アスベスト含有リシン(吹付け仕上塗材)を見逃さないためのチェックリスト|事前調査から除去まで解説

外壁の仕上げ材として1970年代から1980年代にかけて主流だった「リシン吹き付け」。その独特の風合いの裏には、強度や耐火性を高める目的で混入されたアスベストが潜んでいる可能性があり、現在も多くの建物でリスクが残存しています。
特にリシンの場合、表面の仕上げ層ではなく、その土台となる「下地調整材」にアスベストが含まれているケースもあり、簡易的な調査では見落とされるリスクが浮き彫りになっています。
本記事では、解体・改修工事に携わる事業者が必ず知っておくべき、リシン特有の層構造に隠されたリスク、サンプリング時の致命的なミスを防ぐ方法、そして高圧洗浄をはじめとする禁止事項と適切な除去工法について徹底解説していきます。
【本記事の要約】
・アスベストは表面のリシン層ではなく、「下地調整材」に含まれているケースが多い
・コンクリート躯体に達するまで全ての層を貫通させて検体を採取することが重要
・リシン層の除去作業は「湿潤化+手作業」または「剥離剤の使用」が基本
- 1. リシン吹き付けの基礎知識とアスベスト混入の背景
- 1.1. リシン吹き付け(仕上塗材)とは?
- 1.2. アスベストが使用された年代と目的
- 1.2.1. 日本建築仕上材工業会公表の含有製品例
- 1.3. 最大のリスクは「下地調整材」への混入
- 2. 【調査・分析】リシン特有の「見落とし」を防ぐサンプリング
- 2.1. なぜリシンの調査は失敗しやすいのか?
- 2.2. 正しい検体採取:躯体までの「全層採取」が鉄則
- 2.3. 「吹付け」以外の工法にも注意は必要
- 2.4. レベル判定の複雑さと最新の法規制
- 3. 【改修・解体】高圧洗浄の抑制と適切な除去工法
- 3.1. 「高圧洗浄」はトラブルの元
- 3.2. 推奨される除去工法は湿潤化と剥離剤
- 3.3. 封じ込め・カバー工法という選択肢
- 4. 外壁リシンのリスク管理は「下地」の把握から(まとめ)
リシン吹き付けの基礎知識とアスベスト混入の背景

リシン吹き付けは、モルタル外壁やRC造建築物の外装仕上げとして広く使われてきた薄塗仕上塗材です。1970~80年代に意匠性と施工性の高さから急速に普及しましたが、当時は強度向上やひび割れ防止を目的として、アスベストが添加された製品も存在しました。
特に問題となるのは、外観では判断できない「多層構造」である点です。主材の下にある下地調整材にのみアスベストが含まれるケースが多く、これが調査漏れの主因となっています。
リシン吹き付け(仕上塗材)とは?
セメントやアクリル樹脂、顔料、そして骨材となる砕石を混合した材料を、専用のスプレー機で外壁に吹き付ける工法です。仕上がりはザラザラとした土壁のような表情を見せ、モルタル外壁やマンションの開放廊下、天井などの仕上げ材として広く採用されてきました。
バリエーションとして、アクリル樹脂を用いた「アクリルリシン」や、ひび割れ追従性を高めた「弾性リシン」などがあり、意匠性とコストパフォーマンス、防水性のバランスの良さから、日本の近代建築における標準的な外壁仕様の一つです。現在ではアスベストの使用は禁じられていますが、既存建物の改修現場では極めて遭遇率の高い建材といえます。
アスベストが使用された年代と目的
リシン吹き付けにアスベストが使用されたのは、主に1970年代から1980年代後半にかけてです。主に、ひび割れ防止、液だれ抑制、塗膜の補強などを目的に用いられていました。
2006年にアスベスト含有建材の製造・使用は原則全面禁止となりましたが、それ以前に建てられた建築物では、リシン仕上げ=アスベスト含有の可能性を前提に調査する姿勢が重要です。年代のみで判断せず、必ず分析で確認することが求められます。
日本建築仕上材工業会公表の含有製品例
日本建築仕上材工業会(NSK)のアンケート調査結果によると、具体的なアスベスト含有リシンとして複数の製品カテゴリーが挙げられています。
使用期間はおおむね1973年~1993年に集中しており、年代特定の重要な参考情報です。ただし、すべてを網羅しているわけではないため、製品名が不明な場合は必ず実分析が必要となります。
| 塗材の種類 | 販売期間 | 含有量(%) |
| 薄塗材C(セメントリシン) | 1981〜1988 | 0.4 |
| 薄塗材E(樹脂リシン) | 1979~1987 | 0.1~0.9 |
| 外装薄塗材S(溶剤リシン) | 1976~1988 | 0.9 |
| 可とう形外装薄塗材E(弾性リシン) | 1973~1993 | 1.5 |
| 防水形外装薄塗材E(単層弾性) | 1979〜1988 | 0.1〜0.2 |
| 内装薄塗材Si(シリカリシン) | 1978〜1987 | 0.1 |
最大のリスクは「下地調整材」への混入
リシン仕上げの壁面は、一般的に「下地調整材」「主材(リシン)」「トップコート(着色層)」という多層構造で成り立っています。ここで最も警戒すべきは、表面のリシン層そのものではなく、その下にある「下地調整材」にのみアスベストが含まれているケースが非常に多いという点です。
この構造を理解せず、表面だけを削って調査すると「不検出」と誤判定される恐れがあります。下地に目を向けた調査設計こそが、リシン調査における最大のポイントです。
【調査・分析】リシン特有の「見落とし」を防ぐサンプリング

表面を少し削っただけでは、アスベストが含まれる下地調整材に到達せず、誤った判定につながるため、仕上塗材の調査は、アスベスト調査の中でも特に難易度が高いとされています。正確な判断を行うためには、サンプリング方法と分析手法の理解が不可欠です。
なぜリシンの調査は失敗しやすいのか?
リシンに含まれるアスベストは、吹付け石綿のような高濃度ではなく、数%から0.1%程度と低濃度であることが多い点が特徴です。加えて、各層が薄いため、採取時に下地まで到達していないケースが多発しています。分析精度以前の「採取ミス」が、リシン調査における最大の失敗要因になり得ることを留意しましょう。
正しい検体採取:躯体までの「全層採取」が鉄則
リシンの検体採取では、カッターやコア抜きを用いて、コンクリートやモルタル躯体に達するまで全層を貫通させて採取する必要があります。表面数ミリのみの採取では意味がなく、誤判定の原因に。安全確保と精度の両面から、採取は必ず専門資格者が実施すべき工程です。
「吹付け」以外の工法にも注意は必要
リシンは吹付けが一般的ですが、ローラーやコテで施工されるタイプも存在します。重要なのは、表面がローラー仕上げで飛散性が低く見えても、下地調整材に石綿が含まれていれば規制対象となる点です。
また、工法によって除去時の法的規制レベルが変わることにも注意が必要です。吹付け施工された石綿含有リシンは、自治体によっては「吹付け石綿」に準じた管理(レベル1・2相当)を求められるケースもあります。
レベル判定の複雑さと最新の法規制
リシンは原則としてレベル3建材に該当します。近年では、年代判定だけでなく除去方法を検討する上でも「全層を対象とした分析」が重視されており、みなし判定の扱いにも注意が必要です。
【改修・解体】高圧洗浄の抑制と適切な除去工法

リシン改修工事で最も注意が必要なのなのが、高圧洗浄による粉じん飛散です。一般的な外壁塗装の常識が通用しない点を理解し、必ず湿潤化を前提とした安全な工法を選択する必要があります。
「高圧洗浄」はトラブルの元
外壁塗装前の高圧洗浄は一般的な工程ですが、石綿含有リシンに対しては注意が必要です。高圧水で塗膜が粉砕されると、剥離した微細な石綿繊維が汚染水とともに霧状になり、養生をすり抜けて周辺環境へ広範囲に飛散する場合があります。
一度飛散した繊維を完全に回収することは難しく、乾燥後に再び舞い上がる二次被害も懸念されるので要注意です。「塗装前の掃除」という一般的な工程が、法令違反や行政指導、損害賠償リスクに直結する重大な過失となり得ることを、現場全体で再認識する必要があります。
推奨される除去工法は湿潤化と剥離剤
安全な除去の基本は、湿潤化を徹底し、剥離剤で塗膜を軟化させたうえで手工具で剥がす方法です。乾燥状態での作業や電動工具の使用は厳禁で、作業範囲の隔離養生を行い、飛散防止措置を徹底することが不可欠です。
封じ込め・カバー工法という選択肢
コストや工期の制約から完全除去が困難な場合、無理に剥離せず「封じ込め工法」や「カバー工法」を採用するのも現実的な解決策です。封じ込め工法は、専用の固化剤をリシン面に浸透・コーティングし、アスベストの繊維を物理的に固定して飛散を抑えます。カバー工法は、既存の壁の上に新しい外壁材を張り付ける手法です。
ただし、将来の解体時にはアスベストが残存している前提での処理が必要になるため、建物の維持管理計画への正確な記録と、将来的なコスト・リスクを考慮した上での意思決定が求められます。
外壁リシンのリスク管理は「下地」の把握から(まとめ)
リシン外壁のアスベスト対策で最も重要なのは、表面ではなく下地を含めた正確な把握です。調査・分析・除去のいずれも専門性が求められるため、信頼できる調査・施工それぞれの専門業者と連携し、法令遵守と作業者・周辺環境の安全確保を両立させることが、事業者にとっての最適解となります。
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1980年静岡県浜松市生まれ。2003年に東海大学海洋学部水産資源開発学科を卒業後、2004年に日本総研株式会社へ入社し、分析・環境分野でのキャリアをスタート。2011年には同社の原子力災害対策本部長に就任。その後、世界最大の分析会社グループEurofins傘下の日本法人にて要職を歴任。2017年にユーロフィン日本総研株式会社、2018年にはEurofins Food & Product Testingの代表取締役社長に就任。さらに、埼玉環境サービス株式会社取締役、ユーロフィン日本環境株式会社の東日本環境事業及び環境ラボ事業の部長も経験。2021年にアルフレッド株式会社を創業し、代表を務める。特定建築物石綿含有建材調査者、環境計量士(濃度)、作業環境測定士(第一種)、公害防止管理者(水質一種)の資格を保有し、20年以上にわたる環境・分析分野での豊富な実務経験と専門知識を活かし、持続可能な環境構築に貢献。
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