グラスウールとアスベストの違い|見分け方・含有・年代を解説

木造住宅の壁面や屋根裏に断熱材や保温ダクトが施工されている施工現場の様子

グラスウールは、アスベストに代わる断熱材・吸音材の一つとして広く使われていますが、見た目が似ているため、解体・改修現場では混同されることも少なくありません。両者は原料や構造、そして健康への影響において、まったく異なる素材です。

古い建物ほど、断熱材がグラスウールかアスベスト含有材かの判断が難しくなり、誤った取り扱いは健康被害や法令違反につながるおそれがあります。本記事では、グラスウールとアスベストの違い、見分け方、含有の可能性、疑わしい断熱材を見つけた際の対応手順を解説します。現場での誤判断を防ぎ、安全かつ法令に沿って工事を進めるための参考にしてください。

【本記事の要約】
・グラスウールは人造繊維、アスベストは天然鉱物繊維で性質が異なる
・一般的なグラスウール製品自体にアスベストは含まれないが、古い建物では周辺建材との混在に注意が必要
・見た目や年代だけでは判別できず、確実な判別には分析調査が必要となる

【本記事の要約動画/音声コンテンツ】

目次


グラスウールとアスベストの違いとは?

建物の天井裏にある金属デッキプレートと梁の表面に、グレーの吹付け材が施工されている

グラスウールはガラス原料を用いた人造繊維、アスベストは天然鉱物繊維です。見た目が似る場合はありますが、繊維の構造や体内での挙動、発がん性の評価は大きく異なります。

原料・製造方法の違い

グラスウールは、ガラス瓶や板ガラスなどのリサイクルガラスを主原料として製造される人造繊維です。高温で溶かしたガラスを遠心力などで繊維状にし、断熱材や吸音材として使いやすい形に加工します。

アスベストは、蛇紋石系や角閃石系の天然鉱物が繊維状になったものです。天然に産出する鉱物を採掘し、繊維として取り出して利用していました。耐熱性、耐薬品性、摩擦への強さなどから、過去には建築物や設備まわりの幅広い部位で使われてきました。

繊維の太さ・構造の違い

グラスウールの繊維は、一般的にアスベストより太く、折れても細く裂けにくい性質があります。短繊維のグラスウールでは、皮膚に触れた際にチクチクした刺激を感じることがありますが、これは物理的な刺激によるものです。

アスベストは非常に細い繊維の束で、縦方向に裂けてさらに細く長い繊維になりやすい性質があります。細い繊維が空気中に飛散すると、肺の奥深くまで到達し、体内に長く残るおそれがあります。この性質が、健康被害の大きな要因です。

耐熱性・断熱性能の違い

グラスウールは断熱性・吸音性・不燃性に優れており、住宅やビルの断熱材として広く使われています。ただし、一般的な建築用断熱材であり、高温設備の特殊な耐火・耐熱用途では、製品仕様に応じた確認が必要です。

アスベストは高い耐熱性を持ち、過去には耐火材、保温材、断熱材、成形板などに広く利用されていました。性能面では優れた建材でしたが、健康被害が明らかになったことで、現在は製造・使用等が原則禁止されています。

発がん性・健康への影響の違い

国際がん研究機関(IARC)の評価では、グラスウールを含む一般的な人造鉱物繊維はグループ3に分類されています。グループ3は「発がん性がない」ことを意味するものではなく、現時点でヒトに対する発がん性を判断するための科学的根拠が十分でないことを示す区分です。

一方、アスベストはグループ1に分類されています。グループ1は「ヒトに対して発がん性がある」と評価された区分であり、中皮腫、肺がん、石綿肺などの健康被害が知られています。

【違いの一覧比較表】

比較項目グラスウールアスベスト
原料ガラス原料・リサイクルガラスなど蛇紋石系・角閃石系の天然鉱物
製造・利用方法ガラスを溶融して繊維化する天然鉱物から繊維を取り出して利用する
繊維の性質折れても細く裂けにくい縦に裂けて細く長い繊維になりやすい
主な用途断熱材・吸音材耐火材・保温材・断熱材・成形板など
発がん性(IARC分類)グループ3(ヒトに対する発がん性について分類できない)グループ1(ヒトに対して発がん性がある)
現在の使用状況断熱材として現在も使用0.1%超含有製品は2006年以降原則禁止
廃棄物としての扱い安定型産業廃棄物として扱われることが多い廃石綿等または石綿含有産業廃棄物として扱う

グラスウールにアスベストは含まれるのか?

綿状に複雑に絡み合った繊維素材(断熱材・保温材)のマクロ拡大写真

一般的なグラスウール自体に、アスベストは含まれません。ただし、古い建物では、グラスウールの周辺にアスベスト含有建材が残っている場合があります。

グラスウール製品自体への含有は基本的にない

ガラスを主原料とするグラスウールは、製造工程や原料の性質がアスベストとは異なるため、通常のグラスウール製品自体にアスベストが含まれることはありません。

そのため、グラスウール単体を「アスベスト含有建材」として扱う必要は基本的にありません。ただし、解体・改修現場では、グラスウールだけを見て建物全体のアスベストリスクを判断するのは危険です。周辺の吹付け材、保温材、成形板、仕上塗材などにアスベストが含まれている可能性があります。

年代別の普及・規制の年表

グラスウールの普及とアスベスト規制の強化は、時期が一部重なっています。建物の築年数や改修履歴を確認すると、アスベスト含有建材の有無を推定する手がかりになることも留意しておきましょう。

年代出来事
1930年代グラスウールが開発される
1950〜1970年代アスベストが耐火性・断熱性に優れた建材として広く使用される
1975年石綿を重量の5%を超えて含む吹付け作業が原則禁止される
1980年代以降住宅用断熱材としてグラスウールの普及が進む
1995年アモサイト・クロシドライトの製造・輸入・使用等が禁止される
2006年石綿を0.1%超含有する製品の製造・輸入・譲渡・提供・使用が原則禁止となる
現在グラスウールは住宅・ビルの断熱材として広く使われている
【注意】

上記の年代はあくまで目安です。施工時期、地域、施工業者、改修履歴によって使用建材は異なります。年代だけでアスベストの有無を断定せず、書面調査・目視調査・必要に応じた分析調査を行うことが重要です。

古い建物でアスベストとグラスウールが混在するケース

古い建物では、当初使われていたアスベスト含有建材と、その後の改修で追加されたグラスウールが同じ建物内に残っている場合があります。

  • 天井裏や壁内で、既存建材の上にグラスウールが追加施工されている
  • 配管まわりの保温材が部分的に交換され、新旧の材料が混在している
  • 増改築の履歴により、棟や階、部屋ごとに使用建材が異なる
  • グラスウールの周辺に、石こうボード、岩綿吸音板、吹付け材、仕上塗材がある
【重要】

古い建物の解体・改修では、目視できる範囲がグラスウールであっても、その周辺にアスベスト含有建材が残存している可能性があります。断熱材だけでなく、作業範囲全体を対象に確認することが必要です。

グラスウールとアスベストの見分け方とは?

手袋をはめた作業員が、経年劣化や湿気で茶黒く変色した黄色い断熱材を手で持ち上げて確認している

見た目・色・建築年代から推定できる場合はありますが、アスベスト含有の有無を確実に判断するには、書面調査・目視調査・メーカー情報の確認・分析調査を組み合わせる必要があります。疑わしい建材には直接触れず、飛散防止を意識して対応しましょう。

見た目・色での見分け方の目安

グラスウールとアスベスト含有建材には、色や質感に一定の傾向があります。ただし、以下はあくまで目安であり、最終判断には使えません。

観点グラスウールの特徴アスベスト含有建材の特徴
黄色・白色・ピンク色などがある白色・灰色・茶色・青灰色などがある
光沢ガラス繊維のような光沢が見える場合がある吹付け材や保温材ではくすんで見える場合がある
形状綿状・マット状・ボード状などがある吹付け材、保温材、成形板など形状が幅広い
使用場所壁内、天井裏、床下、設備まわりに使われる天井、壁、配管、ボイラー室、外装などに使われる
経年劣化ホコリや汚れで黒ずむことがある劣化により脆く崩れやすい場合がある
【警告】

上記の特徴を確認する目的で断熱材に直接触れることは避けてください。アスベストを含む場合、接触や破砕によって繊維が飛散するおそれがあります。

建築年代からの推定方法

建物の建築年や改修年がわかれば、アスベスト含有の可能性を推定する材料になります。

  • 1975年より前に建てられた建物:吹付け材や耐火被覆材を重点的に確認する
  • 1980年以前の建物:保温材・断熱材・成形板へのアスベスト含有に注意する
  • 1980年代以降の建物:グラスウールの使用が増えた時期だが、アスベスト含有建材が残っている場合がある
  • 2006年以降の建物:新規のアスベスト含有製品は原則禁止されたが、既存建材や改修履歴の確認は必要となる

確実な判別には調査・資料確認・分析が必要

見た目、色、年代による推定は、作業前のリスク評価に役立ちます。ただし、これらの情報だけでアスベスト含有の有無を断定することはできません。

解体・改修工事では、石綿障害予防規則や大気汚染防止法に基づき、作業範囲の事前調査が必要です。書面調査や目視調査でアスベストを含まないと判断できない場合は、分析調査を行うか、アスベスト含有ありとみなして対応する必要があります。

疑わしい建材が見つかった場合は、現場判断だけで除去・破砕を進めないことが重要です。必要に応じて専門機関へ相談し、調査結果に基づいて作業計画を立てましょう。

疑わしい断熱材を見つけたら、どう対応すべきか?

天井裏の木造フレームの間に敷き詰められた黄色いグラスウール断熱材に手を当てている様子

疑わしい断熱材を見つけた場合は、いったん作業を止め、対象範囲を確認してください。未判定のまま除去・破砕を進めると、アスベストを含んでいた場合に飛散や法令違反につながるおそれがあります。

作業中断時に確認すべきこと

疑わしい断熱材を発見した場合は、直接触れずに以下の項目を確認し、記録に残してください。

  • 発見場所(天井裏・壁内・配管まわりなど)
  • 建材の色・形状・劣化状態
  • 建物の建築年・改修履歴
  • 設計図書・仕様書・修繕記録の有無
  • 当該箇所の事前調査結果
  • 周辺にある吹付け材、保温材、成形板、仕上塗材の有無

事前調査・分析依頼の流れ

疑わしい建材を発見した場合の標準的な対応手順は以下のとおりです。

  • 作業を中断し、当該箇所への立ち入りを制限する
  • 設計図書、仕様書、改修履歴を確認する
  • 石綿含有建材調査者等の有資格者に確認を依頼する
  • 必要に応じて試料を採取し、分析機関に依頼する
  • 分析結果が判明するまで、当該建材の除去・破砕・移動を行わない
  • 含有あり・なしの結果に応じて作業計画を見直す
  • 関係者に調査結果と対応方針を共有する

なお、建築物の解体・改修工事では、2023年10月以降、有資格者によるアスベスト事前調査が必要です。また、2026年1月以降は、一部の工作物についても有資格者による事前調査が必要になります。建築物だけでなく、配管設備やボイラー、煙突などを扱う現場では、調査対象と資格要件を事前に確認しておきましょう。

【実務上のポイント】

分析結果が出るまでの工期遅延を懸念し、現場判断で作業を進めてしまうケースがあります。しかし、誤った判断は法令違反や健康被害につながりかねません。早めに専門機関へ相談することで、結果的に手戻りを防ぎやすくなります。

誤って取り扱った場合のリスク

アスベスト含有の可能性がある建材を未判定のまま除去・処分した場合、以下のリスクが生じます。

  • 作業者・周辺住民がアスベスト繊維を吸引するおそれがある
  • 石綿障害予防規則や大気汚染防止法の違反に問われる可能性がある
  • アスベスト含有廃棄物を通常廃材として処分すると、廃棄物処理法違反となるおそれがある
  • 発注者とのトラブル、行政指導、工事停止、追加費用につながる可能性がある

グラスウールとアスベストについてよくある質問(FAQ)

不織布の防護服と防じんマスク、保護手袋を着用した作業員が、天井裏で断熱材の施工・調査作業を行っている

実務で判断に迷いやすいポイントをQ&A形式でまとめました。廃棄物処理、保護具、ロックウールとの違いなど、現場対応で注意したい点を確認しておきましょう。

Q1. グラスウールも産業廃棄物として処理する必要がありますか?

A. 事業活動に伴って発生したグラスウールは、産業廃棄物として処理する必要があります。一般的には安定型産業廃棄物として扱われ、処分業者の受け入れ条件に従って処理します。建設現場や解体・改修工事で発生した場合は、家庭ごみとして処分せず、産業廃棄物処理業者へ委託してください。

Q2. グラスウールは健康への影響が一切ないのですか?

A. 通常のグラスウールは、IARCの評価でアスベストのような発がん性ありとは分類されておらず(グループ3)、現時点で発がん性を示す明確な根拠はないとされています。ただし、繊維が皮膚に触れると、チクチクした刺激やかゆみを感じることがあります。撤去や加工を行う際は、防じんマスク、手袋、保護メガネ、長袖作業着などを着用し、粉じんや皮膚刺激を防ぐことが大切です。

Q3. ロックウールもグラスウールと同じ扱いでよいですか?

A. ロックウールは、玄武岩などを原料とする人造鉱物繊維で、グラスウールとは原料や製品特性が異なります。IARC分類では一般的なロックウールもグループ3ですが、古いロックウール吸音板や周辺建材ではアスベスト含有の確認が必要になる場合があります。現場では製品名、型番、メーカー資料、施工年代を確認してください。

Q4. グラスウールの取り扱いに法的な規制はありますか?

A. グラスウール単体はアスベスト含有建材ではないため、アスベスト作業としての届出や特別な除去基準の対象にはなりません。ただし、解体・改修工事では、作業範囲にある建材についてアスベスト事前調査が必要です。裁断や撤去で粉じんが発生する場合は、SDSの確認、リスクアセスメント、保護具の着用など、作業環境に応じた安全対策を行いましょう。

Q5. 古い建物の断熱材はすべて分析しないと工事を始められませんか?

A. すべての断熱材を必ず分析しなければならないわけではありません。ただし、解体・改修工事では、作業範囲にある建材の事前調査が必要です。書面調査や目視調査でアスベストを含まないと判断できない場合は、分析調査を行うか、アスベスト含有ありとみなして対応します。判断に迷う場合は、専門業者へ相談しながら進めてください。

見た目で判断せず、根拠に基づいてアスベストの有無を確認する

グラスウールとアスベストの違いを理解していても、解体・改修現場では、建材の劣化や改修履歴によって判断が難しくなることがあります。見た目や年代だけで決めつけず、作業範囲にある建材を一つずつ確認し、根拠を残しながら進めることが大切です。

判断に迷う建材がある場合は、現場判断で撤去・破砕を進めず、分析調査で確認することが手戻りや法令違反の防止につながります。

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【参考文献】
厚生労働省:「石綿総合情報ポータルサイト(改正石綿則のポイント)」
環境省・厚生労働省:「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」
硝子繊維協会:「グラスウール(短繊維)の安全性」
硝子繊維協会:「グラスウール(短繊維)の特長/環境性」
IARC:「Man-made Vitreous Fibres」

監修者:三井伸悟

1980年静岡県浜松市生まれ。2003年に東海大学海洋学部水産資源開発学科を卒業後、2004年に日本総研株式会社へ入社し、分析・環境分野でのキャリアをスタート。2011年には同社の原子力災害対策本部長に就任。その後、世界最大の分析会社グループEurofins傘下の日本法人にて要職を歴任。2017年にユーロフィン日本総研株式会社、2018年にはEurofins Food & Product Testingの代表取締役社長に就任。さらに、埼玉環境サービス株式会社取締役、ユーロフィン日本環境株式会社の東日本環境事業及び環境ラボ事業の部長も経験。2021年にアルフレッド株式会社を創業し、代表を務める。特定建築物石綿含有建材調査者、環境計量士(濃度)、作業環境測定士(第一種)、公害防止管理者(水質一種)の資格を保有し、20年以上にわたる環境・分析分野での豊富な実務経験と専門知識を活かし、持続可能な環境構築に貢献。

 
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