【義務化】アスベスト解体・改修に必須!湿潤化の法規制から手順、注意点まで徹底解説

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アスベスト含有建材を含む建造物の解体・改修に関わる企業や事業者がもっとも注意すべきは、アスベストの飛散防止対策です。特にアスベストが乾燥した状態での作業は飛散のしやすさが高まるため、現在は法律等で「湿潤化」が義務付けられています。

この記事では、なぜ湿潤化がこれほどまでに重要視されるのか、その必要性から具体的な手順、関連する法規制、そして作業を進めるうえでの注意点までを徹底的に解説します。義務化された湿潤化の知識を深め、安心・安全な解体・改修工事を実現してください。

【本記事の要約】
・認識不足による違反を防ぐために、湿潤化に関する法律と条例を理解する
・安全な作業環境作りに欠かせない湿潤化の目的と効果を基礎から見直す
・事前準備から実際の作業、さらには業者選びまで、湿潤化の流れを把握する

湿潤化に関する法規制とガイドライン

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アスベスト対策における湿潤化は、単なる推奨事項ではなく、労働者の安全衛生を確保するための法的義務です。厚生労働省が定める石綿障害予防規則をはじめとする関連法規を遵守し、作業内容や対象建材に応じた適切な湿潤化措置、または代替措置を確実に実施することが求められます。

法令遵守はもとより、労働者の安全と健康を守るという企業責任を果たすうえでも、これらの基準と義務をしっかり理解しておきましょう。

法律と条例による「湿潤化」の義務付け

湿潤化に関する主な法規制は、以下の3つに大別されます。それぞれの法規制が目的とする範囲に違いがあるため、適切に理解、対応することが重要です。

①労働安全衛生法・石綿障害予防規則

アスベスト含有建材の除去作業を行う場合、事前に湿潤化して粉じんの発散を抑える措置が義務付けられています。湿潤化が困難な場合は、それに代わる囲い込みや負圧集じん装置などの措置が必要です。

②特定化学物質障害予防規則

アスベストを含む作業に際しては、作業前に湿潤化することが基本。粉じんが飛散する恐れがある場合には、密閉構造や集じん装置などの併用が義務付けられています。

③大気汚染防止法

アスベスト含有建材を含む建造物などの解体・改修に際し、作業前の湿潤化及び作業中の継続的湿潤化が義務。事前調査や飛散防止措置の報告義務もあります。

湿潤化に関する具体的な基準や義務

建造物の解体や改修に従事する企業や事業者は、以下の作業においてアスベスト含有建材の湿潤化、除じん機能付き電動工具の使用、またはその他の粉じん発散防止措置を講じることが義務付けられています。重要な点として、湿潤化は作業前の一度だけでなく、作業中も継続的に行い湿潤状態を維持する必要があり、作業後も落下した粉じんや残留物に水をかけて飛散を防止する必要があります。

・アスベスト含有建材の切断、穿孔、研磨など(特定の仕上げ塗材の除去を除く)

・アスベストを塗布、注入、貼付した物の解体など(アスベスト使用建築物の解体を含む)

・粉状アスベストの容器への出し入れ

・粉状アスベストの混合

また、特定の建材・作業においては、より厳格な措置が求められるため注意が必要です。

・石綿含有けい酸カルシウム板第1種の切断などでは、作業場所の隔離と常時湿潤化、または除じん機能付き電動工具の使用が必要です。

・石綿含有仕上げ塗材を電動工具で除去する際は、作業場所の隔離と常時湿潤化が義務付けられています。

最新の法改正情報

アスベスト等の切断、穿孔、研磨などの作業において、従来は原則として湿潤化が義務付けられていたものの、それが困難な場合、除じん性能を有する電動工具の使用などの措置を講じることは努力義務とされていました。

しかし、令和6年4月1日施行の石綿障害予防規則の改正により、湿潤化が著しく困難な場合も、除じん性能を有する電動工具の使用や作業場所の隔離、局所排気装置の設置といった粉じんの発散を防止するための措置を講じることが、明確な義務に変更されているため再認識が必要です。

アスベストの湿潤化とは?その目的と効果

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アスベスト対策における「湿潤化」は、繊維の飛散を抑制するための基本的かつ重要な措置であり、法令でもその実施が厳格に求められています。特に解体や除去作業においては、作業者の安全確保と周辺環境への影響を防ぐうえで欠かせない手段です。作業に従事する多くの人がその重要性を理解していると考えられますが、より湿潤化への理解を深めるためにも、その目的と効果を改めて学んでおきましょう。

湿潤化は薬剤を使用するのが一般的

アスベスト含有建材の表面に付着した粉じんだけでなく、内部までしっかりと水分を浸透させるため、湿潤化は単なる水ではなく、界面活性剤を含む薬剤(湿潤剤)を使用するのが一般的です。湿潤剤は水と比べて浸透性が高く、繊維の飛散防止により効果的とされています。

散布の際は、作業対象の建材が乾いた状態にならないよう注意し、「手で触れたときに湿っているのが分かる」「表面から水が滴る程度」が濡らす目安とされています。また、作業中や作業後も必要に応じて再度散布を行い、常に十分な湿潤状態を保つことが大切です。

湿潤化の主な目的

アスベストは、飛散した繊維を長期間にわたって吸い込むことで、健康被害をもたらす可能性が高い物質です。そのため、解体や除去作業時に粉じんが発生しないよう、湿潤化によってアスベスト繊維を水分で包み、空気中に浮遊しにくくすることが重視されています。

ただし、薬剤などを高圧で噴霧すると繊維を飛散させてしまうことがあるため、低圧でやわらかく広がるミスト状の散布が理想的です。

湿潤化と養生を併せた飛散防止策

湿潤化は、あくまでアスベスト繊維の飛散を最小限に抑えるための方法であり、万全を期すのであれば養生と組み合わせて対策を講じることが大切です。

湿潤化により繊維が空気中に舞い上がるのを抑えつつ、養生によって作業区域を物理的に区切ることで、作業者の健康リスクを低減し、周囲の環境への汚染を防ぐことができます。特に密閉養生や負圧除じん装置などを併用することで、アスベストの拡散リスクをさらに下げることが可能です。

アスベスト湿潤化の具体的な方法

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アスベスト含有建材を安全に取り扱うためには、湿潤化の手順を正しく理解し、確実に実施することが不可欠です。その効果を十分に発揮させるためにも、あらためて作業前の準備から散布方法、作業後の管理に至るまで一連の流れを再確認しておきましょう。

湿潤化の事前準備

湿潤化を安全かつ効果的に実施するためには、事前準備が不可欠です。作業計画の策定や適切な保護具の準備、周囲への告知と養生、使用する機材の確認などをしっかり行うことで、作業中の飛散防止や健康リスクの低減が可能となります。

【作業計画の策定】

アスベスト除去作業を行う前には、大気汚染防止法及び労働安全衛生法に基づき、作業計画を事前に策定する必要があります。湿潤化の方法や範囲、使用する薬剤や散布手段なども具体的に記載し、関係者と共有することで、作業中の安全確保と飛散防止措置の徹底を図ります。

【保護具の準備】

作業員の健康を守るため、特定化学物質障害予防規則により、アスベスト作業時には区分に応じた呼吸用保護具(電動ファン付きや全面形など)と使い捨て保護衣の着用が義務付けられています。事前に十分な数と種類を準備し、全作業員が正しく装着できるよう指導も行いましょう。

【周辺への告知と養生】

除去作業は、第三者への影響を防ぐためにも事前告知と養生が必要です。作業場所には標識や立ち入り禁止表示を設け、大気汚染防止法に準じた密閉養生を施します。養生資材の選定と施工の確実性は、湿潤化と並ぶ飛散防止の重要な要素です。

【必要な機材・資材の準備】

湿潤化に必要な機材として、低圧の噴霧器や散水ホース、水バケツ、場合によっては湿潤剤(界面活性剤)などを準備します。石綿障害予防規則では、作業対象を十分に湿らせる措置が求められており、使用機材の選定と整備が作業の安全性と効果を大きく左右します。

湿潤化の実施

湿潤化は、適切な水分量を確保し、均等に散布することで飛散防止の効果が最大限に発揮されます。また、作業の規模や現場の状況に応じて手作業や機械散布を使い分けることで、効率的かつ効果的な湿潤化を実現できる点も重要です。

【適切な水分量の目安】

湿潤化の目安としては、アスベスト含有建材の表面全体がしっかりと湿る程度の水分量を保つことが重要です。過剰な水分は逆効果となるため、適度に湿らせる必要があり、通常、手で触れて湿り気を感じる状態が目安となります

【効果的な散布方法】

湿潤化の際、噴霧器は対象物から30〜50 cm程度の適度な距離を保ち、低圧でやさしく散布します。散布角度は、対象物に対して約45度が効果的とされており、水滴が均一に広がり、アスベスト繊維の飛散を最小限に抑えることができます。

【状況に応じた湿潤化の方法】

湿潤化方法は、作業現場の状況に応じて使い分けます。広範囲の場合は、機械式の噴霧器を使用して効率よく散布し、狭い場所や細かい部分は、手作業で湿らせることが望ましいです。いずれの場合も、均等に湿らせることがポイントとなります。

湿潤化後の注意点

湿潤化の必要性は除去作業中だけにとどまらず、作業終了後も引き続き管理が求められます。アスベスト繊維の飛散を防ぐためには、湿潤化後も乾燥を防ぎ、廃棄物の適切な管理と処理を行うことが重要です。廃棄に至るまで、作業者は責任を持って安全に管理し、周囲への影響を最小限に抑えましょう。

【乾燥を防ぐための措置】

除去したアスベスト含有建材などの乾燥を防ぐためには、湿潤化後に水分が蒸発しないように注意が必要です。特に、湿度が低い冬の日や風の強い日などの乾燥した環境では、追加の水分補給が求められることがあります。

また、湿潤化後の建材に対しては、密閉養生やビニールシートを使用するなど、乾燥を防ぐための措置を講じることが推奨されます。

【適切な廃棄方法】

湿潤化後のアスベスト含有廃棄物は、廃棄物処理法や石綿障害予防規則に基づくルールに則った適切な取り扱いが必要となります。廃棄物が乾燥して飛散しないように湿った状態で廃棄するのと併せて、専用の密閉された袋(アスベスト専用廃棄袋)で収集し、指定された施設にて処理を行うようにしましょう。

湿潤化にかかる費用と業者選びのポイント

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アスベスト除去における湿潤化作業の費用は、現場の状況や作業規模、使用する機材などによって大きく変動します。そのため、複数の業者から見積もりを取り、価格だけでなく信頼性や実績、法令遵守の姿勢も含めて、慎重に業者を選ぶことが重要です。

また、自治体によってはアスベスト除去に対する補助制度を設けている場合があり、費用負担を軽減する手段として活用できます。国土交通省が2025年1月に公表した「民間建築物における吹付けアスベスト等飛散防止対策に関する調査(令和5年度春季)の結果」によれば、令和6年4月1日現在で、47都道府県のうち16府県が補助制度を創設、11府県が融資などの支援策を設けており、政令指定都市においては20都市のうち19都市が補助制度を設けているので、事前に確認しておきましょう。

湿潤化作業の費用相場

湿潤剤や散布機器の使用料、作業員の人件費、養生資材、保護具などを含む湿潤化作業にかかる費用は、作業規模や現場条件、使用する薬剤や機材によって異なるうえ、そもそもアスベスト除去作業の一部として実施されるため、単体での費用算出が難しいのが実情です。

おおよその目安としては、国土交通省が除去費用の相場として、アスベスト処理面積が300㎡以下の場合2 ~ 8.5万円/ ㎡、300 ㎡~1,000 ㎡の場合1.5~ 4.5万円/ ㎡、1,000 ㎡以上の場合1.万円 ~ 3万円/ ㎡と掲載しています。ただし、2007年の施工実績データより算出された費用なので、あくまで参考程度にしてください。

費用を左右する要因

湿潤化作業にかかる費用は、対象となる建物の規模や構造、アスベストの含有状況、作業環境(高所・狭所・屋内外など)、必要な養生範囲や作業時間の長さなど、様々な要因によって変動します。また、使用する湿潤剤の種類や散布方法(手作業か機械使用か)、作業員の人数や保護具の種類によっても費用が上下することも把握しておきましょう。

除去後の廃棄物処理や運搬費用も考慮されるため、総費用は現場ごとに異なります。そのため、事前に現地調査を行い、詳細な見積もりを取得することが大切です。

信頼できる業者の選び方

湿潤化を含むアスベスト除去作業は高度な専門知識と法令遵守が求められるため、信頼できる業者を選ぶことが非常に重要です。選定の際は、建設業の許可や特定建築物石綿含有建材調査者などの資格保有、過去の実績、厚生労働省などのガイドラインへの対応状況を確認しましょう。

また、見積書の内容が明確で説明が丁寧かどうか、アフター対応の有無などもチェックポイントです。第三者機関の認証や自治体の登録業者であるかも信頼性を測る参考になります。

湿潤化を正しく理解し、安全な環境を実現

アスベストの飛散を最小限に抑える「湿潤化」は、安全な作業環境を確保するうえで欠かせない重要な工程です。正しい手順や基準を理解し、適切な機材や薬剤を使用することで、作業者の健康被害リスクや周囲への影響を大きく低減できます。

また、関連法令やガイドラインに則り、信頼できる業者の協力を得ることも安全確保には不可欠です。湿潤化の目的と効果をしっかりと把握し、適切に実施することで安心できる作業環境づくりを目指してください。

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監修者:三井伸悟

1980年静岡県浜松市生まれ。2003年に東海大学海洋学部水産資源開発学科を卒業後、2004年に日本総研株式会社へ入社し、分析・環境分野でのキャリアをスタート。2011年には同社の原子力災害対策本部長に就任。その後、世界最大の分析会社グループEurofins傘下の日本法人にて要職を歴任。2017年にユーロフィン日本総研株式会社、2018年にはEurofins Food & Product Testingの代表取締役社長に就任。さらに、埼玉環境サービス株式会社取締役、ユーロフィン日本環境株式会社の東日本環境事業及び環境ラボ事業の部長も経験。2021年にアルフレッド株式会社を創業し、代表を務める。特定建築物石綿含有建材調査者、環境計量士(濃度)、作業環境測定士(第一種)、公害防止管理者(水質一種)の資格を保有し、20年以上にわたる環境・分析分野での豊富な実務経験と専門知識を活かし、持続可能な環境構築に貢献。

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