アスベストの種類とは?6種の特徴と健康リスクを解説

繊維状のアスベスト(石綿)の拡大写真。6種類のうち、クリソタイル(白石綿)などが持つ特徴的な、細く柔軟な繊維の束の構造を示唆している

アスベストは「石綿」とも呼ばれ、建築物の解体・改修工事で注意すべき物質です。一口にアスベストといっても単一の物質ではなく、クリソタイル、アモサイト、クロシドライトなど6種類に分類されます。

種類によって、繊維の形状や使われてきた建材、確認されやすい部位はさまざまです。そのため、アスベスト対策を正しく進めるには、「含有の有無」だけでなく、「どの種類が、どの建材で問題になりやすいのか」まで理解しておく必要があります。

本記事では、アスベスト6種類の特徴、建材での使われ方、健康リスクの考え方、レベル分類との違いを整理します。アスベストへの解像度を高め、解体・改修前の事前調査や分析調査に役立つ基礎知識としてご活用ください。

【本記事の要約】
・アスベストは6種類に分類され、建材ではクリソタイル、アモサイト、クロシドライトが多く使われてきた
・すべての種類に健康リスクがあり、種類によって用途や確認されやすい建材が異なる
・見た目や建材名だけでは判別できず、確実な確認には分析調査が必要となる

目次

アスベストの種類は、全部でいくつあるのか?

研究室で白い手袋を着用した人物が、採取されたアスベスト(石綿)含有建材の粉末試料を試験管で扱っている

アスベストは、蛇紋石族のクリソタイル1種と、角閃石族のアモサイト・クロシドライトなど5種を合わせた計6種類に分類され、分析調査を行う際は、この6種類すべてを対象に確認します。

アスベスト6種類の一覧表

種類名通称系統色の目安主な用途・検出例
クリソタイル白石綿蛇紋石族白〜淡い灰色スレート板、成形板、保温材、断熱材、摩擦材など
アモサイト茶石綿角閃石族茶色〜灰色保温材、断熱材、耐火被覆材など
クロシドライト青石綿角閃石族青みがかった色吹付け材、石綿セメント管、防火材、耐酸性材料など
トレモライト角閃石族白〜灰色吹付け材の一部、不純物として検出されることがある
アクチノライト角閃石族緑色天然鉱物由来の不純物として検出されることがある
アンソフィライト角閃石族灰色〜緑がかった色他の石綿やタルク、蛭石などの不純物として検出されることがある
【注意】

色や見た目は、あくまで参考情報です。経年劣化や塗装、混合材、表面仕上げによって外観は変わります。アスベストの有無や種類を確実に判別するには、専門機関による分析調査が必要です。

建材で多用された3種類と、その他3種類の違い

6種類のアスベストは、過去の「使われ方の背景」や「規制された経緯」によって、実務上2つのグループに大別されます。

◆主要3種類(意図的に大量使用された石綿)

対象:クリソタイル、アモサイト、クロシドライト

特徴:工業製品や建築資材の性能を高める目的で、意図的に大量使用・配合されてきた主な3種類です。

◆その他3種類(不純物として混入した石綿)

対象:トレモライト、アクチノライト、アンソフィライト

特徴:商業的な利用は限られていましたが、タルクなどの天然鉱物に「不純物」として含まれる場合があり、見落としに注意が必要です。

過去の分析では、国内で主に使われていたクリソタイル、アモサイト、クロシドライトの3種類を中心に確認していました。現在、分析調査を行う場合は、トレモライト、アクチノライト、アンソフィライトを含む6種類すべてを対象にします。

蛇紋石族と角閃石族の違い

アスベストは、結晶構造や化学組成の違いから学術的に「蛇紋石(じゃもんせき)族」と「角閃石(かくせんせき)族」という2つのグループに分類されます。

蛇紋石族(クリソタイルが該当):繊維がしなやかで柔軟性があり、紡織性に優れているのが特徴です。

角閃石族(他5種が該当):針状の結晶構造を持ち、硬くて折れやすく、耐酸性や耐熱性が非常に高い性質があります。

実務においては、どちらのグループであっても「すべて規制対象の有害物質」であることに変わりはありません。しかし、角閃石族は針状の結晶構造を持ち、生体内に残留しやすいとされます。

アスベストの種類によって、有害性や健康への影響はどう違うのか?

WHOの専門機関である国際がん研究機関(IARC)では、アスベスト全6種類が「グループ1(ヒトに対して発がん性がある)」に分類されています。一方で、繊維の形状や生体内での残留性は種類ごとに異なるため、リスク評価ではそれぞれの性質を踏まえた確認が欠かせません。

種類別の性質と健康リスクの考え方

アスベストは6種類すべてに発がん性が認められますが、繊維の形状や性質によって有害性の度合いは異なります。特に針状の結晶構造を持つ種類は肺に沈着しやすく生体内でも分解されにくいため、それぞれの特徴に応じた相対的な危険性を把握することが大切です。

アスベストの種類有害性・発がん性の相対的な比較とメカニズム
クロシドライト(青石綿)【極めて高い】 繊維が非常に細く針状で硬いため、肺の奥深くまで到達・沈着しやすく、生体内での溶解度も低いため最も危険視されています。
アモサイト(茶石綿)【高い】 クロシドライトに次ぐ有害性を持つとされ、針状の繊維が肺組織を刺激し、深刻な疾病を引き起こすリスクが高いです。
クリソタイル(白石綿)【高い】 角閃石族に比べて生体内での残留性が低いとされる一方、大量かつ長期に吸入すれば同様に重大な発がん性を示します。
その他3種(角閃石系)【高い】 トレモライト等も角閃石族特有の針状結晶構造を持つため、肺に沈着しやすく、主要3種と同等の警戒が必要です。

アスベストによって引き起こされる主な疾病

アスベストを吸入した場合、数十年の長い潜伏期間を経て重篤な健康被害を引き起こすリスクが高まります。吸入した全員が必ず発症するわけではありませんが、過去の吸入量(ばく露量)や期間に応じて発症の危険性が上昇することが確認されています。

疾病名アスベストとの関連性と病態の概要
石綿肺(いしわたはい)長期間にわたり大量のアスベストを吸入することで、肺が線維化(硬化)して呼吸機能が低下する塵肺の一種です。
肺がん気管支や肺胞に発生する悪性腫瘍です。アスベストの吸入量に比例してリスクが高まるほか、喫煙習慣との相乗効果によって発症リスクが大きく高まることが分かっています。
悪性中皮腫肺を取り囲む胸膜や腹膜などに発生する悪性腫瘍です。極めて稀な病気ですが、発症例の多くに過去のアスベスト吸入歴が認められるため、因果関係が特に強い疾患とされています。
びまん性胸膜肥厚アスベスト粉じんなどの刺激によって胸膜が慢性的な炎症を起こし、全体的に厚くなる病態です(※アスベスト以外の肺疾患や結核性胸膜炎などが原因で発症することもあります)。
良性石綿胸水アスベスト繊維が胸膜を刺激することなどで、胸腔内に浸出液(胸水)が貯留する状態です。良性とされますが、他の原因による胸水や中皮腫の初期症状との正確な識別診断が必要となります。
「クリソタイルは安全」という誤解への注意

「クリソタイル(白石綿)は角閃石系に比べて発がん性のリスクが低い」という過去のデータから、「白石綿なら比較的安全」「簡易な防護で足りる」といった誤解(リスクの過小評価)が現場で発生することがあります。

有害性には相対的な違いがあるものの、IARCではすべてのアスベストが「ヒトに対して発がん性がある」物質に分類されており、安全なアスベストは存在しません。

アスベストの種類はどう確認するのか?

古いスレート屋根材の表面を虫眼鏡で拡大して観察している

アスベストの種類は、写真や色、建材名だけでは正確に見分けられません。クリソタイル、アモサイト、クロシドライトなどの種類を確認するには、書面調査・目視調査で対象建材を整理し、必要に応じて分析調査を行う必要があります。

写真や見た目だけでは判定できない

クリソタイル、アモサイト、クロシドライトには、それぞれ「白石綿」「茶石綿」「青石綿」という通称があります。ただし、これは種類を示す呼び方であり、現場で色を見れば判別できるという意味ではありません。

実際の建材では、以下のような理由から外観だけでの判断が難しくなります。

  • アスベストが建材の内部に練り込まれている
  • 表面が塗装や仕上げ材で覆われている
  • 経年劣化や汚れで色や質感が変わっている
  • 同じ建材名でも、含有品と非含有品がある
  • 改修履歴により、当初とは別の建材に変わっている
  • 複数種類のアスベストが混在している場合がある

そのため、写真や目視確認はあくまで調査記録として活用し、種類の判定は分析結果に基づいて行います。

建材名や施工年代だけでは断定できない

同じ建材名でも、製造時期やメーカー、品番によって含有の有無や検出種類が異なるため、建材名や施工年代だけでアスベストの種類は断定できません。また、改修や重ね張りによって、図面と現地の建材が一致しないケースもあるので注意が必要です。建材名や年代は参考情報にとどめ、最終的な種類判定は分析調査で行いましょう。

分析調査で確認できること

分析調査では、対象建材にアスベストが含まれているかどうかを調べ、含有が認められた場合は、報告書で検出種類と、分析方法に応じた含有率を確認できます。

【分析調査で確認できる主な項目】

  • アスベスト含有の有無
  • 含有率
  • 検出されたアスベストの種類
  • 採取した建材の情報
  • 分析方法
  • 報告書としての根拠

ここで重要なのは、「含有あり・なし」だけで終わらせないことです。同じ建材から複数種類のアスベストが検出される場合もあるため、報告書では種類名まで確認しましょう。

分析報告書ではどこを確認するのか?

分析報告書を見る際は、アスベストの有無だけでなく、検出された種類、含有率、採取箇所、対象建材を確認します。古い報告書を利用する場合は、今回の工事範囲と一致しているかも重要な確認点です。

確認項目見るべき内容注意点
検出種類クリソタイル、アモサイト、クロシドライトなど6種類のうち何が検出されたか確認する
含有率0.1%超かどうか規制対象に該当するかの判断材料になる
採取箇所どの部位から採取したか今回の工事範囲と一致しているか確認する
対象建材どの建材を分析したか図面上の建材名と現地の建材が一致するとは限らない
分析方法定性分析・定量分析など報告書の用途に応じて確認する

分析結果は、アスベストの種類を把握するための根拠になります。ただし、現場対応は種類名だけで決まるものではありません。建材のレベル分類、劣化状態、発じん性、作業方法まで含めて判断する必要があります。

アスベストの種類についてよくある質問(FAQ)

防護服とマスクを着用した作業員が、住宅の屋根でアスベスト(石綿)調査のための検体採取を行っている

アスベストの種類について、実務で判断に迷いやすいポイントをQ&A形式でまとめました。古い分析報告書の扱い、複数種類の混在、分析費用、小規模工事での調査など、現場対応で確認したい点を整理します。

Q1. 古い分析報告書があれば、そのまま使えますか?

A. 報告書の内容によって判断が変わります。古い分析報告書を使う場合は、現在の工事判断に必要な情報がそろっているかを確認してください。確認したい項目は、以下のとおりです。

  • 分析対象の種類
  • 含有率の判定基準
  • 採取箇所
  • 対象建材
  • 分析方法
  • 今回の工事範囲との一致

2008年以前の分析報告書では、トレモライト、アクチノライト、アンソフィライトが分析対象に含まれていない場合があります。現在の工事判断に使う場合は、6種類すべてを対象にした報告書か確認しましょう。

過去の報告書で「アスベストなし」とされていても、採取箇所や対象建材が今回の工事範囲と異なる場合、そのまま判断根拠にはできません。情報が不足している場合は、再調査や再分析を検討します。

Q2. 同じ建材に複数種類のアスベストが含まれることはありますか?

A. 吹付け材や複合建材では、複数種類のアスベストが検出される場合があります。分析報告書では、「含有あり・なし」だけでなく、検出された種類まで確認しましょう。複数種類が含まれていても、現場対応は種類名だけでは決まりません。建材のレベル、発じん性、劣化状態、作業方法を踏まえ、必要な飛散防止措置を検討します。

Q3. アスベストの種類によって分析費用は変わりますか?

A. 分析費用は、種類そのものよりも、検体数や分析方法、納期によって変わるのが一般的です。費用に影響しやすい要素は、以下のとおりです。

  • 分析する検体数
  • 定性分析か定量分析か
  • 通常納期か短納期か
  • 採取作業の有無
  • 報告書に必要な記載内容
  • 現地調査を含むかどうか

「どの種類が出るか」よりも、「何検体を、どの方法で、いつまでに分析するか」が費用に関わります。工事スケジュールが決まっている場合は、早めの相談が安心です。

Q4. 小規模な改修工事でもアスベスト調査は必要ですか?

A. 解体・改修工事では、規模にかかわらず事前調査が必要です。小規模工事だからといって、アスベスト調査を省略できるわけではありません。一方、事前調査結果の報告が必要かどうかは、工事の規模や内容によって変わります。

  • 事前調査:原則として解体・改修工事で必要
  • 結果報告:一定規模以上の工事で必要
  • 分析調査:書面調査・目視調査で判断できない場合に実施
  • みなし含有:分析を行わず「石綿有」とみなして必要な措置を講じる方法

天井材、床材、壁材、配管まわりなどに疑わしい建材がある場合は、事前調査の段階で確認しておきましょう。

Q5. アスベスト含有の有無や建材区分が分からないまま撤去すると、何が問題になりますか?

A. アスベスト含有建材を通常の建材として撤去すると、作業中に粉じんが発生し、作業者や周辺環境へのばく露につながるおそれがあります。種類や含有の有無が分からないまま工事を進めると、以下のような問題が起こりやすくなります。

  • 必要な飛散防止措置を講じられない
  • 適切な保護具や作業方法を選べない
  • 届出や報告の判断を誤る
  • 廃棄物区分を間違える
  • 工事途中で追加調査が必要になる
  • 工期や費用が増える

重要なのは、種類名だけを特定することではありません。含有の有無、建材の状態、発じん性、作業方法まで含めて、工事前に判断材料をそろえることです。

見た目で判断せず、分析結果に基づいてアスベストの種類を確認する

アスベストの種類を理解していても、解体・改修現場では、建材の劣化や改修履歴によって判断が難しくなることがあります。色や建材名、施工年代だけで決めつけず、対象建材を一つずつ確認することが大切です。

判断に迷う建材がある場合は、現場判断で撤去・破砕を進めず、分析調査で確認するか、「石綿有」とみなして必要な措置を講じましょう。根拠を残しておくことで、手戻りや法令違反の防止につながります。

アルフレッドでは、調査費用を極力抑えながらも、スピーディーで高精度なアスベスト分析を実施。安定して土曜日を含む3営業日以内の短納期で分析結果をお出しいたします。また、分析者や機器情報など詳細が記載される行政向け報告書の作成など、面倒な作業もお任せください。

【参考文献】
厚生労働省:「石綿総合情報ポータルサイト」
厚生労働省:「アスベスト(石綿)に関するQ&A」
厚生労働省:「鉱物及び石綿含有材料等に関する基礎的な知識」
厚生労働省:「石綿等の使用の有無の分析調査の徹底等について」
厚生労働省:「石綿則に基づく事前調査のアスベスト分析マニュアル【第2版】」
環境省・厚生労働省:「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」
環境省:「石綿含有廃棄物等処理マニュアル(第3版)」

監修者:三井伸悟

1980年静岡県浜松市生まれ。2003年に東海大学海洋学部水産資源開発学科を卒業後、2004年に日本総研株式会社へ入社し、分析・環境分野でのキャリアをスタート。2011年には同社の原子力災害対策本部長に就任。その後、世界最大の分析会社グループEurofins傘下の日本法人にて要職を歴任。2017年にユーロフィン日本総研株式会社、2018年にはEurofins Food & Product Testingの代表取締役社長に就任。さらに、埼玉環境サービス株式会社取締役、ユーロフィン日本環境株式会社の東日本環境事業及び環境ラボ事業の部長も経験。2021年にアルフレッド株式会社を創業し、代表を務める。特定建築物石綿含有建材調査者、環境計量士(濃度)、作業環境測定士(第一種)、公害防止管理者(水質一種)の資格を保有し、20年以上にわたる環境・分析分野での豊富な実務経験と専門知識を活かし、持続可能な環境構築に貢献。

 
お役に立ちましたら、ぜひ関係者様にシェアをお願いします


関連記事

コラム
住宅模型をルーペで覗く作業服の男性
アスベスト調査の費用相場は?調査種類・工事規模別の目安と補助金制度を徹底解説
Read more
コラム
アスベストをベースとした材料
アスベストの危険性とは?見落としやすいリスクと安全対策の要点
Read more
コラム
老朽化し、アスベスト粉塵が環境中に飛散している危険な屋根から、アスベストを除去します
アスベスト調査の進め方と注意点を徹底解説
Read more