壁に潜むアスベストを解説|内装・外壁の使用場所と見分け方

解体工事現場で劣化し剥がれ落ちたアスベスト含有の恐れがある室内壁

アスベスト(石綿)は、内装壁・外壁を問わず、住宅からビル、学校、工場に至るまで幅広い建築物の壁に使用されてきた建材です。硬く成形された板材だけでなく、じゅらく壁や京壁などの仕上塗材、下地調整材にも含まれている場合があり、建材だけを確認していると見落としにつながります。

解体・改修工事に携わる事業者にとって、壁に潜むアスベストへの対応は、健康リスクの管理と法令遵守の両面で欠かせない課題です。含有建材は見た目だけで判断することが難しく、建物の用途によって使われやすい部位や建材の傾向も異なるため、内装・外装の両面から確認する視点が求められます。

本記事では、内装壁・外壁に使われてきた含有建材の種類、建物用途別の使用場所、仕上塗材・下地調整材の注意点、見分け方から対処法、実際の検出率データまでを整理しました。解体・改修工事を計画する際の事前確認や、分析調査を依頼するかどうかの判断材料としてご活用ください。

【本記事の要約】
・内装壁・外壁の両方に、アスベストを含む建材や塗材が使われてきた。
・使用場所は建物用途によって傾向があり、事前に見当をつける手がかりになる。
・過去に流通した仕上塗材・下地調整材にもアスベスト含有製品があり、建材だけを見ていると見落とすこともある。
・見分け方と除去方法は、アスベストの発じん性(飛散のしやすさ)を示す「レベル」によって異なる。

目次

アスベスト含有建材・塗料は取り扱いに要注意

壁の表面塗膜が剥がれ、内部から束状の繊維建材が毛羽立って露出している

古い建造物や工作物の解体・改修に関わる企業にとって、アスベスト(石綿)は避けて通れないテーマです。飛散した繊維を長期間吸い込むことで健康被害につながる可能性が明らかになり、現在の日本では、アスベスト含有建材や塗料の取り扱いに関してさまざまな規制が設けられています。

建材の中に固定され、大気中に浮遊しない状態であれば、危険性は高くありません。ただし、工事の際の研磨や切断、除去作業では飛散しやすくなるため、適切な対策が欠かせません。

アスベストの用途は約3,000種、うち8割が建材

アスベストの用途は約3,000種ともいわれ、そのうち約8割が吹付け材や保温・断熱材、スレート材といった建材として活用されてきました。日本では1955年頃から幅広く使用されるようになり、ピークは1970年〜1980年頃です。一般住宅はもちろん、ビルの高層化や鉄骨構造化にともない、大規模な鉄骨造建築物の軽量耐火被覆材としても多量に使用されました。

2006年に輸入・製造・使用などが原則禁止に

1975年以降、労働安全衛生法や大気汚染防止法などの関連法規が段階的に整備され、アスベスト含有製品の使用は徐々に制限されてきました。2006年9月には労働安全衛生法施行令が改正され、含有率0.1%を超えるアスベスト含有製品が原則禁止となり、代替が困難な一部製品には猶予期間が設けられました。

この規制以降に着工された建造物であれば、基本的にアスベストの心配はいりません。一方で、2006年9月より前に建てられた建物は、アスベスト含有建材が使用されている可能性が高く、注意が必要です。

アスベストのレベル分類|対策はレベルに応じて変わる

アスベスト含有建材は、飛散のしやすさを示す「発じん性」にもとづいて、次の3段階に分類されます。

レベル発じん性対応の目安
レベル1最も高い吹付け材が中心。厳重な隔離・飛散防止措置が必要
レベル2中程度保温材・断熱材が中心。湿潤化などの対策が必要
レベル3比較的低い成形板・塗材が中心。ただし破損時は飛散に注意

このレベルによって、作業者のばく露防止措置や飛散・漏えい防止策は変わってきます。ただし、実際の発じん性は使用状況や環境によっても差があるため、劣化が進んでいる場合や毛羽立ちが見られる場合には、専門業者による調査が必要になります。

内装壁・外壁にはどんなアスベスト含有建材が使われてきた?

防護服とヘルメットを着用した3人の作業員が、室内で壁パネルを手作業で慎重に支えながら撤去している

天井や壁、床をはじめ、建築物や工作物のあらゆる部分にアスベスト含有建材が使われてきました。ここでは、内装壁・外壁に使用されていた可能性が高い建材を、レベル別に整理します。

壁材として使われた含有建材は、レベル3に該当するものが多くを占めます。硬く成形された板状で使われることが多く、発じん性が低いためです。

レベル1に該当する主な壁材

飛び散りやすい綿状で施工されているため、発じん性が高く、健康被害のリスクが高い建材です。主に耐火性や断熱性、吸音性、意匠性を目的として、天井や壁に使用されました。少しの衝撃でも飛散するおそれがあるため、解体作業では特にしっかりとした対策が必要です。

種類建材名製造時期主な使用部位・用途特徴
吹き付け材石綿含有吹付けバーミキュライト〜1988年天井断熱材・吸音材・結露防止用黄金色で光沢があり、弾力がある
吹き付け材石綿含有吹付けパーライト〜1989年内装材の天井、梁型、吸音・仕上げ材骨材混入の粗面吹付け仕上げ

レベル3に該当する主な壁材

区分建材名製造時期主な使用部位・用途特徴
内装材(壁・天井)石綿含有スレートボード各種1931〜2004年壁材・天井材。フレキシブル板は湿度変化に強く浴室・台所の壁にも使用高強度・高靭性。膨張収縮が少なく含有率10〜30%
内装材(壁・天井)石綿含有けい酸カルシウム板第1種1960〜2004年天井材・壁材。外装では軒天井材や準防火地域の軒裏にも使用軽量で耐火性・断熱性に優れる
内装材(壁・天井)石綿含有パルプセメント板1958〜2004年準不燃材料としての軒天井材・内装材軽量・加工性がよく防火性・遮音性・吸音性に優れる
内装材(壁・天井)石綿含有スラグせっこう板1978〜2003年不燃材料として火気使用室にも施工可能スラグ・せっこうを主原料とした加工性のよい材料
外装材(外壁・軒天)石綿含有押出成形セメント板1970〜2004年非耐力壁用材料として使用外壁材としては厚さ50mm以上の製品が多い

このほかの建材については、環境省・国土交通省などの公的データベースもあわせてご確認ください。

国土交通省・経済産業省:「石綿(アスベスト)含有建材データベース」
https://asbestos-database.jp/

建物の用途別|含有建材が使われやすい場所

壁や天井が解体された室内で、取り外された層状の壁用成形ボードが床に大きく積み上げられている

建築物の種類によって、内外装に使われてきたアスベスト含有建材の傾向は異なります。一般住宅から共同住宅、公共施設、特殊建造物まで、傾向をつかんでおくと現地確認がスムーズになります。

一般住宅

平屋・2階建ての住宅でも、かつてはアスベストを含む建材が内外装に使用されていました。特にキッチンや水回りに使用されている可能性が高くなっています。

区分・部位主な含有建材
外装:壁石綿含有スレート波板、スレートボード、押出成形セメント板、窯業サイディング材
外装:外壁化粧吹き付け石綿含有蛭石・パーライト吹き付け
内装:室内壁石綿含有けい酸カルシウム板第1種、じゅらく壁
内装:浴室壁・厨房壁石綿含有スレートボード、けい酸カルシウム板第1種
内装:トイレ壁石綿含有スレートボード、けい酸カルシウム板第1種、スラグせっこう板、パルプセメント板

共同住宅

共同住宅では、耐火構造の間仕切壁など、一般住宅にはない部位にも含有建材が使われている点が特徴です。

区分・部位主な含有建材
耐火構造:耐火・遮音間仕切壁石綿含有けい酸カルシウム板第1種、押出成形セメント板
外装:壁石綿含有スレートボード、押出成形セメント板
外装:ベランダ隔壁石綿含有スレートボード、けい酸カルシウム板第1種、スラグせっこう板、パルプセメント板
外装:外壁化粧吹き付け石綿含有蛭石・パーライト吹き付け
外装:防音壁石綿含有押出成形セメント板
内装:室内壁・廊下壁吹き付け石綿、吹き付けロックウール、蛭石・パーライト吹き付け、スレートボード、けい酸カルシウム板第1種、スラグせっこう板、パルプセメント板
内装:間仕切壁石綿含有スレートボード、けい酸カルシウム板第1種、スラグせっこう板、押出成形セメント板、パルプセメント板
内装:トイレ壁石綿含有スレートボード、けい酸カルシウム板第1種、スラグせっこう板、パルプセメント板
内装:厨房壁・浴室壁吹き付け石綿、吹き付けロックウール、スレートボード、けい酸カルシウム板第1種、スラグせっこう板

学校・幼稚園・保育園・病院

人が多く集まる施設では、鉄骨などの耐火被覆材・防火材料として含有建材が使われています。内外装の壁に使われる建材の種類は、共同住宅とほぼ同じ傾向です。

区分・部位主な含有建材
耐火構造:耐火・遮音間仕切壁吹き付け石綿、吹き付けロックウール、けい酸カルシウム板第2種、けい酸カルシウム板第1種
外装:壁石綿含有蛭石・パーライト吹き付け、押出成形セメント板
外装:防音壁石綿含有スレートボード、押出成形セメント板
内装:室内壁蛭石・パーライト吹き付け、スレートボード、けい酸カルシウム板第1種、スラグせっこう板、パルプセメント板
内装:廊下壁蛭石・パーライト吹き付け、スレートボード、けい酸カルシウム板第1種、スラグせっこう板、押出成形セメント板、パルプセメント板
内装:間仕切壁蛭石・パーライト吹き付け、スレートボード、けい酸カルシウム板第1種、押出成形セメント板
内装:巾木石綿含有ソフト巾木
内装:厨房壁吹き付け石綿、吹き付けロックウール、スレートボード、けい酸カルシウム板第1種、スラグせっこう板、押出成形セメント板、パルプセメント板
内装:浴室壁吹き付け石綿、吹き付けロックウール、スレートボード、けい酸カルシウム板第1種

ビル・特殊建築物・工場(耐火構造の大規模建築物)

商用ビル、庁舎、劇場・映画館・デパートなどの特殊建築物、製造設備を備えた工場は、使用されている含有建材の傾向がほぼ共通しています。まとめて確認しておきましょう。

区分・部位主な含有建材
耐火構造:耐火・遮音間仕切壁けい酸カルシウム板第2種、けい酸カルシウム板第1種、押出成形セメント板
外装:壁蛭石・パーライト吹き付け、けい酸カルシウム板第1種、押出成形セメント板、窯業サイディング材
外装:防音壁石綿含有スレートボード、押出成形セメント板
内装:室内壁・廊下壁蛭石・パーライト吹き付け、スレートボード、けい酸カルシウム板第1種、スラグせっこう板、押出成形セメント板、パルプセメント板
内装:間仕切壁スレートボード、けい酸カルシウム板第1種、スラグせっこう板、押出成形セメント板、パルプセメント板
内装:巾木石綿含有ソフト巾木
内装:トイレ壁スレートボード、けい酸カルシウム板第1種、スラグせっこう板、押出成形セメント板、パルプセメント板
内装:厨房壁吹き付け石綿、吹き付けロックウール、スレートボード、けい酸カルシウム板第1種、スラグせっこう板、押出成形セメント板、パルプセメント板
内装:浴室壁吹き付け石綿、吹き付けロックウール、スレートボード、けい酸カルシウム板第1種

運輸関連建築物(駅舎・飛行場・トラックヤードなど)については、上表とほぼ同じ傾向に加えて、外壁・防音壁に石綿含有スレート波板が使われている例もあるため、あわせて確認してください。

立体駐車場・体育館

防音性・断熱性・耐火性に優れることから、立体駐車場や体育館にも含有建材が重宝されてきました。立体駐車場だけでなく、地下駐車場の天井や壁に吹き付けアスベストが使われている例も多いため、注意が必要です。

区分・部位主な含有建材
外装:立体駐車場外壁吹き付け石綿、吹き付けロックウール、スレート波板、スレートボード、けい酸カルシウム板第1種、押出成形セメント板
外装:体育館外壁石綿含有スレートボード、押出成形セメント板
内装:体育館内壁石綿含有スレートボード、けい酸カルシウム板第1種、スラグせっこう板、パルプセメント板

じゅらく壁・京壁にもアスベストは含まれている?

床の間と畳がある落ち着いた和室の全景。正面には土壁が見える

結論として、和室の壁に多く施工されてきた京壁やじゅらく壁などの仕上塗材、下地調整材にも、アスベストが含まれている場合があります。アスベストは建材だけの問題ではありません。建材のチェックだけで済ませてしまうと、この部分を見落としがちです。

仕上塗材・下地調整材のアスベストはどこで確認できる?

過去にアスベストが含まれていた仕上塗材・下地調整材の種類は、材料メーカーの団体である日本建築仕上材工業会(NSK)が公表しているデータで確認できます。ただし、これは会員企業へのアンケートを集計したものであり、すべての情報が網羅されているわけではありません。ここに載っていない製品からアスベストが検出されることもあるため、着工前の調査は欠かせません。

アスベストを含んでいた仕上塗材・下地調整材の一覧

分類製品名販売期間石綿含有量(%)
建築用仕上塗材薄塗材C(セメントリシン)1981〜1988年0.4
建築用仕上塗材薄塗材E(樹脂リシン)1979〜1987年0.1〜0.9
建築用仕上塗材外装薄塗材S(溶剤リシン)1976〜1988年0.9
建築用仕上塗材可とう形外装薄塗材E(弾性リシン)1973〜1993年1.5
建築用仕上塗材防水形外装薄塗材E(単層弾性)1979〜1988年0.1〜0.2
建築用仕上塗材内装薄塗材Si(シリカリシン)1978〜1987年0.1
建築用仕上塗材内装薄塗材E(じゅらく)1972〜1988年0.2〜0.9
建築用仕上塗材内装薄塗材W(京壁・じゅらく)1970〜1987年0.4〜0.9
建築用仕上塗材複層塗材CE(セメント系吹付けタイル)1973〜1999年0.1〜0.5
建築用仕上塗材複層塗材E(アクリル系吹付けタイル)1970〜1999年0.1〜5.0
建築用仕上塗材複層塗材Si(シリカ系吹付けタイル)1975〜1999年0.3〜1.0
建築用仕上塗材複層塗材RE(水系エポキシタイル)1970〜1999年0.1〜3.0
建築用仕上塗材複層塗材RS(溶剤系吹付けタイル)1976〜1988年0.1〜3.2
建築用仕上塗材防水形複層塗材E(複層弾性)1974〜1996年0.1〜4.6
建築用仕上塗材厚塗材C(セメントスタッコ)1975〜1999年0.1〜3.2
建築用仕上塗材厚塗材E(樹脂スタッコ)1975〜1988年0.1〜0.4
建築用仕上塗材軽量塗材(吹付けパーライト)1965〜1992年0.4〜24.4
建築用下地調整塗材下地調整塗材C(セメント系フィラー)1970〜2005年0.1〜6.2
建築用下地調整塗材下地調整塗材E(樹脂系フィラー)1982〜1987年0.5

外壁塗装工事でも仕上塗材の含有に注意

複層塗材(吹き付けタイル)は、窯業系サイディングなど外壁材の上に施工される仕上げ材としても使われてきました。外壁塗装工事の際は、下地の建材だけでなく、この仕上塗材そのものの含有可能性も確認しておく必要があります。

アスベスト含有建材・塗材はどうやって見分ける?

黄色いヘルメットと全面マスク、防護服を着用した専門業者が、塗膜の剥がれた壁面を手で触れながら状態を確認している

吹き付けアスベストの場合、表面の質感や繊維の露出、色、触感から推測できることもあります。ただし、似た見た目の建材や含有率の低い製品もあるため、目視だけでアスベスト建材を見分けるのは容易ではありません。確実に見分けるには、次の4つの方法を組み合わせる必要があります。

アスベストマークで確認する

アスベストを含む可能性がある建材には、「アスベスト含有」「注意:アスベスト」といった文字と警告シンボルが記載されたマークが表示されていることがあります。ただし、こうした表示制度は近年の製品が中心であり、古い建材にはマーク自体が存在しないケースも多いため、表示がないことをもって非含有と判断しないよう注意してください。断熱材などの製品では、ラベルや説明書にアスベストの有無が記載されている場合もあるため、保管している資料もあわせて確認しましょう。

建築時期で調べる

含有率0.1重量%を超える製品が使用禁止となった2006年9月1日より前の建築物には、アスベスト含有建材が使われている可能性があるため、事前調査が必須です。2006年9月1日以降に着工されたことが設計図などで確認できる建物については、法律上、目視による事前調査を省略できる扱いになっています。

設計図面で調べる

設計図書や図面の確認は、アスベスト含有建材の有無を見分けるうえで有効な手段です。壁の内部や天井裏など、直接目で確認できない部分まで把握でき、的確な対策につながります。ただし、建材名称には俗称が使われることも多く、図面と実物で名称が異なるケースもあるため、両者を照合する作業が欠かせません。

専門業者に依頼する

建築時期や設計図書から、ある程度は使用建材を類推できます。しかし、老朽化による劣化状態や建材の様子によっては目視だけでの判断が難しく、100%の安全は保証できません。作業員や周辺住民への健康被害リスクがある以上、専門業者に調査を依頼し、正確に見分けることが大切です。

建材によってアスベストの検出率はどれくらい違う?

アルフレッド株式会社が実施した延べ300,000検体の分析データを見ると、建材分類によってアスベストの検出率には大きな差があります。同じ「内装壁」「外装」に分類される建材でも、検出されやすいものとされにくいものがはっきり分かれます。ここでは、内装壁・外壁に関係する建材分類の検出率を抜粋して紹介します。

分類建材分類検出数不検出数検出率
外装スレート2,64927490.6%
外装ケイカル板2,1311,74355.0%
外装サイディング1,6753,13134.9%
内装ソフト巾木5951,24032.4%
外装外壁・内壁塗材8,08322,96126.0%
内装岩綿吸音板8853,32821.0%
内装バーミキュライト3312820.5%
外装タイル・下地4842,33717.2%
外装コンクリート・モルタル2201,34514.1%
内装シーリング・パテ3032,53710.7%
内装壁紙・クロス1872,1178.1%
内装じゅらく・繊維壁1962,9536.2%
内装石こうボード80018,9224.1%

※過去実施した壁材関連の一部分析データに基づく結果

このデータからは、実務に役立つ次のようなポイントが読み取れます。

  • スレートやケイカル板、外壁・内壁塗材のように検出率が高い建材は、含有を前提に慎重な計画を立てる価値がある。
  • 一方、石こうボードやじゅらく・繊維壁、壁紙・クロスのように検出率が低い建材まで一律に「含有あり」とみなして工事を進めると、本来不要なばく露防止措置や飛散・漏えい防止策に余計な費用がかかり、工期が延びる原因にもなる。
  • 検出率が低い建材であっても、有無をみなしで判断するのではなく、まず分析によって明確にしてから対応方針を決めることが、結果的に最もコストを抑えられる進め方といえる。

なお、検出率は施工環境や建築年代によっても変動するため、個別の建物ごとの最終判断は、現地調査や分析結果にもとづいて行ってください。

アスベストが見つかったときの対処法は?

透明なプラスチックシートで密閉され、「警告」の立入禁止テープが張られた工事現場

アスベスト建材の除去方法は、レベルに応じて異なります。

レベル除去作業の要点
レベル1養生シートで作業場所を隔離し、集じん装置で負圧を維持しながら慎重に除去する
レベル2湿潤化を徹底し、作業後は飛散防止剤を散布する
レベル3破砕や落下を避け、原型を保ったまま手作業(手ばらし)で除去する

いずれのレベルでも、適切な養生と飛散防止措置を徹底し、安全に処理することが基本です。

レベル1建材の除去作業

養生シートで作業場所を隔離し、集じん装置を設置して負圧に保つことで、飛散したアスベストが作業エリアの外へ漏れ出るのを防ぎながら除去します。改修工事などで除去そのものが難しい場合は、薬液で塗膜を形成する封じ込め工法や、板状の材料で密閉する囲い込み工法も選択肢になります。

レベル2建材の除去作業

掻き落とし・切断・破砕をともなう場合は、レベル1と同様の隔離工法が必要です。養生シートで作業場所を隔離し、集じん装置で負圧環境を維持することで飛散を防ぎます。掻き落としや破砕をともなわない配管保温材などの除去では、立入禁止措置と掲示、作業区域の飛散養生・散水のみで対応できる場合があり、隔離工法までは不要になることもあります。

レベル3建材の除去作業

建築物の高さ以上の防じんシート養生を設置し、散水によって建材を湿潤化させることが重要です。けい酸カルシウム板など飛散しやすい建材は、原型を保ったまま手作業で除去し、破砕や飛散を防ぎます。

塗材・下地調整材の除去作業

石綿障害予防規則にもとづき、塗材を含む壁面を穿孔する作業(足場の壁つなぎ設置など)では、石綿の飛散を防ぐための湿潤化措置が義務付けられています。仕上塗材や下地調整材は水を吸いにくいため、散水しながら作業を進め、除去中も湿潤な状態を保つことが求められます。なお、湿潤化に使った水にもアスベストが含まれている可能性があるため、適切な回収・処理が必要です。

内装壁・外壁のアスベストに関するよくある質問(FAQ)

経年劣化により表面の仕上塗材が細かくひび割れ剥離した壁面

アスベスト対応を進めるにあたって、現場や実務の中で判断に迷いやすいポイントをQ&A形式でまとめました。ご不明点の解消にお役立てください。

Q1. 外壁塗装の工事だけでも、アスベストの事前調査は必要ですか?

既存の外壁材や仕上塗材を大きく削らない塗装のみの工事であっても、下地の劣化状況によっては高圧洗浄や下地補修の段階でアスベストが飛散するおそれがあります。工事の規模や内容によっては事前調査の実施と結果の記録が求められるため、着工前に対象建材・塗材の有無の確認が必要です。

Q2. ALC外壁にもアスベストの心配はありますか?

ALC(軽量気泡コンクリート)パネルの主成分はセメント・けい酸質原料・生石灰で、一般的にアスベストは含まれていません。ただし、パネルの目地シーリング材や、上から施工された仕上塗材にアスベストが使われている例はあります。ALC外壁だからといって調査を省略してよいわけではありません。

Q3. 外壁タイルの目地や下地にもアスベストは使われていますか?

タイル本体にアスベストが含まれる例は多くありませんが、タイルを固定する下地モルタルや、複層塗材(吹き付けタイル)の仕上げ材にアスベストが使われている場合があります。タイルの張り替えや下地補修を行う工事では、下地部分まで含めた確認が必要です。

Q4. 内装のクロス張り替えなど、軽微なリフォームでも調査は必要ですか?

クロスの張り替え自体は下地を大きく傷めない工事ですが、下地に石膏ボードやけい酸カルシウム板を使用している場合、下地補修や壁の一部撤去をともなう工程で含有建材に触れる可能性があります。工事内容を確認したうえで、下地に触れる作業があれば事前調査の要否を判断してください。

Q5. アスベストの除去・改修費用に、自治体の補助金は使えますか?

自治体によっては、アスベスト含有建材の調査・除去・改修工事を対象とした補助金制度を設けています。対象となる建材や工事内容、補助率・上限額は自治体ごとに異なるため、着工前に所在地の自治体窓口で確認が必要です。補助金の仕組みや申請の流れは、当社の別記事「【2026年最新】アスベスト補助金はいくら?対象工事と申請方法」もあわせてご覧ください。

壁のアスベストは建材だけで判断せず、仕上塗材まで含めて確認する

壁のアスベストは、建材の種類だけで判断できません。スレートボードやけい酸カルシウム板といった硬質な建材に加え、じゅらく壁や京壁などの仕上塗材、下地調整材まで確認対象に含まれます。

建築年代や建物用途は手がかりになるものの、非含有の断定には不十分です。設計図書や仕上塗材のデータと照合し、判断が難しい建材・塗材は分析調査で確認しましょう。

アルフレッドでは、調査費用を極力抑えながらも、スピーディーで高精度なアスベスト分析を実施。安定して土曜日を含む3営業日以内の短納期で分析結果をお出しいたします。また、分析者や機器情報など詳細が記載される行政向け報告書の作成など、面倒な作業もお任せください。

【参考文献】
厚生労働省:「石綿総合情報ポータルサイト(改正石綿則のポイント)」
厚生労働省:「石綿則に基づく事前調査のアスベスト分析マニュアル【第2版】」
国土交通省:「目で見るアスベスト建材(第2版)」
国土交通省・経済産業省:「石綿(アスベスト)含有建材データベース」
環境省:「特定建築材料以外の石綿含有建材(レベル3建材)除去等作業マニュアル」
環境省:「石綿含有建築材料の使用実態」
日本建築仕上材工業会:「アスベスト含有仕上塗材情報」

監修者:三井伸悟

1980年静岡県浜松市生まれ。2003年に東海大学海洋学部水産資源開発学科を卒業後、2004年に日本総研株式会社へ入社し、分析・環境分野でのキャリアをスタート。2011年には同社の原子力災害対策本部長に就任。その後、世界最大の分析会社グループEurofins傘下の日本法人にて要職を歴任。2017年にユーロフィン日本総研株式会社、2018年にはEurofins Food & Product Testingの代表取締役社長に就任。さらに、埼玉環境サービス株式会社取締役、ユーロフィン日本環境株式会社の東日本環境事業及び環境ラボ事業の部長も経験。2021年にアルフレッド株式会社を創業し、代表を務める。特定建築物石綿含有建材調査者、環境計量士(濃度)、作業環境測定士(第一種)、公害防止管理者(水質一種)の資格を保有し、20年以上にわたる環境・分析分野での豊富な実務経験と専門知識を活かし、持続可能な環境構築に貢献。

 
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