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2024.07.22
アスベスト分析が不要になる場合の見極め方と注意点を解説!

アスベストは、その優れた断熱性や耐火性から、かつて多くの建材に使用されていました。しかし、アスベストの粉じんを吸入することで重大な健康被害を引き起こすことが判明し、現在ではその使用が厳しく規制されています。本記事では、アスベスト事前調査の重要性や法改正の背景を理解しつつ、具体的にアスベスト事前調査が不要な場合について詳しく解説します。

アスベスト事前調査とは

アスベスト事前調査の重要性

アスベストに関する法律や規制は年々厳しくなっており、特に解体や改修工事を行う際には事前調査が義務付けられています。これは、工事中にアスベストが飛散しないようにするためであり、作業者や周辺住民の健康を守るための重要な措置とされています。また、最新の法改正により、アスベスト事前調査の実施と報告が義務化され、適切な対応が求められています。

アスベスト事前調査の目的

アスベスト事前調査の主な目的は、建築物に使用されている建材にアスベストが含まれているかを確認し、適切な除去・処理方法を決定することです。これにより、工事中のアスベスト飛散を防ぎ、健康被害を未然に防ぐことができます。

アスベストの健康リスクと法律

アスベストの長期吸入は、肺がんや中皮腫、アスベスト肺などの健康障害を引き起こす確率が上がります。このため、多くの国ではアスベストの使用が禁止されており、日本でも2006年以降、アスベストを含む製品の製造や使用が全面的に禁止されています。

アスベスト事前調査とは

アスベスト事前調査は、以下の4つの手順に分かれます。

書面調査

建築物の設計図や施工記録を基に、アスベストが使用されている可能性のある箇所を確認します。設計図や施工記録には、使用された建材や施工方法に関する情報が詳細に記載されているため、リスクの高い箇所を特定するのに役立ちます。この段階で得られた情報をもとに、現地調査の計画を立てます。

目視調査

現地で建築物の外観や内部を観察し、アスベスト含有の疑いがある建材を特定します。書面調査で特定された箇所を中心に、建物全体を詳細にチェックし、アスベストが使用されている可能性のある部分を確認します。

分析調査

疑わしい建材のサンプルを採取し、専門の分析機関でアスベスト含有の有無を確認します。サンプル採取は、建材の一部を慎重に取り出し、チャック付き袋などを二重にして送付します。分析は、顕微鏡やX線回折装置などの高度な機器を使って行われ、正確な結果が得られます。分析結果に基づき、リスク評価を行います。

報告書の作成

書面調査、目視調査、分析結果を基に最終的な報告書を作成します。この報告書には、調査結果の他、調査の方法、リスク評価、必要な対策などを記載する場合があります。報告書は、工事を安全に進めるための資料として活用され、工事関係者や行政機関への報告にも使用されます。

アスベスト分析が不要な場合とは

アスベスト事前調査が不要となる具体的なケースについて解説します。

素材にアスベスト含有がない事が明らかな場合

木材、金属、石、ガラスなど、アスベストを含まないことが明白な素材で構成された建材の場合、アスベスト分析は不要です。これらの素材は、アスベストを含むリスクがなく、調査の手間を省くことで効率的な工事が可能となります。しかし、周囲の素材がアスベストを含む可能性がある場合は注意が必要です。

極めて軽微な改変しか及ぼさない場合

釘抜きや釘打ちなど、材料に極めて軽微な改変しか与えない作業では、アスベストが飛散するリスクがないため、アスベスト分析は不要です。具体的には、釘抜きだけで完了する解体作業や釘打ちで完了する改修工事が該当します。ただし、電動工具を使用して材料に穴をあける場合は、アスベストの飛散リスクがあるため、この限りではありません。軽微な作業であっても、作業内容によっては事前調査が必要となることを覚えておきましょう。

既存の塗装の上から新たに塗装する場合

既存の塗装の上に新たに塗装を施すだけの作業では、アスベスト飛散のリスクがないため、アスベスト分析は不要です。ただし、重ね塗りの場合でも、既存の塗装を剥がす工程がある場合はアスベスト飛散のリスクがあるため、アスベスト分析が必要です。このような場合は、作業の前にしっかりと確認を行い、安全な方法で作業を進めることが求められます。

商標名等でアスベスト非含有が確認されている場合

国土交通省のデータベース等によりアスベスト不含有が確認されている建材では、アスベスト分析は不要です。これらのデータベース確認済み建材は、アスベスト使用の有無が確認されているためです。データベース等で商品名の確認を得ることで、無駄な調査を省き、効率的に工事を進めることができます。

2006年(平成18年)9月1日以降の建築物の場合

2006年(平成18年)9月1日以降に着工・建設された建築物については、アスベストを含む製品の使用が禁止されているため、アスベスト分析は不要です。しかし、この場合も、一定以上の規模の工事ではアスベスト事前調査結果の報告が必要となります。大規模な工事においては、規制を遵守し、適切な報告を行うことが求められています。

アスベスト分析が不要な場合の注意点

例外的な注意事項

アスベストを含まない素材であっても、除去作業中に周囲の素材を損傷する可能性がある場合、その周囲の素材にアスベストが含まれている可能性があります。例えば、木材や金属の除去作業中に、隣接する古い石膏ボードや断熱材が損傷する場合があります。これらの素材にアスベストが含まれていると、作業中にアスベストが飛散するリスクが生じるため、周囲の状況を十分に確認し、必要に応じて事前調査の範囲に含める事が必要になります。

調査不要でも必要な報告義務

アスベスト分析が不要な場合でも、一定規模以上の工事では調査結果の報告が必要です。具体的には、解体部分の延べ床面積が80㎡以上、または請負金額が税込み100万円以上の改修工事が該当します。報告義務は、工事でのアスベスト飛散リスクを最小限に抑えるために重要です。報告には、事前調査を省略した理由や、その他の安全対策の詳細を記載する必要があります。

まとめ

アスベスト分析は、解体や改修工事の際にアスベストが飛散するリスクを防ぎ、解体作業等の作業者の健康を守るために重要です。法改正により、アスベスト事前調査は厳格化されており、適切な調査と報告が求められています。一方で、アスベスト分析が不要となる条件を正しく理解し、事前に確認することで無駄なコストや時間を削減できます。また、一定規模以上の工事では調査結果の報告義務がありますので、最新の法規制を確認し、適切な対応を行うことが求められます。この記事を参考に、アスベストに関する安全管理に努めてください。