蛇紋岩にアスベストは含まれる?リスク確認・飛散防止・労災認定を解説

アスベストは、「吹付け材」や「建材」に含まれる人工物だけでなく、自然界の岩石である蛇紋岩(じゃもんがん)にも天然由来で含まれる場合があります。実際、労災認定に至った事例もあり、造園業や土木工事の現場など、蛇紋岩を扱う現場でも注意が必要です。
本記事では、蛇紋岩に含まれるアスベストの特性から、現場で徹底すべき飛散防止対策、そして万が一健康被害が生じた際の労災認定のポイントまでを詳しく解説します。事前確認と適切な飛散防止措置を進めるための参考としてご活用ください。
【本記事の要約】
・蛇紋岩はクリソタイル等を含む場合があり、加工・破砕時にアスベストばく露リスクが生じる
・破砕、切断、研磨、掘削など粉じんが発生する作業では、アスベスト繊維の飛散防止策が求められる
・事前の地質確認や試料分析、湿潤化、保護具着用を徹底することが、健康被害や労災リスクの低減に直結する
- 1. アスベストを含む可能性がある蛇紋岩とは
- 1.1. 蛇紋岩の特徴
- 1.2. 広く使用されてきた代表的なアスベスト「クリソタイル」
- 1.3. 自然由来で問題になることがある角閃石系アスベスト 「トレモライト 」
- 1.4. クリソタイルとトレモライトの違い
- 2. 蛇紋岩の破砕・切断でアスベスト繊維が飛散するリスク
- 2.1. 現場で特に注意すべきリスク
- 3. 蛇紋岩を扱う現場で必要な対策とは
- 3.1. 1. 事前の地質確認と分析
- 3.2. 2. 作業時の湿潤化(散水)
- 3.3. 3. 適切な保護具の着用
- 3.4. 4. 運搬・保管時の飛散防止
- 4. 蛇紋岩によるアスベストばく露は労災認定の対象
- 4.1. 労災認定の判断で重視されるポイント
- 4.2. 労災認定された事例
- 4.2.1. 【3つのポイント】
- 5. 蛇紋岩とアスベストについて、よくある質問(FAQ)
- 6. アスベスト事前調査でばく露リスクと労災を未然に防ぐ
- 6.1.1.1. 蛇紋岩のアスベスト含有分析はアルフレッドへ
アスベストを含む可能性がある蛇紋岩とは

蛇紋岩は変成岩の一種で、クリソタイルやトレモライトなどのアスベストを含む可能性がある岩石です。庭石や路盤材、肥料原料などに使われることもあり、破砕や切断、研磨、掘削などの工程を伴う場合は、自然石であってもアスベストとの関係を無視できません。
蛇紋岩の特徴
蛇紋岩は、その名の通り、表面に蛇の皮のような模様が見られることがあり、暗緑色から黒色を帯びるものが多い岩石です。石材として流通することもありますが、見た目だけで安全性を判断することはできません。
| 項目 | 特徴・詳細 |
| 主成分 | マグネシウム、ケイ素、水を含む蛇紋石鉱物 |
| 外観 | 暗緑色〜黒色。表面に脂肪光沢があり、亀裂が多いものもある |
| 含有アスベスト | クリソタイル(白石綿)やトレモライトなどを含む場合があり、白い脈状として見られることもある |
| 主な用途 | 庭石、肥料(苦土肥料)、高炉のフラックス、過去には路盤材 |
広く使用されてきた代表的なアスベスト「クリソタイル」
クリソタイルは、蛇紋石族に属するアスベストの一種で、広く使用されてきた代表的な鉱物です。しなやかな繊維状の形を持ち、耐熱性、絶縁性、耐薬品性に優れることから、過去には建材やブレーキ材などにも使われてきました。
一方で、長期にわたって吸入すると、肺がん、中皮腫、石綿肺などの健康被害を引き起こすことが知られています。見た目は柔らかくても、安全性が高いわけではありません。
自然由来で問題になることがある角閃石系アスベスト 「トレモライト 」
トレモライトは、角閃石系に分類されるアスベストの一種です。蛇紋岩では、クリソタイルほど一般的ではないものの、天然鉱物中に含まれる場合があり、自然由来アスベストの文脈で注意が必要になることがあります。
繊維はクリソタイルよりも硬く、針状に近い形を持つのが特徴です。蛇紋岩やその周辺の岩石を破砕、切断、研磨する作業では、こうした角閃石系アスベストの飛散リスクも踏まえて対応する必要があります。
クリソタイルとトレモライトの違い
蛇紋岩に関係するアスベストを理解するうえでは、クリソタイルとトレモライト等の違いも押さえておくと役立ちます。
| 比較項目 | クリソタイル(白石綿) | 角閃石系(トレモライトなど) |
| 結晶構造 | 蛇紋石系(巻物状) | 角閃石系(鎖状) |
| 繊維の形状 | 柔軟でしなやか | 硬く針状に近い |
| 主な用途 | 建材、ブレーキ、スレート板など | 工業的な大量使用の実績はなく、他のアスベスト製品への不純物として含まれることがあった |
| 蛇紋岩との関係 | 蛇紋石族に属し、蛇紋岩中に存在しうる | クリソタイルほど一般的ではないが、天然鉱物中で問題になる場合がある |
蛇紋岩の破砕・切断でアスベスト繊維が飛散するリスク

蛇紋岩そのものが直ちに危険というわけではありません。問題になるのは、破砕、切断、研磨、掘削などによって粉じんが発生し、その中にアスベスト繊維が含まれるおそれがある点です。自然石であっても、加工や破壊を伴う作業では十分な注意が必要になります。
現場で特に注意すべきリスク
蛇紋岩を扱う現場では、単に「石を扱う作業」と考えず、粉じんの発生状況まで含めてリスクを把握することが重要です。特に注意したいのは、次のような点です。
- リスクの未認知:蛇紋岩は「自然の石」であるため、人工建材のような警戒感が持たれにくく、無防備に作業をしてしまうケースが多く見られます。しかし、厚生労働省は、蛇紋岩の取扱い作業における石綿粉じんについて留意点を示しています 。
- 掘削や破砕に伴う粉じん発生:蛇紋岩を掘削、破砕する場面では、継続的な粉じん対策が欠かせません。現場内での飛散だけでなく、作業者の吸入や周辺への拡散も含めて考える必要があります。
蛇紋岩を扱う現場で必要な対策とは

厚生労働省は、蛇紋岩の破砕・切断でアスベスト繊維が飛散するリスクや粉砕、裁断、研磨などでアスベスト粉じんが発散する場合があるとして注意喚起しています。蛇紋岩を扱う作業では、少なくとも粉じん障害防止規則に基づく対策を講じ、飛散防止とばく露防止を徹底することが重要です。
1. 事前の地質確認と分析
工事区域が蛇紋岩の分布地帯に含まれるかどうかを、地質図や既存資料で確認しておくことが大切です。疑わしい場合は、事前にアスベスト含有の分析や鉱物鑑定を検討する必要があります。蛇紋岩は見た目だけで安全性を判断しにくいことを留意してください。
2. 作業時の湿潤化(散水)
掘削、破砕、積み込みなど粉じんが出やすい工程では、常時散水を行い、粉じんの発生を抑えることが重要です。湿潤化は飛散防止の基本対策であり、局所的な対応ではなく、工程全体を通じて管理する必要があります。
3. 適切な保護具の着用
屋外作業であっても、蛇紋岩を加工、破砕、掘削する場面では防じん対策が欠かせません。作業内容に応じた防じんマスクや保護具を適切に選び、隙間なく着用することが重要です。自然石を扱う作業であっても、粉じんばく露の可能性がある以上、作業前の確認と飛散防止措置の徹底が求められます。
4. 運搬・保管時の飛散防止
土砂や破砕物を運搬する際は、車両の荷台をシートで覆うなど、飛散防止措置を講じる必要があります。現場内の管理だけでなく、現場外への拡散防止まで視野に入れることが大切です。仮置き時にも、周辺への飛散が起きないよう管理しておく必要があります。
蛇紋岩によるアスベストばく露は労災認定の対象

業務中に蛇紋岩を加工、破砕、研磨、掘削する作業に従事し、その結果として肺がんや中皮腫などを発症した場合、業務起因性が認められれば労災認定の対象となります。厚労省の労災認定資料でも、石綿による疾病は、ばく露歴や医学的所見などを踏まえて認定されると整理されています。
労災認定の判断で重視されるポイント
労災認定では、単に病名が付いているだけで決まるわけではありません。主に次のような点が判断材料になります。
- アスベストばく露の事実:当時扱っていた蛇紋岩からアスベストが検出されるか、または同じ地層や同様の岩石を長期間扱っていた事実があるかどうかが重視されます。どのような石材を、どの程度の期間扱っていたかを整理することが重要です。
- 作業実態:切断、破砕、研磨、掘削など、粉じんが発生しやすい作業を継続的に行っていたかがポイントです。どの現場で、どのような工程に従事していたかを具体的に整理しておく必要があります。
- 医学的所見:中皮腫、肺がん、石綿肺などの診断内容に加え、画像所見や病理所見、アスベスト小体の確認など、ばく露を裏づける医学的資料が重視されます。中でも中皮腫は、病理組織検査結果などを総合して判定されるのが特徴です。
労災認定された事例
2017年12月、長年「庭石」として蛇紋岩を扱ってきた造園業の男性が、肺がんを発症して労災認定を受けたことが報じられました。自然石を扱う作業であっても、加工の仕方しだいでばく露リスクが生じる可能性を示す事例といえます。
【3つのポイント】
①「天然石」という死角: 男性はアスベスト製品を扱った自覚はありませんでしたが、仕事で扱っていた庭石(蛇紋岩)を電動工具で切断、研磨する際に発生した粉じんを吸い込んでいました。
②高濃度のばく露: 蛇紋岩を乾燥した状態で切断・研磨すると、多量の粉じんが発生し、石綿ばく露につながるおそれがあります。自然石であっても、加工方法によっては深刻な健康リスクを招く点に注意が必要です。
③職種による認識の差: 建設・解体業界ではアスベストへの警戒が進んでいましたが、この認定は「造園業」という、一見アスベストとは無縁に思える職種でも深刻なリスクがあることを世に知らしめる結果となりました。
【参考文献】
毎日新聞:「蛇紋岩」庭石加工で肺がん
蛇紋岩とアスベストについて、よくある質問(FAQ)

アスベスト事前調査でばく露リスクと労災を未然に防ぐ
蛇紋岩は庭石や石材、土木工事などで身近に扱われる一方、アスベストを含む場合があり、取扱い方によってはアスベストばく露のリスクを伴います。特に破砕や切断、研磨、掘削など粉じんが発生する作業では、自然石であっても十分な注意が必要です。労災認定事例があることからも、「天然物だから安全」とは言い切れず、事前の確認と現場での対策が重要だといえるでしょう。
こうしたリスクを未然に防ぐには、工事前や加工前の段階で、対象となる石材や地質の性質を正しく把握しておくことが欠かせません。見た目だけで判断せず、必要に応じて分析や鑑定を行い、湿潤化や保護具の着用、運搬時の飛散防止などを徹底することが、作業者や周辺環境を守るうえで重要になります。
蛇紋岩のアスベスト含有分析はアルフレッドへ
費用を抑えながら土曜日を含む3営業日以内の短納期で分析結果を提供可能です。また、分析者や機器情報といった詳細が記載される行政向け報告書の作成など、現場担当者の負担を最小化します。蛇紋岩の取扱い作業を予定している場合は、作業開始前にお気軽にご相談ください。
【参考文献】
厚生労働省:「天然鉱物中の石綿含有率の分析方法について(基発0331001号)」
厚生労働省:「蛇紋岩等の取扱い作業における石綿粉じん等に関する留意点」
厚生労働省・東京労働局:「石綿による疾病の労災認定」
環境省:「アスベスト(石綿)に関する基礎知識」
岩手産業保健総合支援センター:「天然のアスベスト(石綿)についても、健康被害や労災認定の対象となります」
長崎県土木部:「トンネル工事における自然由来アスベストへの対応」

1980年静岡県浜松市生まれ。2003年に東海大学海洋学部水産資源開発学科を卒業後、2004年に日本総研株式会社へ入社し、分析・環境分野でのキャリアをスタート。2011年には同社の原子力災害対策本部長に就任。その後、世界最大の分析会社グループEurofins傘下の日本法人にて要職を歴任。2017年にユーロフィン日本総研株式会社、2018年にはEurofins Food & Product Testingの代表取締役社長に就任。さらに、埼玉環境サービス株式会社取締役、ユーロフィン日本環境株式会社の東日本環境事業及び環境ラボ事業の部長も経験。2021年にアルフレッド株式会社を創業し、代表を務める。特定建築物石綿含有建材調査者、環境計量士(濃度)、作業環境測定士(第一種)、公害防止管理者(水質一種)の資格を保有し、20年以上にわたる環境・分析分野での豊富な実務経験と専門知識を活かし、持続可能な環境構築に貢献。
お役に立ちましたら、ぜひ関係者様にシェアをお願いします
関連記事





