【解体・改修前に必須】アスベスト含有調査とは?調査方法と手順

建築物の解体や改修工事を検討している企業・事業者にとって、見過ごせないのが「アスベスト(石綿)」の存在です。かつて有用な建材として広く使用されていたアスベストですが、現在では健康被害のリスクから全面的に禁止されており、過去に建てられた建物の中には、いまだにその痕跡が残されているケースも少なくありません。
そこで必要となるのが、工事着手前に行う「アスベスト含有調査」です。適切な調査を行うことで、不要な工事の中断や法令違反を回避し、現場の安全性も確保することができます。
本記事では、アスベスト調査の目的や種類、手順に加え、関連法規や費用、補助金制度、信頼できる調査事業者の選び方までを幅広く解説します。事前に知っておくことで、工事全体のリスクを大きく減らすことが可能です。
【本記事の要約】
・工事トラブルを防ぐため、アスベスト調査の法的義務と罰則を正確に把握する
・建材や現場に応じた調査手法を理解し、安全で無駄のない準備を行えるようにする
・信頼できる業者選びと費用対策を学び、調査から工事までを適切に実施する
- 1. アスベスト含有調査とは?建物の安全を守るための第一歩
- 1.1. アスベスト調査が必要な理由
- 1.2. 調査対象になる建築物の築年数と用途の目安
- 2. 知っておきたい!アスベスト含有調査の手順
- 2.1. 書面調査:正確な調査計画の立案
- 2.2. 現地での目視調査・採取:専門家による詳細な確認と安全なサンプリング
- 2.3. 分析機関での分析:科学的根拠に基づく信頼性の高い判定
- 2.4. 報告書の作成:工事計画の中核を担う公式記録
- 3. アスベスト含有調査の法的義務と罰則
- 3.1. 建築物石綿含有建材調査義務とは?
- 3.2. 事前調査の義務と報告の仕組み
- 3.3. 義務を怠った場合の罰則と法的責任
- 4. アスベスト調査にかかる費用と利用できる補助金制度
- 4.1. アスベスト含有調査費用の相場
- 4.2. 費用を抑えるためのポイント
- 4.3. 自治体の補助金制度を活用
- 5. 調査は信頼できる事業者に任せるのが安心
- 5.1. アスベスト調査に必要な資格
- 5.1.1. 【特定建築物石綿含有建材調査者】
- 5.1.2. 【一般建築物石綿含有建材調査者】
- 5.1.3. 【一戸建て等石綿含有建材調査者】
- 5.2. 資格を持つ専門家を選ぶメリット
- 5.3. 信頼できる調査会社を見つけるには?
- 6. 安心・安全な工事のために、アスベスト含有調査は最優先すべき工程
アスベスト含有調査とは?建物の安全を守るための第一歩

アスベスト(石綿)は、かつて多くの建材に使用されていた素材でありながら、飛散した繊維を長期間にわたって吸入すると人体に健康被害をもたらすことが明らかになり、現在では製造・使用が禁止されています。
しかし、過去に建てられた多くの建築物には今なおアスベストが含まれている可能性があるため、解体・改修工事に先立ち、その有無を確認する「アスベスト含有調査」が不可欠です。作業員の安全を守るだけでなく、周囲への飛散を防ぎ、適切な処理方法を選定するための重要な第一ステップとなります。
アスベスト調査が必要な理由
2022年の法改正により、一定規模以上の解体・改修工事ではアスベストの事前調査が法的に義務化されました。これは、作業時にアスベストが飛散することによって、作業員や近隣住民の健康被害が発生するのを未然に防ぐための措置です。
調査を実施しないまま工事を行えば法律違反となるだけでなく、重大な事故や訴訟リスクにつながる可能性があるため、建造物の解体・改修に関わる際には注意が必要です。
調査対象になる建築物の築年数と用途の目安
アスベストが使用されている可能性が高い建物にはいくつかの共通点がありますが、その中でも大きな指標となるのが築年数です。一般的に、アスベストの全面禁止措置が講じられた2006年以前に建築された建物は、アスベスト含有の可能性が高いとされています。
また、建物の用途や構造によってもアスベスト使用のリスクは異なることもポイントです。以下のような建築物では、用途に応じてアスベストが使用されていた事例が多く見られます。
【工場・倉庫】断熱性や耐火性を高めるため、配管や屋根材に使用
【学校・病院】断熱・防火目的に加え、吸音材として天井材などに使用
【オフィスビル・商業施設】内装材や屋根材、空調ダクト周辺に使用
【一戸建て住宅】スレート屋根材や外壁材、下地材などに使用
これらの築年数や用途に該当する建物を改修・解体する場合は、事前のアスベスト含有調査を実施することが重要です。調査を通じて正確にリスクを把握し、適切な処理計画を立てることが、法令遵守と安全確保の第一歩となります。
知っておきたい!アスベスト含有調査の手順

アスベスト調査の目的は、アスベストが存在するかどうかを確認するだけでなく、それが法的に「アスベスト含有建材」に該当するかどうかを明確にすることです。
調査は段階的な手順に沿って進められ、それぞれの工程で専門的な対応が求められます。正確な調査と円滑な実施のためには、全体の流れを事前に把握し、適切な準備と関係者との連携を図ることが重要です。
書面調査:正確な調査計画の立案
調査の出発点は、建物に関する情報の収集と計画の策定です。設計図や竣工時の資料、過去の改修履歴などを確認し、アスベストが使用されている可能性のある箇所を把握します。改修や補修などは書面がないケースも多いうえ、建材名称について正式名ではなく略称や俗称で記されていることもあるため、発注者など工事関係者へヒアリングでの確認も大切です。
また、書面調査の結果、対象となる建造物の施工年月日が2006年9月1日以降であることが明確であれば、目視調査や分析調査を行わずに、事前調査報告書を作成することが可能です。
現地での目視調査・採取:専門家による詳細な確認と安全なサンプリング
目視調査は、建築図面や改修履歴などの書面調査で得た情報をもとに、専門資格を持つ調査員が実際に現場を訪れて建材の設置場所や形状、種類を確認し、アスベスト含有の可能性がある箇所を見極める工程です。図面に記載のない建材が見つかったり、一部の施工方法が異なっていたりするケースも多いため、現場の実態と書類上の情報を照合しながら丁寧に調査します。
アスベストの有無が商品名や型番、不燃番号などの建材情報から明確に判断できる場合は分析調査を省略できますが、情報が不明な場合は試料を慎重に採取し、飛散防止対策を講じたうえで分析調査が必要です。ただし、アスベストが含まれていると仮定して取り扱う“みなし判定”を行う場合は、分析調査の必要はありません。
分析機関での分析:科学的根拠に基づく信頼性の高い判定
書面調査や目視調査ではアスベストの有無が判断できない場合には、次の段階として専門機関による分析調査に移行します。分析調査には、アスベストが含まれているかどうかを確認する定性分析と、含有している場合にその量を測定する定量分析の2種類がありますが、事前調査において重要なのは「アスベストが含まれているか否か」という点です。
そのため、実務上は定性分析のみで判定を行うのが一般的であり、「どの程度含まれているか」を明らかにする定量分析は、必要に応じて実施されるにとどまります。
報告書の作成:工事計画の中核を担う公式記録
分析結果をもとに作成されるアスベスト含有調査報告書には、調査の概要や採取箇所の位置、写真、分析内容の詳細などが記載されます。この報告書は、施工業者が安全で適正な解体・改修工事を計画するうえでの根拠資料となり、関係機関への提出にも用いられる重要な記録です。
アスベスト含有調査の法的義務と罰則

アスベストの飛散による健康被害を防ぐため、2022年4月より一部の建設工事においてアスベスト含有調査が法的に義務化されました。この規定は、「大気汚染防止法」「労働安全衛生法」「石綿障害予防規則」など、複数の法律に基づいて定められています。
調査の未実施や不備は、工事の差し止めや是正命令などの行政対応に加え、罰則の対象となるおそれがあるので注意が必要です。特に事業者・元請企業にとっては、社会的責任の放棄と見なされかねない重大なリスクであり、単なる法令対応にとどまらず、安全管理体制の基本として捉えることが重要になってきます。
建築物石綿含有建材調査義務とは?
2022年4月に施行された改正大気汚染防止法により、建築物の解体や一定規模の改修工事を行う際には、アスベストの事前調査が義務付けられています。この調査は、国が認定する「建築物石綿含有建材調査者」の資格を持つ専門技術者が実施しなければなりません。
また、調査の対象は原則としてすべての解体・改修工事ですが、建材を破損させない軽微な補修や内装の一部改装など、例外が設けられているケースもあることを留意しておきましょう。
【例外ケースの一例】
・除去を行う材が木材やガラスなどでアスベストが含有されていないことが明らかであり、当該材料の除去を行う場合に周囲の材料を破損させるとおそれがない作業。
・釘を打って固定する、ささっている釘をぬく等材料にアスベストが飛散する可能性がほとんどないと考えられる作業(ただし、電動工具を用いて壁面等に穴をあける作業は除く)。
・既存の塗装の上に新たな塗装を塗る作業など、現存するアスベストの除去を行わない作業。
【例外ケースの詳細】
「石綿障害予防規則の解説」第3条(事前調査及び分析調査) |厚生労働省
事前調査の義務と報告の仕組み
調査を完了した後は、その結果を工事開始の14日前までに、専用の「石綿事前調査結果報告システム」を通じて国へ報告しなければなりません。
このシステムは、報告義務の効率化と正確な情報管理のために整備されており、オンラインで手軽に手続きを進めることができます。報告先は、工事の規模や種類、対象となる建築物の所在地に応じて、労働基準監督署や地方公共団体(都道府県・市町村)などが自動的に指定される仕組みです。
義務を怠った場合の罰則と法的責任
調査の義務を怠ると、事業者や企業は重大な責任を問われる可能性があり、行政処分として工事の停止命令が出されるほか、最大で50万円以下の罰金が科されることもあります。
さらに深刻なのは、アスベストの飛散によって作業員や近隣住民に健康被害が生じた場合です。こうした事態では、企業や施工責任者が高額な民事賠償責任を負う可能性に加え、刑事責任を問われるケースも想定されます。その結果、損害が拡大するだけでなく、企業の信用や事業継続にも深刻な影響を及ぼしかねません。
法令遵守は当然の義務であり、アスベスト調査の徹底は企業のリスク管理と信頼維持の観点からも不可欠です。軽視することなく、着実に取り組む姿勢が求められます。
アスベスト調査にかかる費用と利用できる補助金制度

アスベスト調査は専門性の高い作業であり、一定の費用がかかります。ただし、自治体によっては調査費用を一部助成する補助金制度も用意されています。特に老朽化した住宅や中小企業の建物に対して、補助を受けられるケースが多く、費用負担を軽減できる可能性があります。早めに各自治体の制度を確認し、必要な手続きを行いましょう。
アスベスト含有調査費用の相場
通常、戸建住宅や小規模な建物であれば、調査費用はおおよそ5万円〜15万円程度が相場です。一方で、中規模以上の建物や施設になると、調査対象が広くなるため数十万円規模の費用がかかることも珍しくありません。また、建材の中でも吹付け材、断熱材、成形板などの粉じん性が高いものは、分析手法がより高度になるため、追加料金や専門的な分析費用がかかる傾向であることを認識しておきましょう。
費用を抑えるためのポイント
費用を適正に抑えるには、あらかじめ調査内容を整理し、不要な作業を省くことが重要です。例えば、全館調査が不要な場合は対象範囲を絞り込むことで、採取サンプルの数や分析回数を減らすことができ、その分コストも軽減されます。
さらに、大規模な修繕や建て替えなどのタイミングに合わせて調査を実施することで、他の工程と一体化した効率的な運用が可能になります。費用を抑えるには、価格だけでなく、調査のタイミングや実施体制にも目を向けることが大切です。
また、複数の専門業者に見積もりを依頼し、費用だけでなく対応内容や実績も含めて比較検討することが基本です。安さだけを基準に選ぶと、報告書の質や対応力に差が出てしまい、結果としてコストが高くなったり、お客様の信用を失うおそれがあるため、慎重な比較検討が必要です。
自治体の補助金制度を活用
多くの自治体では、アスベスト調査にかかる費用の一部を補助する制度を導入しており、費用負担を抑えるための有効な手段となっています。対象は、築年数が古く老朽化した住宅や、中小企業が所有する建物などで、解体・改修に先立つ調査を経済的に支援することを目的としています。
ただし、補助制度の内容は自治体によって異なり、補助率や上限額、対象となる建材、申請期間などの条件に違いがあります。申請を行う際は、事前調査の実施状況や建物の所有者・用途に関する要件を満たしているかをあらかじめ確認し、補助の適用可能性がある場合は、早めに自治体の担当窓口へ相談しておきましょう。
調査は信頼できる事業者に任せるのが安心

アスベスト調査は、専門性の高い分野であり、正確な知識と十分な実務経験が求められます。不適切な調査は、工事工程の遅延や行政からの指導、最悪の場合は法令違反といったリスクを招く可能性があるからこそ、調査は信頼性の高い事業者に依頼することが重要です。
資格や実績等を確認したうえで、誠実な対応をしてくれる業者を選ぶことが、工事の品質や安全確保に直結します。
アスベスト調査に必要な資格
建築物の解体・改修工事に際してアスベストの事前調査を行うには、建築物石綿含有建材調査者の資格が必須です。この資格は、アスベストに関する専門知識と調査技術を有することを国が認定したもので、アスベストの正確な特定と安全なサンプリングを保証するために導入されました。
必要な資格は、調査対象となる建物の種類や規模に応じて3つの区分に分かれ、それぞれに得意な領域があります。 プロジェクトに最適な専門家を選ぶことで、調査の効率性と確実性を高められるでしょう。
【特定建築物石綿含有建材調査者】
一戸建て、共同住宅、特定建築物など、全ての建築物を調査できる最も広範囲な資格です。講習内容に加えて、実地研修や口述試験も含まれ、より高度な知識と技能が求められます。
【一般建築物石綿含有建材調査者】
一戸建て住宅を含む、全ての建築物を調査できる資格です。特定調査者と同様に幅広い範囲をカバーしますが、講習内容や試験形式が特定調査者とは一部異なります。現状、業務範囲においては特定調査者との明確な違いはありませんが、将来的な法改正で区分が明確になる可能性も指摘されています。
【一戸建て等石綿含有建材調査者】
一戸建て住宅および共同住宅の住戸内部のみを調査できる資格です。共同住宅の共用部分(廊下、階段など)は調査対象外となります。比較的取得しやすい資格ですが、調査範囲が限定されます。
資格を持つ専門家を選ぶメリット
資格を有する専門家に依頼する最大の利点は、調査の精度と信頼性が担保されることです。建材の識別だけでなく、リスクの見極めや適切な分析依頼、報告書の作成に至るまで、一貫して法的基準に沿った対応が期待できます。
さらに、監督官庁への報告手続きや、その後の除去工事に関する技術的なアドバイスも受けられるため、全体の工程における不安やトラブルのリスクを大きく軽減できるのも大きなメリットです。
信頼できる調査会社を見つけるには?
適切な調査会社を見つけるには、いくつかの観点からの確認が必要です。まずは、国や自治体の認定を受けているか、公式な名簿に登録されているかを確認しましょう。そのうえで、過去の調査実績やクライアントからの評価、問い合わせ時の対応姿勢なども判断材料になります。調査内容について丁寧に説明し、不明点にも明快に答えてくれる事業者であれば、安心して任せることができるでしょう。
複数の業者を比較し、自社の目的に合った適正な調査体制を整えることが、確実な法令遵守と安全確保への第一歩です。
安心・安全な工事のために、アスベスト含有調査は最優先すべき工程
アスベスト含有建材は、建物の安全性や健康への影響から現在では厳しく規制されており、解体や改修工事を行う際には事前の調査が法的に義務付けられています。見落としや誤った判断によって法令違反や健康被害を招けば、事業者にとって大きな損失や社会的責任問題につながりかねません。
だからこそ、事前に正確な調査を実施し、信頼できる専門家の手でリスクを見極めることが、安心で計画的な工事の第一歩となります。調査から報告までを適切に行うことで、不要なトラブルやコスト増を防ぐことを心掛けてください。
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1980年静岡県浜松市生まれ。2003年に東海大学海洋学部水産資源開発学科を卒業後、2004年に日本総研株式会社へ入社し、分析・環境分野でのキャリアをスタート。2011年には同社の原子力災害対策本部長に就任。その後、世界最大の分析会社グループEurofins傘下の日本法人にて要職を歴任。2017年にユーロフィン日本総研株式会社、2018年にはEurofins Food & Product Testingの代表取締役社長に就任。さらに、埼玉環境サービス株式会社取締役、ユーロフィン日本環境株式会社の東日本環境事業及び環境ラボ事業の部長も経験。2021年にアルフレッド株式会社を創業し、代表を務める。特定建築物石綿含有建材調査者、環境計量士(濃度)、作業環境測定士(第一種)、公害防止管理者(水質一種)の資格を保有し、20年以上にわたる環境・分析分野での豊富な実務経験と専門知識を活かし、持続可能な環境構築に貢献。
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