工作物のアスベスト調査が変わる! 「工作物石綿事前調査者」の資格と実務対応を解説

2026年1月から義務化される「工作物石綿事前調査者」制度は、工作物だけでなく建築物の附属設備などにも関係し、幅広い解体・改修工事に影響します。対象工事や必要資格を誤解していると、法令違反や損害賠償といった重大リスクを招きかねません。
この記事では、新制度の要点と実務対応を整理し、わかりやすく解説していくので、ぜひ現場対応の質の向上と、安心・安全な作業の実現に活用してください。
【本記事の要約】
・2026年1月からは建築物同様に工作物も有資格者によるアスベスト調査が義務化される
・工作物の中でも特定工作物の調査には「工作物石綿事前調査者」の資格が必要になる
・「工作物石綿事前調査者」の資格取得には一定の学歴や実務経験が求められる
- 1. 「工作物石綿事前調査者」制度とは?義務化の背景と対象工事
- 1.1. なぜ今、工作物にも調査資格が必要なのか
- 1.2. アスベストの事前調査に関する各資格の違いと適用範囲
- 1.2.1. 一般建築物石綿含有建材調査者
- 1.2.2. 特定建築物石綿含有建材調査者
- 1.2.3. 一戸建て等石綿含有建材調査者
- 1.3. 無資格調査は違反?罰則や法的リスクを確認
- 2. 「工作物石綿事前調査者」の調査対象となる工作物とは?
- 2.1. 法令で定められた工作物の定義とは
- 2.2. 有資格者による調査が義務付けられている工作物
- 2.3. 工作物のどこにアスベストが使われているのか
- 3. 「工作物石綿事前調査者」の資格要件と講習制度
- 3.1. 「工作物石綿事前調査者」の資格要件と取得方法
- 3.1.1. 【資格取得のポイント】
- 3.1.2. 講習はどこで受けられる?
- 4. 調査業務の具体的な流れと法令に基づく実務対応
- 4.1. 工作物のアスベスト有無を事前に確認する義務
- 4.2. 調査結果の記録と調査者情報の記載義務
- 4.3. 元請・下請間での調査者手配と契約上の注意点
- 5. 制度対応は待ったなし!義務化を見据えて早めの準備を
「工作物石綿事前調査者」制度とは?義務化の背景と対象工事

2026年1月1日より、一部の工作物における解体・改修工事では、有資格者によるアスベスト調査の実施が法的に義務付けられます。調査にあたっては、「一般建築物石綿含有建材調査者」や「特定建築物石綿含有建材調査者」など既存の資格保有者が対応可能なケースもありますが、構造や用途の観点からより高度な知識が必要とされる工作物については、新設された「工作物石綿事前調査者」資格を有する者でなければ調査を行うことはできません。
この制度は特殊な施設に限らず、集合住宅の付属設備やオフィスビル、商業施設の外部構造物など、広く一般的な建築プロジェクトにも関わってくるため、建築物の解体・改修に関わるすべての事業者は、新たな調査要件と資格制度について正しく理解し、確実な対応が求められます。
なぜ今、工作物にも調査資格が必要なのか
建築物とは異なり、工作物には配管、煙突、各種機械設備、キュービクルなど、形状や用途が多岐にわたる構造物が含まれます。これらの工作物にも、過去には断熱材や耐火材としてアスベストが使用されていた経緯があり、老朽化や工事によって飛散リスクが顕在化する可能性は否定できません。
従来の資格だけでは、こうした多様な構造物に対する調査に限界があり、十分な精度や対応力が確保できないことも想定されたため、工作物特有の知識を持つ専門家が不可欠であるという認識が高まり、今回の資格制度導入へと繋がりました。
アスベストの事前調査に関する各資格の違いと適用範囲
アスベスト事前調査に関連する資格は複数あり、それぞれの資格には対応できる構造物や工事の範囲が明確に定められています。「工作物石綿事前調査者」を深く知るうえで大切なのは、他にどのような資格があり、どのような特徴があるのかを知ることです。これにより、より「工作物石綿事前調査者」の特異性が見えてきます。
一般建築物石綿含有建材調査者
戸建て住宅や中小規模の建築物を対象とした石綿事前調査を行うための基本的な資格です。多くの改修・解体現場に対応できるため、建築業界では広く活用されています。
【主な対象】
・一般的な戸建て住宅、共同住宅(住戸部分を含む)
・中小規模の商業施設・工場・事務所などの建築物
【対応範囲】
・内装材・外装材・屋根材などのアスベスト調査
・建築物に密接に附属する設備類の調査(構造や設置形態による)
・工事規模が比較的小さく、構造が単純な建築物の調査
特定建築物石綿含有建材調査者
一般建築物石綿含有建材調査者のアスベスト調査を行う上位資格です。資格取得には一般建築物石綿含有建材調査者は筆記のみの試験ですが、特定建築物石綿含有建材調査者は現地調査及びその報告書、最後は面接形式の試験で実務経験や状況判断を問われます。現在は特定建築物石綿含有建材調査者でなければ調査できない建築物は法令上区別されておりませんが、複雑な構造や大型の施設、多様な建材に対応するため、より高度な専門性が必要とされる場合には資格を求められることもあります。
【主な対象】
・大型の建築物で多彩な経験や高度な知識が必要なもの
【対応範囲】
・大規模または複雑構造の建築物におけるアスベスト調査
・高度な調査手法・リスク評価が必要な現場対応
一戸建て等石綿含有建材調査者
主に一戸建て住宅や小規模な共同住宅の住戸部分に限定したアスベスト調査を行うための資格です。講習内容は比較的簡易で、調査範囲も明確に絞られています。
【主な対象】
・一戸建て住宅の室内・屋根・外壁など
・小規模集合住宅の住戸内
【対応範囲】
・規模が小さく構造が単純な住宅のアスベスト調査
・天井材、壁材、床材など、住戸内部に限定した建材
・比較的簡易な調査内容に対応
無資格調査は違反?罰則や法的リスクを確認
対象となる工事において「工作物石綿事前調査者」による事前調査を怠った場合、3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
さらに、調査の不備によってアスベストが飛散し、環境汚染を引き起こした場合には、工事停止命令や事業停止命令が科されるだけでなく、高額な損害賠償請求や関係者の刑事責任を問われる可能性も否定できません。
こうしたリスクを回避するためにも、必ず有資格者による調査を実施し、法令を遵守することが重要です。
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「工作物石綿事前調査者」の調査対象となる工作物とは?

新たに施行される法制度では、有資格者によるアスベスト調査が義務付けられるのは、工作物全体ではなく、その一部に限定されています。さらに、その中でも「工作物石綿事前調査者」の資格が必要となるのは“特定工作物”のみです。
このように調査対象の範囲にはやや複雑な点もあるため、ここではその構造をできるだけわかりやすく整理して解説していきます。
法令で定められた工作物の定義とは
工場やプラントなどの特殊な建築物に関連する工作物が対象であり、主には反応路、加熱炉、ボイラー、焼却設備、発電・変電・配電設備、煙突や観光用エレベーターの昇降路の囲いなどが該当します。
有資格者による調査が義務付けられている工作物
基本的にアスベスト含有建材を使用している可能性がある工作物は、すべて工事の際に事前調査が義務付けられていますが、特定工作物と「塗料その他の石綿等が使用されているおそれがある材料の除去等の作業」に関しては、有資格者による調査が義務付けられています。工作物の種類によって必要な資格も異なる点を確認しておきましょう。
区 分 | 対象工作物 | 事前調査の資格(下記のいずれか) |
【特定工作物】石綿障害予防規則第4条の2第1項第3号の規定に基づき厚生労働大臣が定める物(令和2年厚生労働省告示第278号、一部改正令和5年厚生労働省告示第89号) | ① 反応槽② 加熱炉③ ボイラー及び圧力容器④配管設備(建築物に設ける給水設備、排水設備、換気設備、暖房設備、冷房設備、排煙設備等の建築設備を除く)⑤ 焼却設備⑥ 貯蔵設備(穀物を貯蔵するための設備を除く)⑦ 発電設備(太陽光発電設備及び風力発電設備を除く)⑧ 変電設備⑨ 配電設備⑩ 送電設備(ケーブルを含む) | 工作物石綿事前調査者 |
⑪ 煙突(建築物に設ける排煙設備等の建築設備を除く)⑫ トンネルの天井板⑬ プラットホームの上家⑭ 遮音壁⑮ 軽量盛土保護パネル⑯ 鉄道の駅の地下式構造部分の壁及び天井板⑰ 観光用エレベーターの昇降路の囲い(建築物であるものを除く) | ・工作物石綿事前調査者・一般建築物石綿含有建材調査者・特定建築物石綿含有建材調査者・令和5年9月までに日本アスベスト調査診断協会に登録された者 | |
特定工作物以外の工作物 | 上記(①~⑰)以外の工作物 ※塗料その他の石綿等が使用されているおそれがある材料の除去等の作業に限る。 |
厚生労働省「工作物石綿事前調査者講習 標準テキスト」より引用
工作物のどこにアスベストが使われているのか
アスベストは、断熱や耐火目的でさまざまな部材に用いられていました。工作物においては、配管の保温材、ボイラーの断熱材、継手のパッキン、耐熱パネル、キュービクル内の成形板などが主な使用箇所です。特に1970〜1990年代に設置された設備には注意が必要です。
「工作物石綿事前調査者」の資格要件と講習制度

2026年1月1日施行ということもあり、工作物の解体・改修工事に関わる事業者・企業には、有資格者による調査の義務化への対応が急ピッチで求められています。
「工作物石綿事前調査者」の資格を取得するために必要な条件や、実際の講習内容、受講までの流れを把握し、今後の実務に備えるうえで、制度の仕組みを正確に理解しておきましょう。
「工作物石綿事前調査者」の資格要件と取得方法
資格を取得するには、建設・設備・機械関連業務における2年以上の実務経験、もしくは同等の知識を有することが前提です。受講者は厚生労働省が指定する登録講習機関で、所定の講習を受け、確認テストに合格することで修了証を取得できます。
【資格取得のポイント】
講習を受けるには、以下のいずれかの学歴や実務経験が求められます。
・大学(短期大学を除く)で工学に関する正規課程を修了後、工作物に関する実務経験2年以上
・修業年限3年の短期大学(工学に関する正規課程)を修了後、工作物に関する実務経験3年以上
・上記以外の短期大学または高等専門学校(工学に関する正規課程)を修了後、工作物に関する実務経験4年以上
・高等学校または中等教育学校で工学に関する正規課程を修了後、工作物に関する実務経験7年以上
・学歴不問の場合、工作物に関する実務経験11年以上
・石綿作業主任者技能講習修了者、建築行政または環境行政(石綿の飛散防止に関するものに限る)の実務経験者(2年以上)、特定の化学物質等作業主任者技能講習修了者で工作物石綿事前調査に関する実務経験が5年以上ある者なども対象となります
講習はどこで受けられる?
工作物石綿事前調査者の講習は、厚生労働省に登録された講習機関で受講する必要があります。受講定員には限りがあり、特に制度の義務化が近づく時期には申込が集中する可能性が高いため、できるだけ早めに手続きを進めておきましょう。
なお、2025年3月末時点で本講習の修了者はすでに5,772人に達しています。
調査業務の具体的な流れと法令に基づく実務対応

「工作物石綿事前調査者」として現場に立つ以上、石綿障害予防規則などの関連法令に基づき、適切な調査の実施から記録の作成、契約上の管理までを一貫して担う責任があります。わずかな見落としが重大な法的リスクにつながる可能性もあるため、実務上の義務や留意点を正しく理解し、確実に対応できる体制を整えておくことが大切です。
工作物のアスベスト有無を事前に確認する義務
石綿障害予防規則第3条により、工作物を含む解体・改修工事の前には、アスベストの有無を調査することが義務付けられています。調査者は、設計図書や過去の修繕履歴を確認し、現地目視やサンプリング調査を通じて対象部材を特定する必要があります。
調査結果の記録と調査者情報の記載義務
石綿則第5条・第7条に基づき、調査結果は報告書にまとめ、作業計画届に添付する必要があります。その際には調査者の氏名、講習修了年月日、修了番号を明記することが義務づけられており、掲示義務(第3条第3項第六号)にも該当します。
元請・下請間での調査者手配と契約上の注意点
調査業務の発注者が元請である場合、適切な資格者の選定と契約書への明記が求められます。下請けに委託する際も、有資格者が調査を行うことを確認し、実施内容を記録・保存する義務があることを留意しておきましょう。
制度対応は待ったなし!義務化を見据えて早めの準備を
2026年1月1日から始まる「工作物石綿事前調査者」制度は、アスベスト対策における重要な制度変更です。複雑な構造を持つ工作物においても、専門的な知識と技術を備えた調査者による対応が求められるようになります。
無資格での調査は、法令違反として処罰の対象になるだけでなく、事業停止や損害賠償、企業イメージの毀損といった深刻なリスクにつながりかねません。この制度の目的と重要性を正しく理解したうえで、有資格者の確保や外部委託先の選定といった具体的な準備を進め、安全な作業環境の確保と企業の信頼維持につなげましょう。
工作物石綿事前調査者についてわかりやすく図解化した資料が以下のリンクからダウンロードできます。
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1980年静岡県浜松市生まれ。2003年に東海大学海洋学部水産資源開発学科を卒業後、2004年に日本総研株式会社へ入社し、分析・環境分野でのキャリアをスタート。2011年には同社の原子力災害対策本部長に就任。その後、世界最大の分析会社グループEurofins傘下の日本法人にて要職を歴任。2017年にユーロフィン日本総研株式会社、2018年にはEurofins Food & Product Testingの代表取締役社長に就任。さらに、埼玉環境サービス株式会社取締役、ユーロフィン日本環境株式会社の東日本環境事業及び環境ラボ事業の部長も経験。2021年にアルフレッド株式会社を創業し、代表を務める。特定建築物石綿含有建材調査者、環境計量士(濃度)、作業環境測定士(第一種)、公害防止管理者(水質一種)の資格を保有し、20年以上にわたる環境・分析分野での豊富な実務経験と専門知識を活かし、持続可能な環境構築に貢献。
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