アスベスト含有塗料とは?仕上塗材に潜むリスクと調査・除去方法を徹底解説

目地に沿って亀裂が入ったALC

アスベストは断熱材やスレートだけでなく、塗材にも使用されてきたことをご存じでしょうか。特にリシンやスタッコなどの外壁仕上げ、天井の塗材、さらには下地調整材や耐火塗料にまで混入されていた例があり、解体や改修の現場では見落としやすいリスクのひとつです。外観からは判別できず、正確に把握するには書面調査や現地確認に加え、層別分析を含む専門的な検体分析が欠かせません。

本記事では、アスベスト含有塗料の特徴と使用事例、調査・分析方法、安全な除去工法、そして現場で注意すべきポイントを整理し、事業者が押さえておくべき実務的な知識を解説します。

【本記事の要約】
・アスベストは「塗料」そのものよりも、「塗材」に含まれるケースがほとんど
・外観だけでは判別できず、事前調査と層別分析による確認が必須
・仕上塗材は、正しい工法を選ぶことでアスベストの飛散リスクを大幅に減らせる

アスベストと塗料(仕上塗材)の関係性

サイプラスのアミアントスにある廃病院のコンクリート壁に、緑がかったペンキの剥がれた跡がある

アスベスト含有塗料は、単に色や意匠のための「ペンキ」とは異なり、外壁や天井の仕上塗材、下地処理材など、建材の一部として施工されてきました。そのため「塗料単体」を警戒するよりも、塗料を含む建材に注目することが重要です。

なぜ塗料や仕上塗材にアスベストが使われたのか

アスベストは、耐熱性・耐摩耗性・耐久性に優れていることから、「ひび割れ防止」「耐火性強化」「付着性向上」などを目的に、塗料や仕上塗材に使用されてきました。また、安価で扱いやすい材料という特徴も重視され、高度経済成長期の建築ラッシュでは多くの建築物で採用されており、当時建てられた建築物の解体・改修工事に携わる際には注意が必要です。

アスベスト含有塗料は仕上塗材としての使用が一般的

アスベスト含有塗料は、主に建物の外壁や内壁に意匠性を出すための仕上塗材として使用され、代表的なものはリシン、スタッコ、吹付けタイルなどです。

その他には、壁の凹凸を平滑にするための下地材や、補修用のパテ材に混入していることもあります。表面の塗膜に隠れて見えない場合が多いため、事前調査ではこれらの層まで確認することが求められます。

アスベストレベル1建材は仕上げ塗材?

「石綿含有吹付けパーライト」や「石綿含有吹付けバーミキュライト」は、内装仕上げ材として使われた軽量塗材ではありますが、大気汚染防止法上は「仕上げ塗材(レベル3)」ではなく、「吹付け石綿(レベル1)」として区分されます。そのため、これらの建材を撤去・処理する際は、レベル1建材として、飛散防止措置を講じるなどの特別な注意が必要です。

耐熱塗料や耐火塗料としての使用ケースもある

一般的な外壁や天井の仕上げ材以外にも、特殊な例として、アスベストが延焼防止塗料(レベル3)に利用されていたケースも存在します。

アスベストは熱に強く、火災時の延焼防止効果があるため、ボイラー室や焼却炉の壁面、配管の被覆などに使用されていました。これらの部位を解体・改修する際には、特に注意が必要です。見た目だけでは判断が難しいため、専門家による詳細な調査を必ず実施しましょう。

アスベスト含有塗料の調査・分析方法

錆びてひどく危険なアスベストの屋根。拡大鏡で見ると、アスベストの粉塵が飛散。

アスベスト含有塗料は、その種類や塗られた建物の状態によって、外観だけでは見分けることが非常に困難です。そのため、解体や改修を安全に進めるためには、事前の段階で慎重な調査と分析を行う必要があります。

事前調査の義務と法的要件

建築物等の解体・改修工事を行う事業者は、大気汚染防止法や石綿障害予防規則に基づき、工事前にアスベストの有無を事前調査する義務があり、調査を怠ったり、虚偽の報告をしたりした場合は、罰金や作業停止命令などの厳しい罰則が科せられます。法令を遵守し、作業従事者の安全を確保するためにも、正確な事前調査は必須です。

塗料が絡む事前調査のチェックポイント

0.1重量%を超えるアスベスト含有製品の製造・使用等が禁止された2006年9月より前の建造物には、アスベスト含有塗料を使用した建材が使用されている可能性があるため、解体・改修工事を行う際には事前調査が欠かせません。特に仕上塗材に関しては、その施行構造上、より慎重な調査が求められます。

書面・図面調査で使用箇所を把握

分析調査を実施する前に、設計図、竣工資料、改修履歴などを確認し、アスベスト使用の可能性箇所を特定します。書面情報が不足している場合や、建材名が略称の場合もあるため、発注者へのヒアリングも重要です。

現地調査で建材の状況を確認

書面調査の結果に基づき、専門資格者が現地で建材の設置状況、種類、劣化度を目視で確認します。図面との相違も多いため、現場の実態と照合し慎重に進めなくてはなりません。

また、建材情報でアスベストの有無が明確なら不要ですが、不明な場合は試料を採取し、分析調査を行います。その際注意すべきは、仕上塗材の層は複雑に重なり合っており、その下の層には下地調整材が塗られている点です。

アスベストは主にこの「仕上塗材の主材」や「下地調整材」に含まれているため、どの層にアスベストがあるかを層別分析で特定することが適切な除去方法を検討する上で重要になってきます。

【層別分析とは?】

層別分析は、外壁表面の仕上塗材から下地調整材までを層ごとに切り分け、どの層にアスベストが含まれているかを特定するための分析方法です。

層別分析を行わずに一括で分析すると、どの層に含まれているかを判断できないため、結果的に“全層に含まれているもの”として扱わざるを得ません。その場合、本来不要な部分まで除去対象となり、作業の手間や費用が大幅に増えてしまいます。

必要な箇所だけを的確に除去・処理するためには、仕上塗材の分析において層別分析を実施することが基本となることを留意しましょう。

アスベスト含有塗料・塗材の安全な除去・改修方法

高圧洗浄機を使って屋外の床を掃除

アスベスト含有塗料や仕上塗材を扱う場合は、適切な除去・改修工法を選定する必要があります。塗膜の状態や付着部位、飛散性のレベルによって対応は異なり、誤った施工は重大な飛散リスクにつながります。

飛散レベルに応じた作業計画

アスベスト含有塗材は飛散性が低いレベル3に該当しますが、解体・改修時に破壊・切断・研磨すると飛散リスクが高まるため注意が必要です。レベル1のような厳重な隔離は不要ですが、飛散防止のための適切な作業計画が不可欠となります。

除去前の準備:飛散防止の徹底

アスベスト含有仕上塗材は、除去前の準備が最も重要です。作業場所を養生シートで覆い、外部への粉じん流出を防ぎ、除去箇所に湿潤剤を十分に噴霧してアスベスト繊維を水分で重くして飛散しにくくします。作業員は必ず防護服や防じんマスクを着用してください。

アスベスト含有仕上塗材の処理工法は主に3種類

除去作業の際は、正しい工法を選ぶことでアスベストの飛散リスクを大幅に減らすことができます。電動工具の使用は厳禁とし、手作業や剥離剤、高圧水を利用した工法で安全に除去しましょう。

【手作業による剥離】

ヘラや皮スキなどの手工具を使って、塗材を慎重に剥がしていきます。この際、電動工具や高圧洗浄機は大量の粉じんを発生させるため、原則として使用してはいけません。

【高圧水洗工法】

湿潤化と同時に高圧水を噴射して塗材を除去する工法です。飛散防止効果が高い一方で、汚染水の適切な処理が必須となります。

【剥離剤工法】

専用の剥離剤を塗材に塗布して軟化させ、手作業で剥がす工法です。この方法は飛散が少なく、効率的な除去が可能です。

含有塗料の危険性を見抜くには専門家との連携が最重要

アスベスト含有塗料は仕上塗材や下地材、耐熱塗料などに使われており、外観から判別することは困難です。正確に把握するには、設計図書の確認や現地調査に加え、層別分析を含む専門的な検体分析が欠かせません。誤った判断は不要な除去や飛散リスクにつながるため、最終的には資格と実績を備えた専門業者に調査を依頼することが、安全かつ確実な対応につながります。

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監修者:三井伸悟

1980年静岡県浜松市生まれ。2003年に東海大学海洋学部水産資源開発学科を卒業後、2004年に日本総研株式会社へ入社し、分析・環境分野でのキャリアをスタート。2011年には同社の原子力災害対策本部長に就任。その後、世界最大の分析会社グループEurofins傘下の日本法人にて要職を歴任。2017年にユーロフィン日本総研株式会社、2018年にはEurofins Food & Product Testingの代表取締役社長に就任。さらに、埼玉環境サービス株式会社取締役、ユーロフィン日本環境株式会社の東日本環境事業及び環境ラボ事業の部長も経験。2021年にアルフレッド株式会社を創業し、代表を務める。特定建築物石綿含有建材調査者、環境計量士(濃度)、作業環境測定士(第一種)、公害防止管理者(水質一種)の資格を保有し、20年以上にわたる環境・分析分野での豊富な実務経験と専門知識を活かし、持続可能な環境構築に貢献。

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