断熱材に潜むアスベストのリスク|使用時期やレベル別で解説

断熱材は、建物の室内環境を快適に保つために欠かせない建材です。しかし、過去に使用されていた断熱材の中には、健康被害を引き起こす恐れのあるアスベストを含む製品が数多く存在します。特に、外観や名称が似ているために含有の有無を見分けるのが難しいケースも多く、誤った判断は作業者や周囲の人々に深刻なリスクをもたらすため注意が必要です。
本記事では、アスベスト含有断熱材の種類や特徴、使用年代、そして安全に取り扱うための対策方法までを分かりやすく解説します。適切な知識を身につけ、リスクを回避するための第一歩を踏み出しましょう。
【本記事の要約】
・アスベスト含有断熱材と誤解されやすい建材の特徴を理解することで誤認を防ぐ
・的確な調査・分析依頼のためにも、断熱材ごとで異なる特徴や使用年代を知ることが大切
・飛散性が高い断熱材は、建材の劣化状況や周辺環境によって除去方法の使い分けが必要
- 1. アスベスト含有断熱材の種類
- 1.1. アスベスト含有建材はレベル1~3に分類される
- 1.2. 「断熱材」と称される建材はレベル2の2種類
- 1.2.1. レベル2「断熱材」「耐火被膜材」「保温材」の違い
- 1.2.2. 「煙突用石綿断熱材」とレベル3の「煙突材」の違い
- 2. レベル1・2建材の特徴や使用年代
- 2.1. 吹付け石綿
- 2.2. 石綿含有吹付けロックウール
- 2.3. 石綿含有吹付けバーミキュライト
- 2.4. 屋根用折板石綿断熱材
- 2.5. 煙突用石綿断熱材
- 3. アスベスト含有断熱材の飛散防止対策
- 3.1. アスベスト含有建材の見分け方
- 3.2. レベル1の主な除去方法と対策
- 3.3. レベル2の主な除去方法と対策
- 4. 断熱材に潜むアスベストリスクへの正しい理解と実務対応を(まとめ)
アスベスト含有断熱材の種類

アスベスト含有断熱材は、用途や形状、施工部位によって種類が異なり、中には判別が難しいものもあります。特に、見た目が似ている建材同士で含有の有無が異なるケースも多く、誤認は適切な対策の遅れにつながります。ここでは、代表的なアスベスト含有断熱材の種類や分類方法、そして混同されやすい建材との違いを解説します。
アスベスト含有建材はレベル1~3に分類される
アスベスト含有建材は、飛散性の高さによってレベル1からレベル3に分類されます。レベル1は吹付け石綿など繊維が露出しており、軽い刺激でも飛散しやすい最も危険度の高い建材です。レベル2は成形された保温材や断熱材で、通常使用時は比較的安定していますが、撤去や切断時には多くの粉じんが発生します。レベル3は硬化した成形板などで、破砕しない限り飛散性は低いとされます。この分類は除去工法や作業基準の選定に直結するため、正確な理解が重要です。
「断熱材」と称される建材はレベル2の2種類
名称に「断熱材」と入っているアスベスト含有建材は主に屋根用折板石綿断熱材と煙突用石綿断熱材の2つで、どちらもレベル2に分類されています。
屋根用折板石綿断熱材は金属屋根の裏側に取り付けて室内の温度上昇を抑える役割として、煙突用石綿断熱材は高温の煙やガスから構造物を守る目的として使用され、いずれも工場や発電所などの大型設備で多く見られるのが特徴です。
レベル2「断熱材」「耐火被膜材」「保温材」の違い
レベル2に分類される「断熱材」「耐火被膜材」「保温材」は、いずれも建物内部の温度や火災に対する安全性を保つために使用されますが、それぞれ特徴が異なります。
【断熱材】
熱の伝わりを遮断し、建物の室内温度を一定に保つための建材です。外壁や天井、床などに使用されます。
【耐火被覆材】
火災の際に、鉄骨などが熱で変形するのを防ぐ目的で使われる建材です。レベル1に分類される「吹き付けアスベスト」と混同されやすいですが、板状に成形されたものなどはレベル2に分類されています。
【保温材】
主に配管やボイラー、空調ダクトなどに巻き付けて、熱が逃げるのを防ぐための建材です。こちらもレベル2に分類されるものが多く、石綿保温材やけいそう土保温材などが該当します。
「煙突用石綿断熱材」とレベル3の「煙突材」の違い
レベル2の煙突用石綿断熱材と同じく煙突に使用される建材に「煙突材」がありますが、こちらは断熱性能はなく、硬く成形された状態で使用されるためレベル3に分類されます。煙突材と比べて、煙突の周囲に巻き付けて使用する煙突用石綿断熱材は、切断や破砕によってアスベストが飛散するリスクが高いのでより慎重な対応が求められることを留意しておきましょう。
レベル1・2建材の特徴や使用年代

アスベスト含有断熱材は、用途や形状によって種類が分かれ、使用時期や施工部位も異なります。かつては耐熱性や断熱性、耐久性の高さから幅広く採用されましたが、健康被害が明らかになるにつれ、製造・使用は段階的に禁止されました。ここでは、レベル1と2に分類される断熱材の特徴や使用場所、主な商品名、施工されていた年代について整理し、現場での調査や判断の参考となる情報を解説します。
吹付け石綿
アスベスト繊維をセメントなどと混ぜて吹き付けた建材で、主に耐火被覆材や吸音材として使用されました。ふわふわとした見た目が特徴で、レベル1に分類されます。1960年代から1970年代にかけて、ビルの鉄骨などに広く使用されていました。
石綿含有吹付けロックウール
吹付け石綿と同様に耐火被覆材や吸音材として、1970年代後半から1980年代前半にかけて、主にアスベスト含有量が5%未満のものが使用されました。こちらもレベル1に分類され、飛散性が非常に高いため注意が必要です。
石綿含有吹付けバーミキュライト
バーミキュライト(ひる石)にアスベストを混ぜて吹き付けたもので、主に吸音材として使用されました。1980年代後半にかけて使われており、天井などに吹き付けられていることが多いのが特徴です。これもレベル1に分類されます。
屋根用折板石綿断熱材
工場や倉庫などの折板屋根の裏側に貼り付けられた断熱材で、レベル2に分類されます。アスベストを混ぜたセメントなどを板状に成形したもので、1970年代から1980年代にかけて使用されました。
煙突用石綿断熱材
ボイラーなどの煙突の周囲に巻き付けられた断熱材で、レベル2に分類されます。アスベストが含有された板状や筒状の建材で、1950年代から1980年代にかけて広く使用されました。
アスベスト含有断熱材の飛散防止対策

アスベスト含有断熱材は、そのレベルや状態によって適切な対策が異なります。特に飛散性の高い建材を安易に触ると、アスベストが空気中に飛散し、健康被害を引き起こすリスクが高まるため、含有建材の見分け方とレベル別の対策工法について知識を深めることが大切です。
アスベスト含有建材の見分け方
建材の種類や施工部位、築年数からアスベスト含有の可能性を推測できます。特に1975年以前に施工された断熱材は高確率で含有している可能性があり、注意が必要です。
ただし外観だけでは判別できず、非含有品と誤認して作業すれば重大な飛散事故につながります。確実な判断には、有資格者による目視調査やサンプリング分析が不可欠です。
レベル1の主な除去方法と対策
レベル1の吹付けアスベストは、飛散性が極めて高く、除去時には完全隔離養生と負圧集じん装置が必須です。除去工法には、素地から剥がす「掻き落とし」、薬剤で繊維を固める「封じ込め」、物理的に覆う「囲い込み」があり、建材の劣化状況や周辺環境、今後の利用計画によって最適な方法を選定します。
【掻き落とし(除去)】
アスベスト含有建材を素地から完全に剥がし取る方法です。最も確実な除去方法ですが、作業中にアスベストが飛散するリスクが最も高いため、厳重な養生や負圧除じん機などを使い、粉じんが外部に漏れないよう徹底した管理が必要です。
【封じ込め】
アスベストが含有された建材に固化剤などを吹き付け、アスベスト繊維を中に閉じ込める方法です。これにより、アスベストが空気中に飛散するのを防ぎます。ただし、建材はそのまま残るため、将来的に再び問題となる可能性があります。
【囲い込み】
アスベスト含有建材の周囲を耐火ボードやプラスチックなどで完全に覆い隠し、物理的に隔離する方法です。封じ込めと同様に、建材はそのまま残るため、恒久的な対策にはなりませんが、比較的コストを抑えられます。
レベル2の主な除去方法と対策
レベル2の保温材や断熱材は、手作業で丁寧に取り外すのが基本です。配管などの場合は、グローブバッグ工法を用いて局所的に作業し、粉じんの外部流出を防ぎます。湿潤化処理により繊維の飛散を抑えることも重要です。
断熱材に潜むアスベストリスクへの正しい理解と実務対応を(まとめ)
断熱材の中には、過去に製造されたアスベスト含有製品が多く存在し、なかにはレベル1に分類される危険度の高いものもあります。外観や名称だけで含有の有無を判断することはできず、誤った作業は重大な健康被害や法令違反を招きかねません。安全な作業のためには、有資格者による事前調査と分析を行い、慎重に対応することが不可欠です。
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1980年静岡県浜松市生まれ。2003年に東海大学海洋学部水産資源開発学科を卒業後、2004年に日本総研株式会社へ入社し、分析・環境分野でのキャリアをスタート。2011年には同社の原子力災害対策本部長に就任。その後、世界最大の分析会社グループEurofins傘下の日本法人にて要職を歴任。2017年にユーロフィン日本総研株式会社、2018年にはEurofins Food & Product Testingの代表取締役社長に就任。さらに、埼玉環境サービス株式会社取締役、ユーロフィン日本環境株式会社の東日本環境事業及び環境ラボ事業の部長も経験。2021年にアルフレッド株式会社を創業し、代表を務める。特定建築物石綿含有建材調査者、環境計量士(濃度)、作業環境測定士(第一種)、公害防止管理者(水質一種)の資格を保有し、20年以上にわたる環境・分析分野での豊富な実務経験と専門知識を活かし、持続可能な環境構築に貢献。
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