天井に使われるアスベストの見分け方は?危険性・建材の種類も解説!

かつてはアスベストが建材として広く使用されていましたが、健康被害をもたらすリスクがあるため、現在では製造や使用が禁止されています。特に天井では多く使われてきた経緯があり、飛散のリスクも高いことから注意が必要です。
本記事では、天井に使われるアスベストの危険性、アスベスト建材の見分け方、除去方法などについて解説します。
【本記事の要約】
・アスベストとロックウールとグラスウールの特徴を理解して区別する
・天井に使われるアスベスト建材の使用目的・形状・性質について把握する
・天井に使われるアスベストを質感、劣化状態、建材の使用年代、建材名、専門機関での分析によって見分ける
- 1. 天井に使われるアスベストの危険性
- 2. 天井に使われるアスベストと似ている建材の違い
- 2.1. アスベスト
- 2.2. ロックウール
- 2.3. グラスウール
- 3. 天井に使われるアスベスト建材の種類
- 3.1. 吹付けアスベスト
- 3.2. 吹付けロックウール
- 3.3. 吹付けバーミキュライト(ひる石)
- 3.4. 屋根用折板石綿断熱材
- 3.5. アスベスト含有石膏ボード
- 4. 天井に使われるアスベストの見分け方
- 4.1. 色・質感・劣化状態を観察する
- 4.2. アスベスト建材の使用年代を理解する
- 4.3. 図面・仕様書で建材名を確認する
- 4.4. 専門機関に分析してもらう
- 5. 天井に使われるアスベストを除去する方法
- 5.1. 除去工法
- 5.2. 封じ込め工法
- 5.3. 囲い込み工法
- 5.4. 剥離工法
- 5.5. ウォータージェット工法
- 6. 天井に使われるアスベストはしっかりと見分けることが重要
天井に使われるアスベストの危険性

アスベストは、長期間吸い込むことでじん肺や悪性中皮腫の原因になり、肺がんになる可能性も高まるとされています。かつては防音材、断熱材、保温材などとして、天井や壁に広く使われていました。
天井材として使われたアスベストは、長期間を経た後には劣化してしまい、飛散しやすくなり、人が吸い込んでしまうリスクが高まるケースがあります。そのため、アスベストが使われているかどうかを確認して、適切な対策を講じることが重要です。
天井に使われるアスベストと似ている建材の違い

天井に使われる建材の中には、アスベストと似ているものがあります。そのため、建材にアスベストが含まれているかどうか、しっかりと確認しなければなりません。それぞれの建材の特徴と見分け方について解説します。
アスベスト
アスベストは、天然の繊維状けい酸塩鉱物です。とても細い繊維であるため、飛散して人が吸い込む可能性があります。かつては、吸音や保温断熱の効果がある安価な建材として、広く建築工事に使用されていました。健康上のリスクがあるとして、2006年以降は製造も使用も禁止されました。
アスベストは、指でこすっても砕けず、繊維状態を保つという特徴があります。また、繊維状に裂ける性質があるため、肺に吸収されやすい素材です。
ロックウール
ロックウールの原料は、玄武岩や高炉スラグなどです。これらの原料を高温で溶かしてから遠心力で吹き飛ばし、繊維状に加工した人工の素材です。
熱や火に強いという特徴を活かして、断熱材や防音材などの建材に使用されています。繊維が太いので、呼吸器系に入りにくい素材です。また発がん性も認められておらず、吸い込んでも体内で溶けて分解されてしまうので無害です。
ただし、ロックウール製品の中には、アスベストが含まれているものがあるため注意が必要です。
ロックウールの詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
グラスウール
グラスウールの主な原料は、リサイクルガラスです。ガラスを高温で溶かして、遠心力で吹き飛ばし繊維化して製造される人工素材です。断熱性、吸音性、不燃性、耐久性などに優れた安価な建材として、広く使用されています。
グラスウールの発がん性は認められていません。繊維はアスベストの4倍以上の太さがあるため、吸い込んでも肺に到達する前にほとんどが除去されてしまいます。しかも体内で溶けて分解されてしまうので無害です。顕微鏡で調べると、繊維の太さでアスベストと区別ができます。
グラスウールの詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
天井に使われるアスベスト建材の種類

天井に使われる主なアスベスト建材として、5種類について解説します。それぞれの特徴について理解し、アスベストが使われているかどうか見分ける際の参考にしてください。
なお、アスベスト含有建材は、発じん性の度合い(粉じんの発生のしやすさ)によって、以下のように3つのレベルに分類されます。
- レベル1:発じん性が著しく高い
- レベル2:発じん性が高い
- レベル3:発じん性が比較的低い
吹付けアスベスト
吹付けアスベストは、アスベストとセメントを混合したものであり、繊維質の綿状になっているものです。天井や壁に吹き付けることで、耐火、防音、断熱などの効果を発揮します。経年劣化により垂れ下がる場合があり、飛散性が高いため、アスベストレベル1に該当します。
吹付けロックウール
吹付けロックウールには、アスベストが含まれていることがあります。吹付けアスベストと同様に、天井や壁に吹き付けることで、耐火、防音、断熱などの効果を発揮します。
天井断熱材としては、乾式・半湿式の吹付けロックウールが使用されます。これらは湿式に比べると、飛散しやすいという性質を持っており、アスベストレベル1に該当します。
吹付けバーミキュライト(ひる石)
吹付けバーミキュライト(ひる石)は、ケイ酸塩鉱物の一種であるバーミキュライトから製造される建材です。アスベストが混ざっている場合があるため、注意が必要です。
また、1960年〜1980年頃に製造されたバーミキュライトは、主にアメリカのモンタナ州で産出されており、不純物としてアスベストが含まれていました。経年劣化により飛散する可能性があり、アスベストレベル1に該当します。
バーミキュライトの詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
屋根用折板石綿断熱材
屋根用折板石綿断熱材は、屋根用折板の断熱材として、内側にアスベストを貼り付けた建材です。防音性や耐火性を高める効果もあります。
経年劣化により断熱材が剥がれ、粉じんが発生する可能性があります。アスベストレベル1〜2に該当する建材です。
アスベスト含有石膏ボード
アスベスト含有石膏ボードは、石膏ボードにアスベストを混合した建材です。耐火性、防音性、断熱性などに効果を発揮します。
成形板であるため、アスベストの飛散性は低く、アスベストレベル3に該当します。石膏ボードを粉砕しなければ、比較的安全に除去できます。
アスベスト建材の詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
天井に使われるアスベストの見分け方

天井に使われるアスベストの見分け方を、色・質感・劣化状態、アスベスト建材の使用年代、建材名、専門機関での分析という4つの観点から紹介します。
色・質感・劣化状態を観察する
天井に使われるアスベストを見分けるためには、色・質感・劣化状態をよく観察することが重要です。アスベストを含む建材の特徴を理解しておきましょう。
例えば、吹付けアスベストは繊維質の質感を持っています。さらに経年劣化により、綿状に垂れ下がってくる場合があります。屋根用折板石綿断熱材は、接着面から剥がれ落ちるという特徴を持っています。
アスベスト建材の使用年代を理解する
天井に使用されているアスベスト建材には、それぞれ使用された年代があるため、使用年代を理解しておくと、アスベストが使われているかどうかを見分ける際に役に立つことがあります。
例えば、吹付けアスベストは1956年~1975年頃、アスベスト含有吹付けロックウールは1961年~1987年頃、吹付けバーミキュライトは1988年頃まで、屋根用折板裏石綿断熱材は1989年頃まで、アスベスト含有石膏ボードは1970年~1986年頃などが目安です。
図面・仕様書で建材名を確認する
施工図面・建築仕様書で建材名を確認すると、アスベスト使用の有無が明らかになります。建材名、型番、仕様などを調べましょう。
ただし、建築以後に行われた改修工事などで建材が変わっていることもあるため、図面や仕様書に記載された情報と現場の状況を突き合わせて確認することが重要です。
専門機関に分析してもらう
目視や建材名の確認により、アスベスト使用の有無をある程度推定することは可能です。ただし、アスベストの有無を明確にするためには、専門機関に分析してもらうことが必須です。
現場から採取した建材のサンプルを、顕微鏡などを用いて科学的に分析し、アスベストの有無を確実に判定してもらえます。
天井に使われるアスベストを除去する方法

天井に使われるアスベストを除去するには、いくつかの方法があります。除去工法、封じ込め工法、囲い込み工法、剥離工法、ウォータージェット工法について解説します。
除去工法
除去工法は、アスベストが含まれている天井材を、下地から全て取り除く工法です。アスベストを完全に取り除けるため、工事後の定期点検や、建物解体時の再作業などは不要です。最も効果がある方法ですが、時間とコストがかかります。
封じ込め工法
封じ込め工法は、アスベストを含んでいる天井材に薬品を浸透させて、飛散しないように固める工法です。
手間が少なく、作業時間も短くて済みますが、アスベスト含有層は残るため、将来、建物を解体する際には、再度アスベスト対策が必要になります。
囲い込み工法
囲い込み工法は、アスベストの含まれている建材を、含まれていない建材で覆うことで、アスベストの飛散を防ぐ工法です。封じ込め工法よりも短時間で作業が完了するのが特徴です。
ただし、アスベストが残っているため、将来、建物を解体する際には、再度作業が必要になります。また、定期的なメンテナンスも必要です。
剥離工法
剥離工法は、剥離剤を用いて、アスベストが含まれている仕上塗材や下地調整材を柔らかくしてから取り除く工法です。散水する必要がなく、比較的安全に作業が行えるのが特徴です。
ただし、建材によっては剥離剤が有効ではない場合もあります。また、アスベストを完全に除去できない場合には、他の工法と併用しなければならないこともあります。
ウォータージェット工法
ウォータージェット工法は、超高圧水を噴射して、アスベストを含んだ塗材を取り除く工法です。アスベスト含有層を湿潤化するため、飛散を抑えられます。
ただし、廃水を全量回収して、適切な処置を行わなければなりません。薬品を使用しないため、環境への影響は比較的低いと言われていますが、コストが高くなる場合があります。
天井に使われるアスベストはしっかりと見分けることが重要
天井に使われるアスベストは劣化し、飛散するリスクが高いため、注意が必要です。アスベストの有無を確認し、適切な処置を講じなければなりません。ただし、アスベストの有無を確実に見分けるのは難しいため、信頼できる業者に分析を依頼しましょう。
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1980年静岡県浜松市生まれ。2003年に東海大学海洋学部水産資源開発学科を卒業後、2004年に日本総研株式会社へ入社し、分析・環境分野でのキャリアをスタート。2011年には同社の原子力災害対策本部長に就任。その後、世界最大の分析会社グループEurofins傘下の日本法人にて要職を歴任。2017年にユーロフィン日本総研株式会社、2018年にはEurofins Food & Product Testingの代表取締役社長に就任。さらに、埼玉環境サービス株式会社取締役、ユーロフィン日本環境株式会社の東日本環境事業及び環境ラボ事業の部長も経験。2021年にアルフレッド株式会社を創業し、代表を務める。特定建築物石綿含有建材調査者、環境計量士(濃度)、作業環境測定士(第一種)、公害防止管理者(水質一種)の資格を保有し、20年以上にわたる環境・分析分野での豊富な実務経験と専門知識を活かし、持続可能な環境構築に貢献。
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