水道用石綿セメント管の撤去時の注意点|最新規制ルールも解説

石綿(アスベスト)は耐熱性・耐久性・絶縁性といった優れた性能だけでなく、安価に生産できることから高いコストパフォーマンスを発揮する素材です。このことから数多くの建造物や製品の建材・素材として重宝されました。
しかし、石綿の粉じんを長期間吸引したことによって、人体への悪影響があることが判明し、2006年には全面的に使用が禁じられるようになりました。
ただ、セメントと混ぜて作られる「石綿セメント管」が水道管として使われていたため、水道水を通じた健康リスクへの不安も一部で指摘されています。
本記事では、水道の石綿セメント管の健康被害について、アスベストで知っておくべきルールも交えて解説します。
【本記事の要約】
・「石綿セメント管」とは、石綿とセメントを混ぜて作られた水道管のこと
・水道用石綿セメント管を通過した飲料水を経口摂取しても、微量であれば健康に影響するリスクは低い
・石綿セメント管の撤去時は「石綿障害予防規則」に則った対応が求められる
水道に使われた「石綿セメント管」とは?

「石綿セメント管」は石綿(アスベスト)とセメントを混ぜて、円筒状に成形した水道管です。石綿セメントの耐食性や柔軟性、コストの低さから、戦後の水道普及期に使われています(※1)。
しかし、耐震性が弱いことや、石綿の繊維が人体に悪影響を及ぼすことが判明し、現在では新たな水道管には使われていません。
ただ、全国的に使用されてきたこともあり、石綿セメント管が残存している場所があります。残存状況のデータは公益財団法人 水道技術研究センターが定期的に公表しています(※2)。
(※1)参考:青森県庁「石綿(アスベスト)を使用した水道管があると聞いたのですが、水道水は大丈夫ですか?」
(※2)参考:公益財団法人 水道技術研究センター「水道ホットニュース」
水道用石綿セメント管による健康影響は?経口摂取のリスクは極めて低い

石綿はその繊維を吸引することによって、人体へさまざまな悪影響を及ぼすことが判明しています。具体的には以下のような健康被害が確認されています(※)。
- 石綿(アスベスト)肺
- 悪性中皮腫
- 肺がん
しかし、これはあくまでも「石綿の繊維が主に経気吸引された場合、つまり灰に蓄積された場合」による被害であり、石綿セメント管を通過した水道水が経口摂取された場合の影響は小さいとされています。実際、1992年の水質基準見直しで厚生労働省は「経口毒性は極めて低い」と判断し、世界保健機関(WHO)もガイドラインを公表しており、厚生労働省と同じ結論を示しています。
このようなことから、水道の石綿セメント管がもたらす水道水による健康被害は少ないものといえるでしょう。
(※)参考:厚生労働省「アスベスト(石綿)に関するQ&A」
関連記事:アスベスト公害による健康被害とは?過去の事例や生じるリスクを解説
石綿セメント管の撤去時に守っておくべき7のルール

石綿セメント管は通過した水道水による健康被害はほとんどないとされるものの、石綿セメント管を撤去する際に然るべき措置を講じなければ、従業員や周辺住民への健康被害が発生しかねません。
政府は石綿の撤去に際して「石綿障害予防規則」を定め、対応を厳しく規制しています。このルールは改正が幾度となく繰り返されており、年々厳しさを増しています。石綿セメント管の撤去に携わる事業者や依頼元に適用されるため、常に最新のルールを把握しておくことが大切です。
ここでは、石綿セメント管の撤去時に守っておくべき7のルールを解説します。
①事前調査
事業者は石綿セメント管の埋没状況も踏まえて設計図書などの書類や目視で事前に調査しなければなりません。また、請負代金の合計が100万円以上の場合には、調査結果を電子システムで報告する必要があります。
2026年以降で、工作物の調査は厚生労働大臣が定める講習を修了した者しかおこなえないため、資格の取得も注意が必要です。
②作業計画の策定
工事をおこなう事業者はあらかじめ以下のポイントを踏まえた作業計画を策定しなければなりません。
- 作業の方法や順序
- 石綿粉じんの発散を防止し、または抑制する方法
- 従業員のばく露(石綿粉じんにさらされること)への防止方法
また、作業計画に則った工事を実施する必要があります。これは石綿セメント管も同様であることから注意が必要です。
③有資格者が必須
工事にあたっては「石綿作業主任者」の選任が必須です。そのため、事業者はあらかじめ石綿作業主任者の資格を持った従業員を用意しておく必要があります。
なお、石綿作業主任者は現場の監督・指揮ができる人材でなければならない点には注意が必要です。
④切断時の対応
石綿セメント管は可能な限り切断でない方法で撤去することが基本です。
ただ、やむを得ず切断する際は、散水しながら除じん性能のある電動工具を使用しなければなりません。また、切断後も粉じんが舞ってしまわないよう、措置を講じてください。
⑤関係者以外の立入規制
石綿セメント管の撤去作業時には、関係者以外の方が立ち入らないように、バリケードと看板を設置しなければなりません。夜間工事では照明と反射材で視認性を確保してください。
⑥作業に関する掲示
石綿セメント管の撤去作業をおこなう前に、以下の項目を記載した掲示物を見やすい位置に掲示しなければなりません。
- 石綿粉じんの飛散防止策の内容
- 作業期間
- 主任者の氏名
- 講習を実施した年月や内容
- 施行事業者名
- 説明責任者名
⑦正しい処理対応
石綿セメント管は「産業廃棄物」に該当するため、適切な方法で処理する必要があります。
たとえば、運搬されるまでの間には撤去物を湿潤化させるや、切断した石綿セメント管の粉じんを飛散させないよう梱包するなどの措置が必要です。
工事による健康被害を出さないために、ルールに則った正しい対応を!

本記事では、水道の石綿セメント管の健康被害について、アスベストで知っておくべきルールも交えて解説しました。
石綿セメント管は現在は新たな水道管には使用されていませんが、全国には今なお一定数の残存が確認されています。なお、水道水による健康被害のリスクは極めて低いとされており、過度な心配は不要です。
ただ、撤去時には「石綿障害予防規則」に定められたルールを徹底しなければなりません。このルールは改正が繰り返されているものであるため、常に最新の内容を理解しておく必要があります。
工事時の石綿粉じんの飛散によって従業員や周辺住民への被害を出さないためにも、ルールを理解して、正しい対応が求められます。
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1980年静岡県浜松市生まれ。2003年に東海大学海洋学部水産資源開発学科を卒業後、2004年に日本総研株式会社へ入社し、分析・環境分野でのキャリアをスタート。2011年には同社の原子力災害対策本部長に就任。その後、世界最大の分析会社グループEurofins傘下の日本法人にて要職を歴任。2017年にユーロフィン日本総研株式会社、2018年にはEurofins Food & Product Testingの代表取締役社長に就任。さらに、埼玉環境サービス株式会社取締役、ユーロフィン日本環境株式会社の東日本環境事業及び環境ラボ事業の部長も経験。2021年にアルフレッド株式会社を創業し、代表を務める。特定建築物石綿含有建材調査者、環境計量士(濃度)、作業環境測定士(第一種)、公害防止管理者(水質一種)の資格を保有し、20年以上にわたる環境・分析分野での豊富な実務経験と専門知識を活かし、持続可能な環境構築に貢献。
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