石綿作業主任者は何ができる資格?役割や業務内容、取得試験の概要も

石綿(アスベスト)は自然界に存在する天然の繊維状鉱物であり、過去には耐火性や防火性、耐熱性など、優秀な性能を有する建材として使用されていました。しかし、長期間吸引すると、人体への深刻な健康被害につながるおそれがあるとして、日本では2006年以降、アスベストの使用が禁止されました。

ただ、多くの建造物に使用されていた建材であることから、今なおアスベストを使用した建造物が残っています。このような背景から、現在の日本ではアスベストを使用した建造物を解体・改修する際に「石綿作業主任者」の選任が必要です。

本記事では、石綿作業主任者が何ができる資格なのかについて、役割や業務内容、取得試験の概要を解説します。

【本記事の要約】
・石綿作業主任者とは、アスベストに関する解体や改修工事で必須となる資格である
・石綿作業主任者の資格は、講習を受けた上で修了試験を合格すると取得できる
・石綿作業主任者の資格試験は難易度が易しく、合格率は9割超とされている

石綿作業主任者とは、アスベストに関する解体や改修工事で必要な資格

石綿作業主任者は、2006年のアスベストの使用禁止や労働安全衛生法の改正を背景に、アスベストが使用された建造物の解体や改修を安全に扱うために設けられた国家資格です。解体や改修の工事現場で作業監督や指揮をおこないます。

石綿作業主任者は建設業界において、特に重宝されています。これは古い建物の解体やリフォーム需要が増えているなかで、アスベストに関するリスクが依然残っており、適正に処理できる人材が求められているためです。

これから石綿作業主任者の資格を取得したい場合には、その役割や仕事内容を理解し、「何ができる資格なのか」をイメージしておくことが大切です。

ここでは、石綿作業主任者について、その役割や業務内容を解説します。

石綿作業主任者の役割は、現場にいる作業者の安全を守ること

石綿作業主任者は、労働安全衛生法第14条や石綿障害予防規則第19、20条にもとづき、解体・改修の工事現場にいる作業者の安全を守るための役割を担っています。

2006年にアスベストの使用が禁止されて以降も、既存の建造物に残っているアスベスト建材への対応は欠かせません。石綿作業主任者が現場の実情を踏まえ、作業者が誤った方法で作業しないよう法令を順守させることが重要です。

業務内容はアスベストが使用された建造物の工事現場の作業監督や指揮

石綿作業主任者は、アスベストが使用された建造物の解体や改修工事において、アスベストを飛散させないための作業計画を策定し、現場の作業者の指揮をおこないます。また、換気設備の点検や石綿廃棄物の取扱いを確認することも大切な仕事内容の一つです。作業員が防じんマスクや防護服を正しく着用しているか監視し、万が一のトラブルが発生した場合には迅速に対応することも含まれています。

【重要】石綿作業主任者は、講習での資格取得が必須!

石綿作業主任者として現場を指揮するには、都道府県労働局長が登録した機関で「石綿作業主任者技能講習」を修了する必要があります。独学や実務経験だけでは主任者として選任されない仕組みであり、この講習を通じてアスベストに関する専門知識や法令を体系的に学ぶことが必須です。

受講後には修了試験がおこなわれ、合格者には講習修了証が交付されます。講習内容はアスベストの特性から関連規則、保護具や安全管理のポイントまで幅広く扱うため、現場対応に直結する実践的な知識を習得できます。

石綿作業主任者になるためのステップとは?

石綿作業主任者になるためには、都道府県労働局長の登録を受けた機関が運営する「石綿作業主任者技能講習」を受講し、修了試験に合格しなければなりません。また、講習は2日間かけて実施されます。

具体的には、1日目でアスベストの性質や人体への影響、作業環境の改善方法を、2日目で適切な保護具の使い方や関連法令を学ぶカリキュラムとなっています。2日目の講習終了後には、修了試験が実施され、各科目の得点が各科目の配点の40%以上かつ、得点合計が各科目の合計点の60%以上で合格です。

石綿作業主任者の資格は合格しなければ取得できず、現場に選任されない仕組みになっているため、十分な下調べとスケジュール管理が欠かせません。

ここでは、石綿作業主任者になるためのステップについて、以下の流れで解説します。

  1. 講習の申込み
  2. 講習の受講
  3. 修了試験の受験
  4. 修了証の交付

参考:一般社団法人企業環境リスク解決機構「石綿作業主任者技能講習」

①講習の申込み

石綿作業主任者技能講習は都道府県労働局長の登録を受けた機関で受講する必要があります。各機関の運営するサイトに公開されている日程から希望日を選択し、電話やサイトから受講の申込みをおこないます。

定員制の場合もあるため、希望する日がある人は早めの手続きを心がけましょう。

②講習の受講

石綿作業主任者技能講習は2日間にわたって開催される講習であり、それぞれでアスベストに関する知識を学びます。具体的には、下表のようなスケジュールとなっているため、カリキュラムの内容や時間が気になる場合にはあらかじめ確認しておくと良いでしょう。

講習内容はそれほど難しくないため、講習当日でしっかりと講習内容を理解するように努めましょう。

1日目
時間所要時間内容
9:00〜9:3030分受付
9:30〜11:402時間
休憩1回10分
健康障害予防措置に関する内容
11:40〜11:5010分質疑応答
11:50〜12:501時間昼休み
12:50〜17:204時間
休憩3回30分
作業環境の改善方法に関する内容
17:20〜17:3010分質疑応答
2日目
時間所要時間内容
9:00〜9:3030分受付
9:30〜11:402時間
休憩1回10分
保護具に関する内容
11:40〜11:5010分質疑応答
11:50〜12:501時間昼休み
12:50〜15:002時間
休憩1回10分
関連法令に関する内容
15:00〜15:1515分質疑応答・休憩
15:15〜16:20ガイダンス5分
修了試験1時間
修了試験
16:20〜16:4020分休憩
採点

③修了試験の受験

講習終了後に実施される修了試験では、1時間かけて石綿作業主任者に関する基本的な知識の理解度をはかられます。基本的には講習で学んだ内容が試験内容となっているため、当日の講習をしっかりと受講していれば合格ラインは問題ないでしょう。

試験の概要については以下のとおりとなっているため、当日までに確認しておくと安心です。

試験概要1時間
合格基準以下の2つを満たさなければなりません。各科目の得点が各科目の配点の40%以上得点合計が、各科目の合計点の60%以上

④修了証の交付

試験合格者には修了証が交付され、晴れて石綿作業主任者として活動できるようになります。解体やリフォーム現場で主任者の配置が必要となる工事も多く、持っているだけでも業務範囲が広がるでしょう。

石綿作業主任者の資格試験でおさえるべき3つのポイント

石綿作業主任者技能講習の修了試験で問われる内容は、講習で学んだ内容から出題されます。そのため、講習の内容をしっかりと理解し、事前のポイントをおさえておけばスムーズに合格を目指しやすい資格です。

ここでは、石綿作業主任者の資格試験でおさえるべき3つのポイントを解説します。

  1. 受講資格は特にない
  2. 講習と試験で2日間実施される
  3. 合格率は9割超とされている

①受講資格は特にない

石綿作業主任者技能講習は、18歳以上であれば学歴や実務経験を問わず受講可能です。そのため、解体やリフォーム現場の実務経験がない初心者でも、講習でアスベストの基礎知識から学べるため安心です。

このような受講資格の要件であることから、将来的にアスベストを使用した建造物の解体・改修工事に携わりたい場合でも受講できます。建設業界においては重宝される資格であるため、あらかじめ取得を目指すのも良いでしょう。

②講習と試験で2日間実施される

石綿作業主任者技能講習では合計10時間程度の講習を2日間に分割しておこない、最終日に修了試験を実施します。1日目にアスベストの性質や人体への影響、作業環境の改善方法を、2日目で適切な保護具の使い方や関連法令を受講し、講習終了後に修了試験をおこないます。

講習受講中は2日間、会場に拘束される形となるため、スケジュールを空けておくようにしましょう。

③合格率は9割超とされている

石綿作業主任者技能講習の正式な合格率は公表されていませんが、多くの情報から「9割以上が合格する」との声が上がっています。

修了試験の合格ラインは、各科目の得点率が40%かつ、合計の得点率が60%以上です。試験前の講習内容から出題されることから、講習内容をきちんと理解していれば合格は難しくありません。

ただ、これは2025年4月現在の情報であり、国内の法整備が変更されれば、講習や試験内容が変更となるケースがあります。このような事態を想定して、申込み前に確認しておくことが大切です。

石綿作業主任者は今後も求められる大切な資格

本記事では、石綿作業主任者が何ができる資格なのかについて、役割や業務内容、取得試験の概要を解説しました。

アスベストを使用した建材は、長い間にわたって多くの建造物に使用されてきました。2006年のアスベストの使用禁止から年月が経過した現在でも、老朽化した建物の解体やリフォームなどの工事でアスベスト建材を扱う場面は少なくありません。

現在においてもアスベストを使った建造物の事前調査が義務化される、といった法改正もおこなわれており、現場で専門的な知識を持つ石綿作業主任者の重要性はますます高まるでしょう。

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監修者:三井伸悟

1980年静岡県浜松市生まれ。2003年に東海大学海洋学部水産資源開発学科を卒業後、2004年に日本総研株式会社へ入社し、分析・環境分野でのキャリアをスタート。2011年には同社の原子力災害対策本部長に就任。その後、世界最大の分析会社グループEurofins傘下の日本法人にて要職を歴任。2017年にユーロフィン日本総研株式会社、2018年にはEurofins Food & Product Testingの代表取締役社長に就任。さらに、埼玉環境サービス株式会社取締役、ユーロフィン日本環境株式会社の東日本環境事業及び環境ラボ事業の部長も経験。2021年にアルフレッド株式会社を創業し、代表を務める。特定建築物石綿含有建材調査者、環境計量士(濃度)、作業環境測定士(第一種)、公害防止管理者(水質一種)の資格を保有し、20年以上にわたる環境・分析分野での豊富な実務経験と専門知識を活かし、持続可能な環境構築に貢献。

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