アスベスト処分費用の相場は?除去・解体時の流れと費用を徹底解説

住宅の改修工事中、専門家が都市部にある住宅の階段からアスベストを撤去し、安全と健康規制の遵守を確保

古い建造物の解体や改修工事を検討する際、十分に気をつけなければならないのがアスベストの存在です。適切な処理が求められる一方で、その費用は建材の種類や施工条件によって大きく異なり、事前に把握しておかなければ思わぬ出費や工期の遅れにつながる可能性もあります。

この記事では、アスベスト処分にかかる費用の仕組みを「何に、どれだけ、なぜ費用がかかるのか」といった視点から丁寧にひも解き、工程ごとの内訳や金額の幅、安全対策に伴うコストの背景などをわかりやすく整理します。ぜひ基本的な仕組みや費用の考え方を学び、予算計画や業者選定に役立ててください。

【本記事の要約】
・アスベスト処分費用は各工程(調査・除去・運搬・最終処分)で費用が発生
・建材の種類や建物構造、除去レベル(1〜3)により費用は大きく変動
・補助金・助成金を活用や実績のある業者選定等が重要なコスト削減に

アスベスト処分費用の全体像と費用相場

破損した家屋の修理費用を、財務データに基づいて算出します。

アスベスト処分にかかる費用は、建物の構造や規模、使用されている建材の種類などによって大きく変動するため、見積額だけを見ても、なぜその金額になるのかを判断するのは難しいものです。

これらの費用は作業の内容や必要な対策に基づいて構成されており、その仕組みを理解することで、見積もりに含まれる項目の意味や妥当性を判断しやすくなります。ここで解説する費用の全体像を把握して、無駄のない予算計画や信頼できる業者選定に役立ててください。

アスベスト除去・処分が必要な理由と法律 

アスベストは、粉じんを長期間にわたって大量に吸い込むと深刻な健康被害を及ぼすことが確認されており、その危険性は長年にわたって社会問題となってきました。こうした背景から、日本国内では2006年以降、重量の0.1%を超えるアスベストを含む製品の製造・輸入・販売・使用が全面的に禁止されています。

しかし、それ以前に建てられた建物にはアスベスト含有建材が使用されている可能性が高く、解体や改修の際には適切な調査と処理が不可欠です。作業にあたっては、周辺環境と作業者の安全を守るため、法令に基づいた専門的な対応が求められます。一般的な工事とは異なり、こうした対応には高い安全基準と専用の人員・設備が必要となり、追加のコストが発生することを把握しておきましょう。

アスベスト処分費用の主な内訳(調査費・除去費など) 

アスベストの処分は、単に建材を取り除く作業だけではありません。その特殊性から、いくつもの専門的な工程が必要となり、それに伴ってさまざまな費用が発生します。アスベスト処分にかかる費用がどのような項目で構成され、それぞれの作業にどんな内容が含まれているのかを理解することが、安全かつ適正な処分を進めるための第一歩です。

1.事前調査費 

建材にアスベストが含まれているか、その種類や量がどれくらいあるかを調べるための費用です。アスベスト対策の最初のステップであり、専門家による書面・目視調査や、採取した試料の分析が含まれます。原則的に事前調査は義務化されており、調査なしでは次のステップへ進めません。

2.アスベスト除去費 

建物からアスベスト含有建材を安全に取り除くための費用です。飛散しやすいレベル1、2の除去に関しては、飛散を最小限に抑えるための厳重な養生をはじめ、室内の空気を清浄に保つ負圧除じん装置の設置や作業員の安全を守るための特別な装備、除去後の徹底した清掃などが含まれます。アスベストのレベル1〜3によって、この費用は大きく変動することも覚えておきましょう。

3.運搬費

除去されたレベル1,2のアスベストが含まれる建材は、通常の廃棄物とは異なり「特別管理産業廃棄物」として扱われます。そのため、アスベストは通常より厳しい運搬ルールのもと、許可を持つ専門業者が専用車両で厳重に梱包して運ぶ必要があり、運搬費用も高くなります。

4.最終処分費

運搬されたアスベストは、無害化処理施設で処理されるか、厳重な管理体制のもと管理型最終処分場に埋め立てられます。環境や健康への影響を防ぐため、こうした適切な処理には相応の費用が必要です。

レベル別|アスベスト除去・処分費用の違い

屋根業者が古いアスベストセメントシートを除去し、屋根を改修します。

アスベストの処分費用は、建物の構造や広さ、アスベストの種類、劣化の状態、さらには作業環境の難易度によって大きく変わるため、一律の金額を示すことはできません。その中でも費用を左右する大きな要因のひとつが、対象となる建材の「レベル」です。

アスベスト含有建材は、飛散性の度合いに応じてレベル3からレベル1に分類されており、それぞれに必要な作業内容や安全対策が異なるため、費用にも大きな差が生じます。ここでは、国土交通省が公表している資料や、複数の専門サイトの情報をもとに、レベルごとの特徴と想定される費用相場について詳しく解説します。

【参照】

アスベスト解体費用相場を解説!安くなる補助金制度なども活用しよう|食環境衛生研究所

アスベスト処分の費用相場は?安くする方法も詳しく紹介|アスベスト調査・除去費用専門業者 M-LINE

アスベストの処分費の相場はいくら?処分の流れも解説|イエウール

レベル1:吹付けアスベスト 

レベル1の「吹付けアスベスト」は、天井や壁に直接吹き付けられたもので飛散性の高さが危惧される建材です。除去には、作業区域の完全密閉や負圧除じん装置の設置、作業員の厳重な防護など、高いレベルの安全対策が義務付けられており、高度な専門作業が求められるため、他のレベルよりもコストが高いのが特徴です。また内壁等で使用される吹付バーミキュライト(ひる石)や吹付パーライトについても、現在はレベル1扱いとなっていることにも注意が必要です。

【2007年1月から2007年12月における、施工実績データより算出された除去単価|国土交通省】

アスベスト処理面積除去費用
300m2以下2.0万円/m2 ~ 8.5万円/m2
300m2~1,000m21.5万円/m2 ~ 4.5万円/m2
1,000m2以上1.0万円/m2 ~ 3.0万円/m2

レベル2:保温材・断熱材等 

レベル2は、主にボイラー配管などに使われるアスベスト含有の保温材や断熱材です。レベル1ほどではないものの、破損すると繊維が飛散する恐れが高く、除去には丁寧な養生や湿潤化、高性能な防じんマスク着用など、厳重な飛散防止対策が求められます。

建材が壊れやすいため慎重な作業が必要で、費用もレベル3より高めです。一般的に、1㎡あたり10,000円〜60,000円程度が目安とされています。

レベル3:スレート・Pタイルなど 

レベル3は、スレートやPタイルなど、アスベストがセメントなどで固められた「非飛散性アスベスト」で、通常の状態では飛散リスクが低いため、レベル1や2に比べて比較的安価に除去可能です。

しかし、切断や破損で繊維が飛散する可能性があるため、湿潤化や手作業での慎重な取り外しなど、適切な対策が必須です。このレベルの費用目安は、1㎡あたり3,000円〜30,000円程度とされています。

解体工事におけるアスベスト処分の注意点

繊維セメント製プランターの撤去

建物の解体工事は、アスベストの有無によってその進め方や費用が大きく変わります。特に、建物の構造やアスベストの使用状況は、安全な除去作業の難易度やコストに直結するため、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。ここでは、解体工事とアスベスト処理の関係性、そして構造別の注意点について詳しく見ていきましょう。

鉄骨造・RC造・木造で異なる費用影響 

建物の構造はアスベストの使用箇所や量に影響し、処分費用も大きく変わります。古い鉄骨造やRC造では、耐火材として吹付けアスベストや耐火被覆材が広範囲に使われやすく、その除去には大規模かつ高額な専門工事が必要です。

一方、木造建築物では、アスベストは主に屋根材や外壁などに使用されています。ほとんどがレベル3に該当する内装ボード類に限られることが多く、処理費用は比較的抑えられます。このように構造によるアスベストの使用パターンの違いから、解体前に正確な有無を把握することが、費用予測と計画策定に不可欠です。

解体費用とアスベスト処分費の関係 

アスベストが含まれている場合、解体前に法令に基づいた調査・除去作業が必要となり、その工程ごとに追加の費用が発生します。同じ鉄骨造の建物であっても、アスベストが含まれていない場合と比べ、含まれている場合は数十万円〜数百万円規模で費用が上乗せされるケースも珍しくありません。

特に、レベル1のアスベスト含有建材が使用されていた場合は、除去作業に伴う養生や負圧設備、安全管理などが厳格に求められるため、アスベスト対策の方が、解体費用を上回るケースもあります。こうした影響を見越して、解体工事を検討する際は早い段階でアスベスト調査を行い、必要な対応を見積もりに反映させることが重要です。

アスベスト処分に使える補助金・助成金制度

アスベスト処分にかかる補助金・助成金

アスベスト処分にかかる費用は一般的に高額になる傾向がありますが、その負担を軽減する手段として、国や自治体では各種の補助金・助成金制度が整備されています。これらの支援制度をうまく利用すれば、自己負担を大きく抑えることができ、経済的な理由で処分を先送りにするリスクも減らせることを留意しておきましょう。

補助対象となる工事と条件 

国や地方自治体のアスベスト関連補助金は、主に健康リスクが高いとされる吹付けアスベストやアスベスト含有保温材などの除去工事が対象です。補助金を受け取るには、建物の種類(戸建て住宅、共同住宅、事業所など)、築年数、所有者の要件、工事規模、アスベストの種類や量、そして事前にアスベスト調査を行っていることなど、さまざまな条件が定められています。

特に、多くの制度では補助金申請前に工事を開始していないことが必須条件なので注意が必要です。制度内容や条件は各自治体で異なるため、必ず対象となる建物所在地の自治体の情報を確認しましょう。

実際の補助金活用例 

多くの自治体では、アスベスト調査費用に対し、全額または高額な割合(8割〜10割など)を補助するケースが見られます。除去工事費用についても、自治体により補助率は異なりますが、工事費用の1/3から2/3、あるいは上限額を設定して補助する制度が一般的です。

例えば、東京都内の一部の区では、戸建て住宅の吹付けアスベスト除去に最大数百万円、共同住宅や事業所ではさらに高額な補助金が提供されている事例もあり、これらの制度は、アスベスト問題に直面する建物所有者にとって、安全対策を進める上で非常に大きな支えとなります。

補助金は年度ごとに予算が決まっているため、利用を検討する場合は早めに申請窓口に相談し、最新情報を確認することが重要です。

アスベスト処分費用を安く抑えるための方法

アスベスト事故後、防護服を着用した作業員が除染作業を行い、使用済みの防護服を大きな廃棄袋に慎重に収納します

アスベスト処分費用を抑えるには、補助金や助成金を活用するだけでなく、賢い業者選びや見積もり比較も非常に重要です。ここでは、無理な値引き交渉ではなく、費用負担を軽減しつつ、安全かつ適正な処分を実現するための具体的な方法をご紹介します。

実績のある業者を選ぶ 

費用を無理なく抑えるためには、信頼できる経験豊富な専門業者を選ぶことが重要です。見積もりが安いからといって安易に選んでしまうと、専門知識や技術が不足している業者の場合、作業の質が低くなり、結果として追加費用がかかったり、工期が延びたりするばかりか、最悪の場合はアスベストが飛散してしまい、健康被害や法的トラブルに発展するリスクもあります。

一方、実績のある業者であれば、適切な作業計画と安全対策を講じたうえで、無駄のない効率的な施工が期待でき、トータルで見ればコストを抑えることにもつながります。

複数業者から見積もりを取る 

適正な価格に抑えるためには、必ず複数の専門業者から見積もりを取って比較検討することが有効です。費用は業者によって異なるため、複数社の見積もりを比較することで、市場の相場感を把握し、提示された金額が妥当であるかを判断できます。

また、見積もりを比較する際は単に総額だけでなく、各項目の内訳(調査費、除去費、養生費、運搬費、処分費など)が明確か、追加費用の発生条件、工期、保証内容なども詳細に確認しましょう。不透明な点があれば納得いくまで質問し、金額だけでなく、業者の対応や提案内容なども総合的に評価して、最も信頼でき、かつ適切な価格でサービスを提供してくれる業者を選ぶことが重要です。

定性分析でアスベストの有無を明確にする 

アスベスト含有建材の有無を確認する事前調査の段階で「みなし判定」を行う場合は、その後の定性分析を省略することも可能です。工程をひとつ飛ばすぶん費用を抑えられると考えがちですが、最新データに基づくと、分析を実施した方が最終的な費用は下がる傾向にあります。

2025年版 アスベストの最新規制動向:

お役立ち情報 「2025年版 アスベストの最新規制動向」

こちらの資料では以下の内容をわかりやすく知ることが出来ます。

法令と罰則|アスベストの不適切処分がもたらすリスク

法令と罰則|アスベストの不適切処分がもたらすリスク

アスベストの処分には費用がかかりますが、その負担を避けて不適切な対応をすると、深刻なリスクを招く恐れもあるので注意が必要です。アスベストが飛散すれば、周囲の人の健康に悪影響を与える可能性があり、国もこうした危険性を踏まえて厳しい法律を設けています。

ここでは、アスベスト処分に関する主な法令と、違反した場合に発生する具体的なリスクについて解説します。適切な処理を怠ることで生じる重大な結果を理解し、正しい選択をしてください。

主な関連法令とその目的 

アスベスト処分に関連する主な法令とその目的は以下の通りです。これらの法令を守ることは、アスベスト処分を行う事業者や建物の所有者にとって、単なるコストではなく、法的な責任であると同時に、社会的な責務でもあることを認識しましょう。

【大気汚染防止法】

この法律は、アスベスト繊維が解体や除去作業中に空気中に飛び散ることを防ぐことが目的です。アスベスト除去工事の前の届出義務や、飛散防止のための具体的な作業基準などが厳しく定められています。

【石綿障害予防規則(労働安全衛生法関連)】

アスベストを取り扱う作業員の健康被害を予防することが最大の目的です。作業主任者の選任、作業員への特別教育、適切な防護具の着用義務、作業場の管理方法などが詳細に規定されています。

【廃棄物処理法:】

アスベスト含有廃棄物が適切に処理されることを定めた法律です。レベル1,2などの飛散性アスベスト含有廃棄物を「特別管理産業廃棄物」として分類し、通常の廃棄物よりも厳重な収集、運搬、そして最終処分方法が義務付けられています。

違反時に発生するリスク 

アスベストを法令に違反して不適切に処分すると、深刻なリスクが発生し、企業や個人に大きな影響を及ぼす可能性があります。短期的な費用削減を優先することで、かえって将来的な損失や信用の低下を招く恐れがあることを理解し、必ず法令に従った適切な方法で処分を行いましょう。

【行政処分・罰金】

法令に違反すると、行政から作業中止命令、改善命令、事業停止命令などが科される可能性があります。また、大気汚染防止法や廃棄物処理法には、高額な罰金が定められており、場合によっては懲役刑といった刑事罰が科されることもあるので深刻です。

【健康被害と損害賠償】

不適切な処理によってアスベストが飛散し、作業員や近隣住民に健康被害が発生した場合、多額の損害賠償請求を受けるリスクがあり、企業の経営を揺るがすほどの経済的打撃にもなり得ます。

【企業イメージへの悪影響】 

法令違反や健康被害の発生は、企業の社会的信用を著しく損なう要因となる点も見逃せません。一度失った信頼を取り戻すのは容易ではなく、事業活動に長期的な悪影響を及ぼす可能性があります。

まとめ|アスベスト処分は計画的に、安全かつ適正に

アスベストの処分は、費用面だけでなく、安全性や法令遵守、社会的責任といった多面的な視点が求められる取り組みです。コストの大小だけに目を向けるのではなく、なぜその工程が必要なのか、どのような背景があるのかを理解することが、納得のいく判断につながります。

見積もりの内訳を読み解く力や、制度・業者選びの目を養うことが、最終的には安全・安心な処分と将来的なリスク回避への第一歩となり、正確な情報に基づいた対応こそが、責任ある選択といえるでしょう。

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監修者:三井伸悟

1980年静岡県浜松市生まれ。2003年に東海大学海洋学部水産資源開発学科を卒業後、2004年に日本総研株式会社へ入社し、分析・環境分野でのキャリアをスタート。2011年には同社の原子力災害対策本部長に就任。その後、世界最大の分析会社グループEurofins傘下の日本法人にて要職を歴任。2017年にユーロフィン日本総研株式会社、2018年にはEurofins Food & Product Testingの代表取締役社長に就任。さらに、埼玉環境サービス株式会社取締役、ユーロフィン日本環境株式会社の東日本環境事業及び環境ラボ事業の部長も経験。2021年にアルフレッド株式会社を創業し、代表を務める。特定建築物石綿含有建材調査者、環境計量士(濃度)、作業環境測定士(第一種)、公害防止管理者(水質一種)の資格を保有し、20年以上にわたる環境・分析分野での豊富な実務経験と専門知識を活かし、持続可能な環境構築に貢献。

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