井や外壁、水回り、内装などの建材にアスベストを含むケースも少なくありません。
現在、耐用年数を迎えた木造住宅の解体や改修工事が増加しています。こうした時期だからこそ、木造住宅に潜むアスベストのリスクを正しく理解し、調査・除去・管理を徹底することが、事業者・所有者双方にとって欠かせない安全対策といえるでしょう。
【本記事の要約】
・昭和期に建てられた木造住宅は、屋根や外壁、内装材などにアスベストが使用されていた
・解体や改修工事の際は、アスベスト有無を確認する事前調査が法律で義務付けられている
・除去工事では、湿潤化や手ばらしなどの飛散防止措置を徹底し、安全確保を最優先に行う必要がある
- 1. 古い木造住宅の解体・改修はアスベストに注意
- 1.1. 木造住宅にアスベストが使用された理由
- 1.2. 築50年以上は要注意!アスベストが使用された年代
- 1.2.1. 【木造住宅の耐用年数について】
- 2. 木造住宅のアスベスト含有場所をチェック
- 2.1. 木造住宅におけるアスベスト含有建材の使用場所
- 2.1.1. 【外壁】
- 2.1.2. 【屋根】
- 2.1.3. 【軒裏】
- 2.1.4. 【内装】
- 2.2. 多くはアスベストが飛散しにくいレベル3建材
- 3. アスベスト含有の有無をどう判断するか
- 3.1. 図面・施工記録からの初期確認
- 3.2. 現場での調査と試料分析
- 3.3. 調査業務は有資格者へ委託を
- 3.4. 木造でもレベル1建材が発見されることも!
- 4. 木造一戸建てにおけるアスベスト除去工法
- 4.1. 確実な除去作業準備も重要なリスクヘッジ
- 4.2. 撤去には徹底した飛散防止措置が必須
- 5. 木造住宅におけるアスベスト解体の具体的な費用相場
- 5.1. 木造一戸建て解体費用の内訳
- 5.2. 坪数・面積・築年数ごとの費用相場
- 6. 確実な事前調査で木造住宅工事のリスクを回避
古い木造住宅の解体・改修はアスベストに注意

木造住宅と聞くと、鉄筋コンクリート造に比べてアスベストとは無縁と思われがちですが、実際にはそうではありません。屋根材や外壁材、断熱材など、多くの部位にアスベストを含む建材が使われてきました。特に昭和期に建てられた住宅では、耐火・断熱性を高めるために採用されたケースが多く、築年数が経過した木造家屋ほど注意が必要です。
改修や解体の前には、有資格者による事前調査を必ず実施し、アスベストのリスクを可視化することが不可欠です。
木造住宅にアスベストが使用された理由
アスベストは、耐火性・断熱性・防音性に優れ、安価で加工性にも優れた鉱物繊維です。1960年代~1980年代前半の住宅建築で幅広く使用されました。
木造住宅では、屋根材や軒裏、壁下地などに使われ、住宅の寿命を延ばす素材として重宝されたのが実情です。熱や湿気、酸・アルカリにも強いため、火災対策や耐久性向上の目的で利用が進みました。その結果、木造住宅でもアスベスト残存のリスクを無視できない状況となっています。
築50年以上は要注意!アスベストが使用された年代
築50年以上の木造住宅は、1960年~1970年代に建てられたものが多く、当時はアスベスト含有建材が一般的に使用されていました。2006年の全面禁止まで段階的に使用制限が進みはしたものの、それ以前の建物では残存の可能性が高いのが現実です。
築年数の古い木造家屋を解体・改修する場合は、アスベスト調査を初期段階で組み込み、施工計画を立てることが安全確保につながります。
【木造住宅の耐用年数について】
一般的に、木造住宅の物理的な耐用年数は30年を超える場合が多く、特に築30年以上の建物は、現行の耐震基準を満たしていない可能性から建て替えのニーズが高まっています。今後、築古の木造住宅の解体工事はますます増加する見込みです。
解体工事が増えるほど、アスベスト飛散のリスクも高まるため、事業者としては、最新の法規制に基づいたアスベスト対策の重要性を改めて認識する必要があります。
木造住宅のアスベスト含有場所をチェック

木造住宅に使用されているアスベスト含有建材は、屋根、外壁、天井、床など、多岐にわたります。どの箇所にどのような建材が使われているかを知ることは、事前調査の精度を高め、適切な工事計画を立てるために不可欠です。
ここでは、国土交通省の資料などをもとに、木造住宅において特にアスベストが潜んでいる可能性が高い場所と、具体的な建材の種類について解説します。
木造住宅におけるアスベスト含有建材の使用場所
木造住宅では、主に屋根・外壁・軒裏・内装の各所でアスベストが使われています。外壁には窯業系サイディングボード、屋根には波板スレートやスレート瓦、軒裏にはケイ酸カルシウム板、内装では天井ボードや床下地などが典型例です。
これらの建材は耐久性に優れる一方で、切断・破砕時に繊維が飛散するリスクがあります。古い木造住宅を扱う際は、施工対象部位の建材を慎重に確認し、必要に応じてサンプリング調査を行いましょう。
【外壁】
木造住宅の外壁では、窯業系サイディングやセメント板(セメント系ボード)、そして外壁モルタルの仕上塗材などにアスベストが使用されていました。
サイディング材やセメント板は、耐火性や強度を高めるためにアスベスト繊維が混入されています。これらの外壁を張り替えたり、高圧洗浄などで破損させたりする際には、粉じんの飛散に注意し、事前にアスベスト含有の有無を確認しましょう。
【屋根】
屋根材では、化粧スレート(コロニアル)や波形スレート板、セメント瓦などにアスベストが含まれているケースが多く見られます。これらの建材は、耐久性を高める目的でアスベストが使用されており、いずれもセメントなどで固められた非飛散性のレベル3建材が主体です。
屋根の葺き替えや解体工事の際には、建材の切断や破砕を伴うため、飛散防止のための対策が必須となります。
【軒裏】
軒裏(軒天)は、火災の延焼を防ぐために耐火性が求められる箇所です。そのため、石綿セメント板やケイ酸カルシウム板といったアスベスト含有のボード類が多く使用されていました。
軒裏ボードの張り替えや解体を行う際にも、これらの建材の破損によるアスベスト飛散リスクに注意が必要です。事前の図面調査と目視調査で、使用されているボードの種類を特定することが重要となります。
【内装】
木造住宅の内部では、天井や壁のボード材、押入・間仕切りのボード、ビニル床タイル・シート、そしてモルタル壁の塗材などにアスベストが含まれていることがあります。
また、一部の古い建物では、天井裏などに飛散性が高い吹付けアスベストが使用されている可能性も否定できません。リフォームで内装を解体する際には、特に目視で確認しにくいボードの裏側なども含めて慎重に調査する必要があります。
多くはアスベストが飛散しにくいレベル3建材
木造住宅に使用されているアスベスト含有建材の多くは、セメントなどで固められた成形板であり、飛散性の低い「レベル3建材」に分類されます。レベル3建材は、建材がそのままの状態で使用されている限り、アスベスト繊維が空気中に飛散する可能性がは低いのが特徴です。
しかし、解体や切断、破砕といった作業によって建材が破壊されると、繊維が飛散するリスクが大幅に高まるため、工事の際は適切な飛散防止措置が義務付けられています。
アスベスト含有の有無をどう判断するか

解体・改修工事に携わる事業者や企業は、法令を遵守し、工事中のリスクを最小限に抑えるためにも、正確な調査プロセスを踏む必要があります。リスク管理のためにも、木造住宅におけるアスベスト含有建材を見極めるための、調査の進め方と留意点を覚えておきましょう。
図面・施工記録からの初期確認
調査の第一段階では、建築当時の設計図書や施工記録を確認します。使用された建材のメーカー名や型番を把握できれば、国土交通省の「石綿含有建材データベース」で照合が可能です。これにより、現場調査前にリスク箇所を絞り込み、効率的な調査計画を立てることができます。
現場での調査と試料分析
書面調査で特定できない場合や、含有の可能性がある場合には、資格者による現地調査と分析調査を実施します。現地調査では資格者が建材の設置状況を確認、必要に応じて試料を採取します。採取試料はJIS規格に基づく分析機関で検査され、正式な調査報告書として記録されます。
調査業務は有資格者へ委託を
アスベストの事前調査は、大気汚染防止法に基づき、「建築物石綿含有建材調査者」などの所定の資格を持つ専門技術者によって実施することが義務付けられています。資格のない者が行った調査は、法的な要件を満たしません。木造住宅の改修・解体工事を発注する際は、必ず法令に基づいた資格を持つ調査機関に業務を委託し、正確で信頼性の高い調査結果を得ることが重要です。
木造でもレベル1建材が発見されることも!
木造住宅ではレベル3建材が主体ですが、必ずしもそれだけとは限りません。稀にレベル1の吹付けアスベストや、レベル2のアスベスト含有保温材といった、飛散性の高い建材が天井裏や配管周りなどで見つかることがあります。
レベル1やレベル2建材が見つかった場合は、除去作業が非常に難しくなり、厳重な隔離措置と高額な費用が必要となるため、事前の徹底した調査が重要です。
木造一戸建てにおけるアスベスト除去工法

アスベスト含有建材が特定された場合、解体・改修工事では、アスベストの除去工法が選択されます。特に木造住宅の多くを占めるレベル3建材は、成形板として使用されているため、撤去には飛散防止に特化した作業準備と工法が不可欠であることを覚えておきましょう。
確実な除去作業準備も重要なリスクヘッジ
アスベストの除去作業を行う前には、作業計画の作成、作業区画の隔離養生、負圧除じん機の設置、そして作業員への特別教育と防護具の着用など、法令で定められた厳重な準備が必要です。
これらの準備は、アスベスト繊維の外部への飛散を確実に防ぐための重要なリスクヘッジです。準備を怠ると、作業員の健康被害や近隣住民とのトラブル、そして法規制違反による罰則に繋がります。
撤去には徹底した飛散防止措置が必須
アスベスト成形板の撤去においては、建材を破砕せずに取り外す「手ばらしによる除去」が原則となります。作業中は、アスベスト繊維の飛散を抑えるために、建材表面を湿潤剤で湿らせることが必須です。
湿潤化と手ばらしにより、粉じんの発生を最小限に抑え、特別管理産業廃棄物として厳重に梱包し、許可を受けた業者によって適正に処理されます。
木造住宅におけるアスベスト解体の具体的な費用相場

木造住宅の解体・改修費用は、構造や面積、アスベストの有無によって変動します。一般的な木造住宅の解体・改修に加え、アスベスト調査・分析・除去・廃棄までを含めると、トータルでの費用が大きく跳ね上がることもあるため、事前にしっかり見積もることが重要です。
木造一戸建て解体費用の内訳
費用の主な内訳は、解体工事費、アスベスト調査・分析費、養生・飛散防止費、除去作業費、廃棄物処理費、運搬費などです。アスベスト除去部分だけでも数十万円規模になる場合があり、建材の種類や数量によって大きく変動します。
坪数・面積・築年数ごとの費用相場
木造住宅の解体費は、延床面積30坪で約80万〜150万円とされていますが、アスベスト除去を含めると100万〜300万円以上になるケースも少なくありません。築50年以上や屋根・外壁にアスベストを多く含む場合は、さらに高額になります。そのため、事前に複数社で相見積もりを取り、費用を比較検討することが大切です。
確実な事前調査で木造住宅工事のリスクを回避
木造住宅でも、築年数が古いほどアスベスト使用の可能性が高く、法令に基づいた事前調査が必須です。建材の種類や年代を確認し、専門業者による分析調査を行うことで、工事中のトラブルや法的リスクを回避できます。安全な解体・改修を実現するためには、「まず調査から」を徹底し、確実な対策を進めましょう。
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