アスベスト保温材とは?使われた背景・特徴・健康リスクと最新ルールを解説

アスベスト(石綿)は火や熱に強く、保温材として非常に優れた性能を持つことから、企業から一般住宅まで、幅広く使用されました。
しかし、吸入による健康被害が明らかになり、2006年には使用が全面禁止されました。とはいえ、規制前に施工された建物にはアスベストが今も残っており、関連法令は年々強化されています。
本記事では、アスベスト保温材について、使用されていた背景や特徴、健康被害のリスクと関連法令について解説します。
【本記事の要約】
・アスベストは耐火性や防火性などの火や熱に強い耐性がある
・アスベスト保温材は建造物の屋根や壁、工場の煙突やボイラーなどに使用された
・2006年以降、アスベストに関する規制が厳しくなっている
- 1. アスベストの保温材の特徴とは?使用されていた背景を解説
- 1.1. ①高い耐火性・防火性
- 1.2. ②優れた保温性
- 1.3. ③腐食にも強い耐久性
- 1.4. ④低い生産コスト
- 2. アスベストの保温材が使われている設備や場所とは?
- 2.1. ①建造物の屋根や壁
- 2.2. ②煙突やボイラー
- 2.3. ③暖房機器の内部
- 3. 【重要】アスベスト保温材の危険性を把握しておこう!
- 4. アスベスト保温材を扱う際の法令ルールと注意点
- 4.1. ①工事の事前調査
- 4.2. ②工事前の届出
- 4.3. ③有資格者の確認
- 4.4. ④工事中の隔離や方法の制限
- 4.5. ⑤作業の記録
- 4.6. ⑥作業環境と工具の制限
- 5. アスベストにまつわるルールを理解して、法令に則った対応を!
アスベストの保温材の特徴とは?使用されていた背景を解説

アスベスト(石綿)は耐火性や防火性、耐熱性など、火や熱に強い耐性があることから、さまざまな建築物に使用されています。とくに、保温材として必要な要素である「耐火・保温・耐久・低コスト」を同時に満たしており、理想的な素材として採用されました。
しかし、アスベストの繊維が人体へ悪影響を及ぼすことが判明し、2006年以降は国内での使用が禁止となりました。
ただ、40年以上にわたって輸入品を中心に使用されていた建材であったため、現在もアスベスト保温材を使った建造物や製品が残されています。このことから、アスベスト保温材を含む建造物の工事に立ち会う機会も多いため注意が必要です。
ここでは、アスベストの保温材について、4つの特徴を解説します。
①高い耐火性・防火性
アスベストは500〜800 ℃の高温でも燃えず、高い耐火性・防火性を有しています。
このような性能を有していることから、とくに一般家庭の住宅や火を扱う工事などで使用されてきました。
②優れた保温性
アスベストの繊維は微細な空気層を多く含み、熱伝導率が低い特徴があります。
この特徴から高い保温効果を発揮しており、表面温度の低下や省エネルギーの促進を図るために配管やボイラーで採用されました。
③腐食にも強い耐久性
アスベスト繊維は通常の環境条件下で分解や変質をしない性能を有しています。
この高い耐久性により、さまざまな建造物の建材として長年にわたり使用されてきました。また、半世紀以上経過してもアスベストを含む建造物が残存している大きな要因となっています。
④低い生産コスト
アスベストは天然鉱石を粉砕して選別するだけで大量に供給でき、セメントやバインダーを混ぜれば簡単に成形できます。ガラスウールが普及する前は代替品が乏しく、他素材との価格差がアスベストの普及を後押ししました。
アスベストの保温材が使われている設備や場所とは?

アスベストの保温材はアスベストの保温材は、工業施設や一般住宅の高温設備を中心に使用されてきました。アスベストは耐久性が高く、アスベストを使用した建造物や製品が残存している可能性が高いのが現状です。
ここでは、アスベストの保温材が使われている設備や場所について解説します。
①建造物の屋根や壁
アスベストは、スレート屋根板やセメント系外壁パネルにも使われています。これは工業施設に限らず、多くの一般家庭住宅の屋根や壁に使われているため、依然として大きな問題となっています。
②煙突やボイラー
アスベスト保温材は高い耐火性・防火性に優れており、工場のボイラー胴体や煙突外面に使用された例が多く存在します。ボイラーの種類によっては接続部品といった細かな部分にも使用された例が見られます。
③暖房機器の内部
アスベストは暖房機器にも使用され、ストーブや給湯器の燃焼室内張りに用いられた事例があります。対象機器は基本的に処分の対象としている一方で、中古市場で古い機器が流通しており、依然として問題になる用途といえるでしょう。
【重要】アスベスト保温材の危険性を把握しておこう!

アスベストは耐火性・防火性・耐久性など、優れた性能を持った保温材である一方で、人体に悪影響を及ぼします。過去にはアスベストによる公害事件にも発展しており、長期にわたって数多くの人々がばく露被害を受けています。
アスベストの繊維は、吸入してもすぐに症状が出るわけではなく、長期間にわたって石綿(アスベスト)肺等の発症要因になると考えられています。症状が現れるまで20〜40年かかるケースもめずらしくなく、過去の公害事例ではしばらく時間が経った後、退職後の元作業員や周辺住民がアスベストに関連する病気を発症しました。
現在でもアスベストを使った建造物は数多く残っているため、解体や改修などの工事をおこなう際にはルールに則った慎重な対応が求められるでしょう。
アスベスト保温材を扱う際の法令ルールと注意点

アスベスト建材や保温材を扱う場合には「石綿障害予防規則」に則った対応が求められており、解体や改修工事に携わる事業者であれば最低限知っておかなければなりません。この規則に違反すると行政処分や工期遅延だけでなく、周辺住民へのばく露被害を誘発する危険性もあるため慎重な対応が求められます。
ここでは、アスベスト保温材を扱う際に知っておきたいルールについて、解説します。
①工事の事前調査
建造物の解体や改修などの工事には、アスベスト建材・保温材の有無を事前に調査しなければなりません。この事前調査は厚生労働大臣が定める講習を修了した者が実施し、調査結果の報告や記録の保存が求められます。
②工事前の届出
アスベストが含まれる保温材などの除去工事を実施する場合、着工の14日前までに労働基準監督署に届出が必要となりました。書類には飛散防止措置や工程表を記載し、不備があると差し戻されて工期が延びる原因になってしまいます。
届出を怠ると罰則の対象となり、工事自体ができなくなるため注意が必要です。
③有資格者の確認
アスベストのレベル2建材を使った工事の現場には石綿作業主任者を配置し、作業員全員が特別教育を修了していることを確認しなければなりません。もし、無資格者が作業に着手した場合には、罰則が科せられるおそれがあります。
④工事中の隔離や方法の制限
アスベストを含んだ建造物の工事をおこなう際には、工事中はアスベストが飛散しないよう、作業区域を適切に隔離しなければなりません。また、除去の際にも然るべき措置を実施する必要があります。
もし、隔離が不十分なまま作業してしまうと、アスベスト繊維が広範囲へ散布し、従業員や周辺住民にばく露するおそれがあります。
⑤作業の記録
アスベストが含まれている建造物や工作物などの工事は、作業の実施状況を写真で記録することが求められます。
保存内容は従業員の⽒名や従事した期間などが定められています。加えて、保存期間も定められており、記録してから3年間です。
⑥作業環境と工具の制限
アスベストを使った建材・保温材の切断といった作業をおこなう場合、湿潤な状態で、除じん性能を有する工具を使用しなければなりません。また、状況によってアスベストの粉じんを発散させないための措置も講じる必要があります。
アスベストにまつわるルールを理解して、法令に則った対応を!

本記事では、アスベスト保温材について、使用されていた背景や特徴、人体へのリスクや法律・制度上のルールを解説しました。
アスベストに関する規制は毎年のように改正され、2024年4月には除じん性能付き電動工具の使用を義務化、2025年4月には立入禁止表や退避措置の対象をすべての作業者に拡大されました。また、2026年1月には特定工作物の解体も事前調査が義務化される予定です。
そのため、アスベストを扱う現場では、基本的な知識に加え、年々更新される最新の法規制や現場対応を常に把握することが求められます。
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1980年静岡県浜松市生まれ。2003年に東海大学海洋学部水産資源開発学科を卒業後、2004年に日本総研株式会社へ入社し、分析・環境分野でのキャリアをスタート。2011年には同社の原子力災害対策本部長に就任。その後、世界最大の分析会社グループEurofins傘下の日本法人にて要職を歴任。2017年にユーロフィン日本総研株式会社、2018年にはEurofins Food & Product Testingの代表取締役社長に就任。さらに、埼玉環境サービス株式会社取締役、ユーロフィン日本環境株式会社の東日本環境事業及び環境ラボ事業の部長も経験。2021年にアルフレッド株式会社を創業し、代表を務める。特定建築物石綿含有建材調査者、環境計量士(濃度)、作業環境測定士(第一種)、公害防止管理者(水質一種)の資格を保有し、20年以上にわたる環境・分析分野での豊富な実務経験と専門知識を活かし、持続可能な環境構築に貢献。
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