アスベストのレベル3建材の工事に届出は不要?法改正による変更点やみなし判定のルールまで

石綿(アスベスト)は耐火性や防火性、耐熱性などを備えている一方で、長期間吸引すると人体に悪影響を及ぼす危険性があり、2006年に日本では使用が禁止された建材です。今なお、アスベストを使用した建造物が現在も残っており、日本ではアスベストを使用した建造物の解体・リフォームの工事にあたっては一定のルールが定められています。
2020年以降では、アスベスト関連の規制が厳格化し、建材のレベルに応じた届出が必要であったり、事前調査の結果報告が必要になったりと、対応すべきルールも追加されているため、アスベスト建材の工事にあたってはさまざまな点に注意しなければなりません。
本記事では、アスベストのレベル3建材工事の届出が不要なのかについて、法改正による変更点やみなし判定のルールも交えて解説します。
【本記事の要約】
・レベル3建材工事には「事前調査結果報告書」と「建設リサイクル法の事前届」が必要
・2022年から事前調査結果報告の義務化やみなし判定の実施がされている
・アスベスト建材のレベルごとに必要な届出が異なる
【結論】レベル3建材の工事には、「事前調査結果報告書」と「建設リサイクル法の事前届」が必要

2020年にはアスベストのレベル3建材も規制対象となり、また2022年からは事前調査結果の報告制度が始まったことから、解体対象の床面積が80㎡以上、または工事請負金額100万円以上の場合には工事前に報告書の提出が必須です。さらに、延べ床面積80㎡以上を解体する際は建設リサイクル法の事前届が求められます。
これらのことから、アスベストのレベル3建材の解体やリフォームの工事には、「事前調査結果報告書」と「建設リサイクル法の事前届」が必要です。事前調査や書類提出を怠ると罰則を受けるリスクがあるため、工事計画時に必ず確認してください。
ここでは、レベル3建材の工事に必要な「事前調査結果報告書」と「建設リサイクル法の事前届」の詳細について解説します。
①事前調査結果報告書
一定規模を超える工事でアスベストを扱う場合、「事前調査結果報告書」の提出が必要です。具体的には、以下のような要件を満たした場合の工事で、報告書の提出が求められます。
【調査・報告対象となる工事】
- 建築物の解体工事(解体対象の床面積の合計80 ㎡以上)
- 建築物の改修工事(請負代金の合計額100万円以上)
- 工作物の解体・改修工事(請負代金の合計額100万円以上)
なお、石綿障害予防規則に基づいて、労働基準監督署にも報告する必要があります。その場合の要件は、上記に加え、鋼製の船舶の解体または改修工事(総トン数20トン以上)と定められています。
ただし、一般住宅の部分リフォームといった小規模な工事の場合には、報告が不要なケースもあるため事前の確認が必要です。
②建設リサイクル法の事前届
建設リサイクル法では、延べ床面積80㎡以上の建築物を解体する際に、着工の7日前までに自治体へ事前届を提出しなければなりません。アスベストのレベル3建材のみを扱う工事であっても、解体対象となる面積が80㎡以上なら届出が必要です。
一方、大規模なリフォーム工事でも構造部分を除去する場合など、事前届の対象となるケースがあるため、管轄部局の窓口や国土交通省の資料で条件を確認することが大切です。もし、事前届の提出を怠ると行政指導や罰則の対象となる恐れがあるため、早めに準備を進めることが求められます。
2020年以降の法改正による変更点とは?レベル3建材の規制も

近年、石綿障害予防規則や大気汚染防止法などのルールが改正され、アスベストを含む建材への規制が一段と強化されました。レベル3建材では飛散リスクが低いとされていましたが、法改正後は解体や切断時の粉じん対策が求められるようになり、届出や報告の手続き範囲が拡大しています。
このようなアスベストを含む建材への規制は年々強化されていることから、それぞれの改正内容を理解しておかないと、行政処分や罰則の対象になりかねません。
ここでは、2020年以降の法改正による変更点について、レベル3建材の規制やみなし判定などを交えて解説します。
【前提】法改正はアスベストの建材工事全般に影響する
近年、アスベストに関するルールの改正は、健康被害を減らす目的で建造物全般に対する管理や対応を強化しています。レベル1や2の建材はもちろん、レベル3の建材でもアスベスト含有の可能性を見落とさないよう事前調査が必須となりました。
解体方法や作業計画の立案時も、危険を最小限に抑える措置を講じる必要があります。また、労働基準監督署への届出や飛散防止措置の徹底を含む総合的な安全管理も不可欠です。
2020年にはレベル3建材も規制対象になった!
石綿含有成形板や仕上塗材などのアスベストのレベル3建材は、従来の制度下で規制の対象外と考えられる場面が多くありました。しかし、2020年の法改正以降は、レベル1・2の建材と同様に規制対象となりました。
これにより、事前調査や適切な作業基準の遵守が義務づけられています。また、飛散リスクが小さいとされる建材でも、破砕や切断により粉じんが発生すると健康被害を招く可能性があるため、自治体によっては追加的な届出を要する場合もあります。
2022年から「事前調査の結果報告が義務化」と「みなし判定」の導入
2022年4月に始まった「事前調査結果報告制度」は、一定規模を超える工事でアスベストの有無を報告する仕組みです。この制度では、レベル3建材であっても、該当する工事規模の場合は書類提出が必要となります。
ただ、分析調査を省略して、建造物にアスベストが含まれていると仮定する「みなし判定」が可能です。みなし判定が実施された場合には、厳しい調査結果と同様の措置を講じる必要があるため、場合によってはコストや手間がかかる恐れが懸念されます。
そのため、工事規模や現場条件を踏まえた上で、分析を実施するか、あるいはみなし判定を採用するかの慎重な判断が求められます。不要な選択によって無駄なコストや手間がかからないようにするためにも、専門家へ依頼することが無難と言えるでしょう。
【レベル別】アスベストの工事に必要・不要な届出を一覧で紹介

アスベスト建材は飛散性に応じて3つのレベルに分類され、必要な届出や作業基準が異なります。
具体的には、レベル1・2の建材には特定粉じん排出等作業実施届出書を提出しなければならない場面が多く、一方でレベル3建材は基本的に不要です。ただ、レベル3建材でも「事前調査結果報告書」や「建設リサイクル法の事前届」は規模要件に当てはまれば必要になります。
以下の表では、代表的な届出の有無をレベル別にまとめました。表に加えて、各法令や自治体ごとの条例を確認し、漏れや重複を防ぐようにしてください。
レベル1建材 | レベル2建材 | レベル3建材 | |
事前調査結果報告 | 規模により必要(解体対象の床面積80㎡以上など) | ||
建設リサイクル法の事前届 | 規模により必要 (延べ床面積80㎡以上) | ||
特定粉じん排出等作業実施届出 | 必要 | 必要 | 不要 |
建築物解体等作業届 | 必要 | 条件によって必要 | 不要 |
工事計画届 | 必要 | 条件によって必要 | 不要 |
レベル3建材の工事に必要な書類や対応を正しく理解し、ルールを遵守した対応を

本記事では、アスベストのレベル3建材工事の届出が不要なのかについて、法改正による変更点やみなし判定のルールも交えて解説しました。
近年のアスベスト関連の法改正により、解体やリフォーム工事では書類提出や安全措置が大幅に増えています。レベル3建材は飛散リスクが比較的低いとされますが、2022年からは一定規模以上の工事で事前調査結果の報告が義務付けられており、みなし判定を適用すればレベル1相当の厳しい措置を取る可能性があります。
このように、規制強化によって専門知識と正確な書類作成が求められるようになり、工事に携わる従事者の安全や健康を守るためには適切な管理が欠かせません。
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1980年静岡県浜松市生まれ。2003年に東海大学海洋学部水産資源開発学科を卒業後、2004年に日本総研株式会社へ入社し、分析・環境分野でのキャリアをスタート。2011年には同社の原子力災害対策本部長に就任。その後、世界最大の分析会社グループEurofins傘下の日本法人にて要職を歴任。2017年にユーロフィン日本総研株式会社、2018年にはEurofins Food & Product Testingの代表取締役社長に就任。さらに、埼玉環境サービス株式会社取締役、ユーロフィン日本環境株式会社の東日本環境事業及び環境ラボ事業の部長も経験。2021年にアルフレッド株式会社を創業し、代表を務める。特定建築物石綿含有建材調査者、環境計量士(濃度)、作業環境測定士(第一種)、公害防止管理者(水質一種)の資格を保有し、20年以上にわたる環境・分析分野での豊富な実務経験と専門知識を活かし、持続可能な環境構築に貢献。
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