配管エルボで見落とされがちなアスベスト!危険性と除去対策をわかりやすく解説

ラッキングが破損したアスベスト含有可能性のある配管

配管エルボは、直管とは施工方法も材料構成も異なるため、アスベスト(石綿)が部分的に残存しやすい箇所です。特に1980年代後半までは、エルボ部にだけアスベスト含有の不定形保温材や塗り材が使用されていたケースが多く、外観からの判断が極めて困難となっています。

本記事では、配管エルボ特有のアスベスト使用の実態、見分け方、除去時の注意点を、施工管理・設備改修に携わる事業者向けに体系的に解説します。

【本記事の要約】
・直管とは異なる材料が使われていた事例が多く、部分的にアスベストが残存するリスクがある
・外観や施工年代のみでは判断できず、専門資格者による事前調査と分析が不可欠
・アスベストが確認された場合は、切断回避や湿潤化などレベル2相当の工事対策を講じる

配管エルボ部に使用されたアスベスト建材の特徴

建物のガス管にアスベストのトランサイト管が使用されている

配管エルボ部分は、配管そのものよりも“保温材の種類”に注意すべき箇所です。直管と異なり、曲部は熱負荷が集中し、密閉性を確保するために複数の保温材や塗り材が成層的に施工されることがあり、その中にアスベストが含まれている例が多く確認されています。まずは、エルボ部で使用されやすかったアスベスト含有建材の種類を正しく理解することが重要です。

配管のアスベスト含有保温材に注意

配管保温材の中でも、特にエルボ部で問題となりやすいのが、耐熱性に優れたアスベストの一種であるアモサイト(茶石綿)です。

アモサイトは加熱環境に強く、蒸気配管や高温設備の曲部で好んで使用されていました。しかし、繊維が長く硬いため飛散性が高く、健康影響も強いことから、現在ではリスクの高い保温材として扱われています。

過去の施工では、直管とエルボで保温材を使い分けることが一般的でした。そのため、直管にアスベストが使われていなくても、エルボ部だけ旧来のアモサイト系保温材が残存しているケースもあるので、特に注意が必要です。

アスベストレベルとは

アスベストの管理区分は、飛散性に応じてレベル1〜3に分類され、今回の配管エルボに多く見られる保温材は、飛散性が高く厳格な管理が求められる「レベル2」に該当します。

レベル2建材は、軽度の衝撃や切断でも繊維が飛散しやすいため、作業区域の隔離、負圧管理、湿潤化、HEPAフィルター付き集じん装置の使用など、厳格な現場管理が必須です。一方で、表面塗材はレベル3として扱われることが多いものの、劣化や破損の状態によってはレベル2相当の管理が必要になるため、材質の正確な判定が極めて重要です。

直管よりもエルボに注意すべき理由

配管の曲部であるエルボは、直管に比べて高温になりやすく、また形状的にも隙間が生じやすいため、施工時に直管とは別の保温材が巻かれることが多くありました。

特に高温配管では、耐熱性や施工性を優先して不定形材を充填し、その上から塗り材で仕上げる方法が取られており、結果としてエルボ部分だけアスベスト含有建材が残存するケースが多くなっています。このような施工履歴の違いにより、外観だけでは判断できない“部分リスク”が生じるため、直管よりも慎重な調査が必須です。

含有保温材の製造期間と例外

リスク評価において製造時期の確認は重要ですが、エルボに限っては一般的な目安が通用しない場合があります。配管保温の最終仕上げに使われる不定形保温材(練り保温材)には、少なくとも1988年頃までアスベストが含有されていました。

直管等の成形保温材が比較的早期にノンアスベスト品に切り替わっていたとしても、エルボの継ぎ目処理には依然としてアスベスト材が使われ続けていたという「タイムラグ」に注意が必要です。この時期のズレが、調査における最大の盲点といえます。

保温材以外のアスベスト含有建材

エルボ部分における注意の対象は、内部の保温材だけではありません。仕上げとして表面に塗られた「ペイント」や、保温材を固定するための「接着剤」、隙間を埋める「パテ」といった副資材にもアスベストが含まれている可能性があります。

特に改修工事等で保温材のみ交換されていても、下地調整材やフランジパッキンなどに古い含有建材が残存しているケースも少なくありません。エルボ周辺は多層的な構造であることを理解し、保温材単体だけでなく、複合的な視点でアスベストの有無を疑う姿勢が求められます。

配管エルボにおけるアスベスト含有の見分け方

ミネラルウールとフォイルコーティングで、プラスチック製パイプの継ぎ目を保護している

配管エルボは直管部分と材料構成が異なるため、外観だけでアスベストの有無を判断することは困難です。不定形材や塗り材が現場で施工されることが多く、特に1988年頃まではアスベストが混入した仕上げ材が使用されていました。

そのため、製造年代や材料名だけでは判断できず、施工年度・設計図書・現地目視・専門調査といった複数の観点から総合的に確認することが重要です。

建築物の施工年度から想定

施工年度による判断は一次スクリーニングとして有効ですが、直管とエルボで基準が異なる点に注意が必要です。直管の成形保温材は1980年頃に無石綿化が進みましたが、エルボ用の塗り材(プラスターやモルタル等)は1988年頃まで含有製品が流通していました。

そのため、1980年代に建設された建物では、「直管はアスベスト非含有だが、エルボは含有」という混在状態になる可能性が高まります。

建物の設計図書などから特定

現地調査の前に、まずは書面での特定を試みます。新築時の「設計図書(特記仕様書)」はもちろん、重要なのが「修繕履歴」や「竣工図」です。建物自体が古くても、空調更新やボイラー交換の際に配管が取り替えられている可能性がある一方、熱源機器のみ更新で配管は既存のままというケースもあります。

「いつ、どの範囲の配管が触られたか」を、工事写真台帳なども併用して、時系列で確認することが重要です。

現地目視調査で確認

現地目視では、直管とエルボの「質感の違い」に着目します。工業製品である均一な直管に対し、エルボは手作業の塗り仕上げ特有の不均一さがあります。

特に注目すべきは、経年劣化で外装が破れ、内部が見えている箇所です。中身が茶色や灰色の綿状であったり、断面に繊維質が見える場合は含有の疑いが濃厚です。ただし、不用意に触れると飛散する恐れがあるため、非接触で確認することを推奨します。

専門的なアスベスト調査

外観では正確な判断が困難なため、疑わしい場合は、建築物石綿含有建材調査者(特に設備に精通した者)による調査が必要です。表面塗材・不定形材・下層保温材など、層ごとに材質が異なる場合が多いため、全層を採取して分析を行うことが求められます。

JIS A 1481準拠の分析機関に依頼し、定性分析を確実に実施することが重要です。

配管エルボの安全な除去方法

アスベスト製トランサイト管を建物のガス配管に使用している事例

エルボ部に使用されたアスベスト含有保温材や塗り材は、脆く飛散しやすいため、除去作業ではレベル2に準じた厳格な飛散防止対策が必要です。特に切断や破砕を避けることが基本であり、湿潤化や局所排気、隔離養生、作業動線の管理などを徹底することで、周囲への飛散を最小限に抑えることができます。

飛散リスクを最小化する「切断回避」の基本原則

エルボ除去における最大の鉄則は、「アスベスト含有部分に直接刃を入れない」ことです。経年劣化で脆くなった保温材は、カッターや電動工具による切断や破砕の衝撃で、容易に粉じん化してしまいます。

そのため、推奨されるのは、エルボ部を直接切断せず、接続されている直管ごと一緒に取り外す工法です。含有部分を物理的に破壊せず、封じ込めた状態で撤去することが、最も確実な飛散防止策となります。

直管部の切断によるエルボごとの取り外し

具体的には、エルボの両端に繋がる直管部分を、エルボから30cm〜50cm程度離れた位置で切断します。これにより、危険なエルボ部分を「筒状のまま」そっくり取り外すことが可能となり、現場での発じんリスクを劇的に低減できます。

原形のまま取り外す際の飛散対策

切り離したエルボ付き配管は、運搬中の振動で内部の保温材が崩れ落ちないよう、直ちに厚手のプラスチックシート(0.15mm以上推奨)で二重に梱包し、密閉します。切断面から保温材が露出している場合は、飛散防止剤を噴霧した上でテープ処理を行うなど、二重三重の封じ込め処理が必要です。

レベル2に準じた厳格な作業手順

切断回避を前提とする場合でも、万が一の破損に備え、現場はレベル2に準じた管理体制を敷く必要があります。油断や手抜きは、作業員の被ばくや居住エリアへの汚染拡大に直結します。

ここでは、作業開始から廃棄まで、現場監督者が徹底すべき一連の安全管理フローを確認します。

周知徹底(作業開始前)

作業場所の入り口等の見やすい場所に、アスベスト除去作業中である旨の掲示板を設置し、関係者以外の立ち入りを禁止します。作業員全員に対し、取り扱う建材の危険性や緊急時の対応手順について、事前の特別教育や危険予知活動を通じて周知徹底を図ることが不可欠です。

作業現場の隔離と養生

作業エリアはプラスチックシートで隙間なく密閉(隔離)し、必要に応じて負圧除塵装置を設置して作業場内を負圧に保ち、万が一アスベストが飛散しても外部へ漏れ出さない環境を構築します。セキュリティゾーン(前室)の設置も、汚染を持ち出さないために重要な工程です。

湿潤化の徹底

作業中は、常時散水や飛散抑制剤の散布を行い、対象物を湿った状態(湿潤化)に保ちます。乾燥した状態での作業は厳禁です。湿潤化は、繊維の飛散を物理的に抑え込む最も基本的かつ効果的な手段であり、除去作業の最初から最後まで継続する必要があります。

防護装備の装着

作業員は、電動ファン付き呼吸用保護具や、隙間のない防護服(使い捨てタイプ)、手袋、足カバーを正しく着用します。防護具は着用するだけでなく、フィットテスト等で顔との密着性を確認し、隙間からの粉じん吸入を完全に防ぐことが命を守る鍵です。

除去物の即時梱包と廃棄

除去した廃材は、乾燥する前にその場で袋詰めし、空気を抜いて密閉します。「アスベスト含有」の表示を行った上で、特別管理産業廃棄物として保管・運搬します。現場内に放置せず、速やかに所定の保管場所へ移動させることが、二次汚染を防ぐために重要です。

届出と自治体確認のポイント

アスベスト含有保温材の除去工事を行う場合、工事開始の14日前までに労働基準監督署へ「工事計画届」、自治体へ「特定粉じん排出等作業実施届出書」等の提出が必要です。

使用工法や除去量によって必要な届出が変わるほか、自治体ごとに独自条例を設けている場合もあります。着工直前になって慌てないよう、管轄窓口への事前相談と確認を徹底しましょう。

配管エルボのアスベスト対策は「部分リスクの見極め」が鍵

配管エルボは、直管とは異なる材料が使われることが多く、施工年代だけでは判断できない“部分的なアスベストリスク”が潜む箇所です。安全に改修・解体を進めるためには、施工履歴・設計図書・現地調査・分析を組み合わせて総合的に判断し、レベル2相当の厳格な作業管理を実施することが重要となってきます。

専門的な知見を持つ調査者や施工業者と連携し、法令に沿った確実な対策を行うことが重要です。

アルフレッドでは、調査費用を極力抑えながらも、スピーディで高精度な調査を実施。安定して土曜日を含む3営業日以内の短納期で分析結果をお出しいたします。また、分析者や機器情報など詳細が記載される行政向け報告書の作成など、面倒な作業もお任せください!

初回発注の方は最大10検体までの無料キャンペーンを実施中です。まずは以下のお問い合わせから、ご相談ください。

監修者:三井伸悟

1980年静岡県浜松市生まれ。2003年に東海大学海洋学部水産資源開発学科を卒業後、2004年に日本総研株式会社へ入社し、分析・環境分野でのキャリアをスタート。2011年には同社の原子力災害対策本部長に就任。その後、世界最大の分析会社グループEurofins傘下の日本法人にて要職を歴任。2017年にユーロフィン日本総研株式会社、2018年にはEurofins Food & Product Testingの代表取締役社長に就任。さらに、埼玉環境サービス株式会社取締役、ユーロフィン日本環境株式会社の東日本環境事業及び環境ラボ事業の部長も経験。2021年にアルフレッド株式会社を創業し、代表を務める。特定建築物石綿含有建材調査者、環境計量士(濃度)、作業環境測定士(第一種)、公害防止管理者(水質一種)の資格を保有し、20年以上にわたる環境・分析分野での豊富な実務経験と専門知識を活かし、持続可能な環境構築に貢献。

 お役に立ちましたら、ぜひ関係者様にシェアをお願いします /


新着記事

コラム
ラッキングが破損した配管
配管エルボで見落とされがちなアスベスト!危険性と除去対策をわかりやすく解説New!!
コラム
青空に浮かぶ煙のぼる煙突
煙突に潜むアスベストリスク|解体・改修時に知っておくべき実務対応と処理対策
コラム
アスベストに関する医学・健康の議論を映し出す、オフィスコンピューターの画面
アスベスト対策工事に必要な届出とは?アスベストレベル別に解説