岩綿吸音板は安全?アスベストの可能性と正しい見分け方を専門解説

化粧材の天井

建築物の解体・改修工事において、天井材として頻繁に遭遇する「岩綿吸音板」。その名称からアスベスト(石綿)と混同されやすく、また実際に過去の製品にはアスベストが含有されているケースがあるため、現場の判断には細心の注意が必要です。

特に2022年からの事前調査義務化に伴い、事業者には正確な知識と適切なリスク管理が求められています。本記事では、岩綿吸音板の基礎知識から、調査で見落としやすい「捨貼り工法」の罠、そして法令に基づいた適切な処理方法まで、現場の実務に直結する情報を網羅的に解説します。

【本記事の要約】
・「岩綿」と「石綿」は別物だが、1980年代後半以前の製品にはアスベスト混入の可能性がある。
・「捨貼り工法」の場合、表面の吸音板だけでなく下地の石膏ボードも個別に調査しなければならない。
・岩綿吸音板はレベル3建材に該当し、除去時には湿潤化や有資格者による管理が義務付けられている。

アスベストとは違う?岩綿吸音板の基礎知識

断熱用工業用ロックウールボード

岩綿吸音板は「岩綿(ロックウール)」という名称からアスベストと混同されやすい建材ですが、両者は本来まったく異なる素材です。そのため、「岩綿吸音板は安全」と一括りに判断されがちですが、過去の製造背景や施工年代によっては注意が必要なケースも存在します。

ここでは、岩綿吸音板の基本的な成り立ちや特性を整理したうえで、なぜアスベストとの混同や誤解が生じやすいのかを解説します。解体・改修工事における初期判断を誤らないための前提知識として、まず正確に理解しておくことが重要です。

岩綿吸音板(ロックウール化粧吸音板)とは?

岩綿吸音板は、玄武岩や安山岩などを高温で溶融し、繊維状にしたロックウールを板状に成型して、表面に模様や仕上げを施した内装・外装用建材です。軽量で施工性が高く、不燃性、断熱性、吸音性に優れていることから、学校、病院、オフィス、集合住宅など多くの建築物で採用されてきました。

主な使用部位は内装天井材や軒天井材で、視認性が高い反面、「化粧石膏ボード」と外観が似ているため、現地調査時に誤認されるケースも少なくありません。まずは岩綿吸音板がどのような建材かを正しく把握することが、適切なアスベスト調査の第一歩となります。

岩綿(ロックウール)と石綿(アスベスト)の違い

「岩綿」と「石綿」は名称が似ているため混同されやすいものの、原料・性質ともに別物です。岩綿は火成岩を原料とする人工鉱物繊維であり、通常の使用状態においてはアスベストのような健康被害リスクは報告されていません。一方、アスベストは天然鉱物繊維で、健康被害のリスクが高いことから現在は使用が禁止されています。

ただし注意すべき点として、岩綿吸音板の中には、過去に製造された一部製品で、性能向上などを目的にアスベストが混入されていた事例があることが確認されています。「岩綿=安全」と断定するのではなく、製造年代や製品情報を踏まえた判断が不可欠です。

アスベスト含有の可能性がある製造期間と製品例

岩綿吸音板におけるアスベスト含有の有無は、製造メーカーと製品名、そして「いつ製造されたか」によって決まります。ロックウール工業会の資料によると、主要な製造メーカー各社は1980年代後半までにアスベストの使用を終了しています。

企業名主な商品名石綿含有製造期間石綿含有量(目安)備考
大建工業ダイロートン1964年~1987年1%~4%1988年以降は非含有
パナソニック(旧松下電工)ロッキー1973年~1985年約3%1986年以降は非含有
日東紡績ソーラトン1971年~1981年4%一部1987年まで含有製品あり

調査の失敗を防ぐ捨貼り工法(二重貼り)の注意点

内装工事の解体現場

岩綿吸音板のアスベスト調査で特に注意すべきなのが、捨貼り工法と呼ばれる二重構造の施工方法です。この工法では、表面材である岩綿吸音板の下に別の建材が施工されており、表層だけを調査すると重大な見落としにつながる恐れがあります。

捨貼り工法の仕組みと、なぜ二重調査が必要なのかを整理し、誤判定を防ぐための基本的な考え方を理解しておきましょう。

捨貼り工法とは?なぜ二重調査が必要なのか 

捨貼り工法とは、下地として石膏ボードなどを先に施工し、その上から岩綿吸音板を張る施工方法です。この場合、表面の岩綿吸音板と下地材は、必ずしも同じ年代に施工されたとは限りません。

下地は1970年代、表面材は1990年代以降に更新されているケースもあり、表面材のみを調査して「非含有」と判断すると、下地に含まれるアスベストを見落とす危険があります。施工方法を理解せずに調査を行うことは、調査精度を大きく下げる要因となることを留意してください。

下地の石膏ボードにもアスベストが含有する可能性 

既存建物の解体現場において、石膏ボードそのものにアスベストが含まれているケースは決して珍しくありません。かつての石膏ボードには、強度補強や耐火性能向上のためにアスベストが使用されている製品が存在しました。

特に岩綿吸音板の下地として使われる石膏ボードは、天井裏に隠れているため劣化に気づきにくく、安易にバール等で破壊すると大量の粉じんが発生します。表面の岩綿吸音板が比較的新しく見える場合でも、「下地は建築当時のまま」という可能性を常に疑うようにしましょう。

正しい検体採取:両方の建材を採取する 

事前調査の精度を高めるためには、表面の岩綿吸音板を剥がし、必ず「下地まで含めた断面」を確認した上で、両方の建材を別個の検体として採取し、それぞれ個別に分析を行う必要があります。採取時には、岩綿吸音板だけでなく、その奥にある石膏ボード、さらには必要に応じて接着剤や充填材も対象に含めるべきです。

調査会社に依頼する際も、「表面の吸音板のみ」を指示するのではなく、「下地層の有無を確認し、層ごとに分析すること」を明確に求めることが重要になります。

岩綿吸音板のアスベストレベルと適切な対応

ビル改修工事において、防護具を着用し有害物質を取り扱うアスベスト除去専門技術者

岩綿吸音板にアスベストが含有していた場合、その取り扱いは法令に基づいて厳密に管理されます。岩綿吸音板は原則として非飛散性のレベル3建材に分類されますが、解体・改修時の作業方法によっては飛散リスクが高まる点に注意が必要です。

岩綿吸音板の法的規制レベル(レベル3建材)

アスベストを含有する岩綿吸音板は、建材を割ったり削ったりしない限り繊維が飛散しにくい「レベル3建材」に分類されます。しかし、「レベル3だから簡易的な扱いでよい」と考えるのは大きな間違いです。

解体・改修時には、石綿障害予防規則に基づき、作業計画の作成、掲示、作業記録の保存が義務付けられており、大気汚染防止法によって「石綿含有成形板等」としての適切な飛散防止措置(原則として切断・破砕しない手ばらし等)が求められます。

適切な除去・処理の進め方

岩綿吸音板の除去作業は、必ず石綿作業主任者などの有資格者が在籍する専門業者に依頼する必要があります。作業時には湿潤化を徹底し、切断や破砕による粉じん飛散を最小限に抑える対策が不可欠です。

また、撤去した建材は、石綿含有廃棄物として、法令に基づいた区分・方法で適正処理が必要です。コストや工期だけを優先した対応は、後の行政指導やトラブルにつながる恐れがあるため注意が必要です。

古い建物の天井・軒天井改修は「下地」まで確認を(まとめ)

古い建物の改修や解体において、岩綿吸音板は最も身近で、かつ判断を誤りやすい建材の一つです。1987年以前の製品にはアスベストが含まれている可能性があり、その調査においては表面的な確認だけでなく、捨貼り工法による「下地材」の存在を常に意識しなければなりません。

目視や図面確認、有資格者による正確な検体採取と分析こそが、法的リスクと健康リスクを回避する最も確実な手段となります。

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監修者:三井伸悟

1980年静岡県浜松市生まれ。2003年に東海大学海洋学部水産資源開発学科を卒業後、2004年に日本総研株式会社へ入社し、分析・環境分野でのキャリアをスタート。2011年には同社の原子力災害対策本部長に就任。その後、世界最大の分析会社グループEurofins傘下の日本法人にて要職を歴任。2017年にユーロフィン日本総研株式会社、2018年にはEurofins Food & Product Testingの代表取締役社長に就任。さらに、埼玉環境サービス株式会社取締役、ユーロフィン日本環境株式会社の東日本環境事業及び環境ラボ事業の部長も経験。2021年にアルフレッド株式会社を創業し、代表を務める。特定建築物石綿含有建材調査者、環境計量士(濃度)、作業環境測定士(第一種)、公害防止管理者(水質一種)の資格を保有し、20年以上にわたる環境・分析分野での豊富な実務経験と専門知識を活かし、持続可能な環境構築に貢献。

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